フォーミュラE参戦を決めたヤマハ。ローラを“チームメイト”に「より高い技術を使って、より高い順位を目指す」
フォーミュラEにローラと共に参戦することを目指すと明らかにしたヤマハ。ここでの技術開発は、市販車技術の開発にも大いに活かすことができるという。
フォーミュラE規格パワートレインの開発・供給について、ローラと技術提携をすることを明らかにしたヤマハ発動機。会見では”フォーミュラE参戦”とは明言しなかったが、同社の丸山平二取締役は、「ローラとチームメイトとして一緒に戦っていく」と説明した。
ヤマハは3月28日に記者会見を開き、ローラ・カーズと「フォーミュラEにおける、高性能電動パワートレインの開発・供給に関するテクニカルパートナーシップ契約」を締結したことを明らかにした。
このヤマハの発表内容には、「フォーミュラEに参戦する」という文言は使われず、「技術提携」という言葉で統一されていた。一方でローラの発表では、「ヤマハと複数年にわたる技術提携により、シーズン11からフォーミュラEに参戦する」とされた。
両者の温度感に違いがあるようにも感じられるが、ヤマハには敢えて「技術提携」という言葉を使う理由があるという。
「”参戦”と言ってしまうと、かなり生っぽい印象になってしまいます」
丸山取締役はそう説明した。
「我々は何のためにフォーミュラEをやるのかということを考えた時に、”技術提携”とご説明した方が、正しくお伝えできるかなと思いました」
「”参戦”という言葉を使うかどうかは、皆さんにお任せします。我々はローラさんと一緒に戦い、より高い技術を使って、より高い順位を目指す……チームメイトとして一緒に戦っていくということです」
ローラによれば、ヤマハと共同開発するパワートレインは、来季から既存のチームに供給される予定。また同社のモータースポーツ・ディレクターのマーク・プレストンによれば、供給先のチームについて「東京E-Prix後、すぐに発表できる」と明かしている。
ではなぜヤマハはフォーミュラEを目指すのか? それについて丸山取締役は、次のように説明した。
「レースの世界は非常に厳しく、電動コンポーネントをいかに小さく軽く、高出力・高トルクにしていくか、そして電池をいかに使い切るかという技術が凝縮されています」
そう丸山取締役は言う。
「フォーミュラEに注目したのは、バッテリーがワンメイクで、そのエネルギーを使い切る技術がすごく凝縮された世界だからです。その技術は、市販車を作る際の電費や走りおいてとても重要。ぜひその技術を獲得したいと思っています」
ヤマハはすでに、市販車用の高性能モーターを開発済み。この性能を引き上げるのにも、フォーミュラE参戦が役立つようだ。
「技術的には、このモーターはフォーミュラEと共通点が非常に多いんです。我々が自動車メーカーさんに使っていただきたい領域は、廉価版の低出力のモーターではないです。この領域は、競争が激しいですから」
「我々は、スポーツカーや高性能SUVのこのモーターを使っていただきたい。そのモーターは、高い技術が必要とされるのに、販売できる数がそれほど多くない……つまり量産メーカーさんでは難しいところだと思います。ただ我々としても、1段階とか2段階技術を上げていかなければ、競争力は上がらない。そういう部分でも、フォーミュラEで技術を磨くというのは、最適なことだと思っています」
「エンジンだとよく熱効率という言い方をしますが、電動車の場合はバッテリーに貯められたエネルギーをいかに効率よく、長く速く走るのに使うかということが求められます。これがエネルギーマネジメントなんです」
「その技術を磨けば、電費を向上させることもできるし、ハイパワーな乗り物を作ることもできる、そういう根本的な技術です」
「我々としては、それを担保するためのハードウェアとソフトフェアを進化させたいと思っています」
なお前述の通り、現在のフォーミュラEのバッテリーはワンメイク。しかしこのバッテリーの開発を自由化する日は、刻一刻と近づいている……そういう見方もある。
しかしヤマハとしては、バッテリーの開発に興味はないようだ。
「将来、バッテリーの開発をやるつもりはありません」
丸山取締役はそう語る。
「どのメーカーさんのバッテリーを使うべきなのか、その選定には我々も加わることになると思います。でも、我々が独自にバッテリーを開発するという形は考えていません」
なお日本のメーカーが参戦するとなれば、日本人ドライバーがそのマシンに乗る可能性……そんな期待を抱かずにはいられない。
ヤマハとしても、日本人ドライバーの参戦を期待したいという。
「日本人ドライバーが参戦してくれると、盛り上がるだろうなと思っています」
丸山取締役はそう期待感を語った。
「今のフォーミュラEには、すごく強いヒーローとも言えるようなチームやドライバーがいるわけではなく、全員が競い合うような状況です。つまり、誰にでもチャンスがあるんです」
「そこに日本人ドライバーが出てきて、一緒に戦ってくれるのなら、期待したいところですね」
フォーミュラEとしても、ローラとヤマハの参戦を歓迎しており、会見には共同創設者のアルベルト・ロンゴとCEOのジェフ・ドッズも登壇する熱の入れようだった。
ローラと組み、F1以来久々の”四輪世界選手権”に挑むことを決めたヤマハ。どんな活躍をするのか、注目は日に日に高まっていくことだろう。
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