小林可夢偉、無線不調に苦しむ。”ファンブースト獲得”も分からず
フォーミュラEのレースに初めて挑んだ小林可夢偉。しかし無線の不調に見舞われ、エネルギーを使い切れないレースとなった。

フォーミュラEの第4シーズンが開幕した。この開幕ラウンドの2レースには、MS&ADアンドレッティのドライバーとして、小林可夢偉がスポット参戦している。
小林は直前に参戦が決まったという事情もあり、テストなしでぶっつけ本番に臨んだ。結果、予選は13位だったものの、決勝ではペースが上がらず15位に終わった。一体何が起きていたのか? レース1終了後に小林は、次のように語った。
「初めてのレースは難しかったですね」
「レースはエネルギーの残量設定を変えなきゃいけないんですが、無線が不調で聞こえ辛くてその情報が来なかったんです。それで、使用エネルギー量を間違った目標設定にして走っていたため、エネルギーが沢山余りました。最後の5周ぐらいは全開で行っていいよといわれるぐらい余ったんです。もちろん最後は全開で行きましたが、それでもエネルギーは残っていて、もしそれを使い切っていたらどこまで行けたんだというレベルの話でした」
「もう少し経験を積んでいれば対処出来たと思います。でも、僕は表されている指示に従ったまま走ったら、エネルギーが腐るほど余ってしまったというのが正直なところです。スムーズな展開ではなかったですが、第1レースをフィニッシュして明日の第2レースに活かすというのがターゲットだったので、とにかく最後まで走りきって経験できたことが明日に生きるかなと思います」
無線交信の不具合と初期設定の誤りが、この日のレースのすべてだったと、小林は繰り返す。
「無線はスタート前から壊れていて、僕の声は向こうに聞こえるんですが、向こうからの声が聞こえないんです。ファンブーストに選ばれていたんですが、それも知らなかったし、別に使う感じじゃなかったですね。それどころじゃなかったというか、その前にエネルギーを使っていう話だったので」
「クルマは慣れれば大丈夫でしょう。クルマが良い悪いといった状態じゃなくて、エネルギーを使えなかった、それが一番の要因です」
「朝の走り始めは、大変なオファーを引き受けたなと思いました。まず、ブレーキバランスが10%ぐらいおかしくて、元に戻したら普通に走る様になった。10%といえば、レーシングカーではとんでもないですからね。こりゃ難しいなと思ったけど、そりゃ10%違えばおかしいはずです。明日もう少し色々とやっていければと思います」
初めて走らせたフォーミュラEマシン。小林はWECのチームメイトなどから、「フォーミュラEの体感速度は400km/hくらい」と聞かされ、驚かされていた。
「400km/hというのは嘘でしたね。実際の体感としては200㎞ぐらいでした」
「クルマはダウンフォースはないし、重いし、タイヤが駄目になるとリヤがすぐに流れるんです。でも、それを言うレベルじゃなかった。エネルギーを使わないと僕のタイムがどの辺りのレベルか分からない。レース自体も良く分からなかったですが、まあ面白かったですよ。みんなアグレッシブだし」
ちなみに小林は、スタートで若干出遅れている。
「スタートは、左側グリッドの路面が汚れていて遅いんです。滑るので。右側がレコードラインだから凄くグリップするんですが、そこを外れると全然グリップしないんですよ。だからスタートの失敗とかそういうのではなくて、基本的に左側グリッドが不利ということです。僕のところは誰も通らない場所なので、仕方ないと言えば仕方無いですね」
フォーミュラEマシンを走らせたのが初めてならば、イベントを経験したのも初めて。その感想について小林は「これまでないくらい忙しい」と語った。
「まず朝ご飯食べられませんでした。朝5時起きで6時集合ですからね。お昼のお弁当も食べられなかった。ミーティング行って、オートグラフセッション行ったら、あと10分でマシンに乗れと言われて……。僕たちドライバーはうまく使われているなぁと思いました」
「Eモーションというパドッククラブのようなところに行って挨拶して、そのあとオートグラフセッションも行って……。Eモーションでたこ焼きだけ食べましたが、中にタコが入っていなくて、ソースがおたふくソースだったので、それは最高やなと思いました」
フォーミュラEのマシンは、最高速度でも200km/hを少し超える程度。これを”遅い”と評する声も聞かれるが、小林は「これでいい」と感じたようだ。
「フォーミュラEのレースは、この規模だから中でできるんだと思いますよ。速度が遅いと言う人がいますが、この速度で良いと思います。このコースで300km/h出たら恐ろしいですよ。F1ではこのコースは走れないと思います。だからこれでいいと思います」
まずは香港ePrixの1レースを戦った小林可夢偉。この経験を活かし、日曜日のレース2ではどんな前進を果たすことになるのだろうか? 忙しい1日がまた始まる。
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この記事について
シリーズ | フォーミュラE |
イベント | 香港ePrix |
サブイベント | Saturday race |
ロケーション | 香港ストリート・サーキット |
ドライバー | 小林 可夢偉 |
チーム | アンドレッティ |
執筆者 | 赤井邦彦 |