2016年モータースポーツの印象的なシーンを振り返る:Part1

2016年も様々なカテゴリーで様々なドラマが生まれた。motorsport.comでは今年印象的だったドライバー/レースをピックアップした。

印象的なタイトル争い

F1

 メルセデスは、その他のチームと比べてパフォーマンスでアドバンテージを持っていた。そのため、タイトル争いはメルセデスのふたり、ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグの間で行われた。確かに、ハミルトンの信頼性の問題によって助けられた面もあるが、期待されていたようにふたりの戦いは白熱した。ハミルトンの最終戦アブダビGPでの『戦略』も、素晴らしい緊迫感をもたらした。

GP2

 エキサイティングな新人のアントニオ・ジョビナッツィが登場し、すぐにタイトル争いに加わった。プレマは他チームより優位に立っていたため、ピエール・ガスリーのタイトル獲得に対する最大の脅威は、チーム内にあることがすぐに明らかになった。強烈な印象を与えたジョビナッツィとガスリーの争いは最終戦までもつれ込んだが、ガスリーはジョビナッツィに最後のチャンスを与えなかった。

フォーミュラE

 シーズン1と同じように、シーズン2もタイトルは最終戦ロンドンePrixで決定した。しかし昨年とは違って、バトルはオープニングラップにピークを迎えた。ブレーキングを”誤った”ルーカス・ディ・グラッシ(アプト・シェフラー・アウディ)がタイトル争いの相手であるセバスチャン・ブエミ(ルノー・e.ダムス)に突っ込んでしまったのだ。タイトル争いはその時点から、最速タイムによる追加ポイントをめぐる、マシンを乗り換えたふたりの予選さながらのバトルとなったが、最終的にブエミがこれを制した。

Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W07 Hybrid leads Nico Rosberg, Mercedes AMG F1 W07 Hybrid, Sebastian Vettel, Ferrari SF16-H

F1最終戦アブダビGPでのトップ争い

印象的なオーバーテイク

ルーカス・ディ・グラッシ, スパ6時間レース(WEC)

 ブランシモンで勇気あるオーバーテイクを見せた。5月のスパ6時間レースの序盤、トヨタのセバスチャン・ブエミとの戦いで、イン側をついたディ・グラッシは時速280kmで芝生の上に右前後輪を落としながらも、決してアクセルを抜かなかった。

ウィル・パワー, デトロイト・レース2(インディカー)

 直角コーナーで、ウィル・パワーをブロックすることはできないようだ。パワーのパジェノーに対するオーバーテイクは素晴らしいものだった。パジェノーはイン側のラインをとって守ったが、パワーはアウト側からブレーキを遅らせ、パジェノーの外側を周りきった。

ダニエル・リカルド, イタリアGP(F1)

 古き良きブレーキング勝負はF1では最近見かけなくなった。リカルドにはDRSの恩恵があったとはいえ、彼はモンツァの1コーナーでバルテリ・ボッタスのはるか後ろからブレーキングでインサイドに飛び込んだ。ボッタスは縁石まで追いやられ、ボッタスの外側を悠々と周りきったリカルドが5位の座を掴み取った。

マックス・フェルスタッペン, ブラジルGP(F1)

 今年も、彼のオーバーテイクをたくさん堪能できた。イギリスGPが行われたシルバーストンのベケッツで、アウトサイドからロズベルグをオーバーテイクしたのも称賛に値することだと思うが、インテルラゴスで行われた雨のブラジルGPで、ロズベルグをセナ’S’で同じようにオーバーテイクしたのは特に息をのむほどだった。このオーバーテイクは、これから何年もF1ファンの記憶に刻まれるものになるだろう。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB12 leads Nico Rosberg, Mercedes AMG F1 W07 Hybrid

フェルスタッペン、ロズベルグをオーバーテイク(ブラジルGP)

印象的なレース

スペインGP(F1)

ハミルトンとロズベルグがオープニングラップで衝突したことで、今年最もエンターテイメント溢れるF1レースのひとつとなった。レッドブルとフェラーリの4人のドライバーは全員、戦略上のバトルに巻き込まれることになったが、最終的に優位に立ったのはフェルスタッペンだった。彼は、ダニール・クビアトに代わってレッドブルに昇格した最初のレースで勝利して見せた。

イタリアGP(MotoGP)

早い段階でバレンティーノ・ロッシがエンジンブローによって脱落したが、ホルヘ・ロレンソとマルク・マルケスの優勝争いは近年でも最高のものだった。マルケスは最終ラップで勝利したように見えたが、ロレンソは最後まで諦めずにマルケスのスリップストリームを利用し、オーバーテイクを完了。わずか0.019秒差で勝利をもぎ取った。

ル・マン24時間(WEC)

23時間57分までレースをリードしていたトヨタ5号車が、トラブルで止まってしまうという驚愕のドラマの前でさえ、第84回を迎える伝統のレースはすでに記憶に残るものだった。上位の3台が、ほとんどの時間で争っていたからだ。しかし、中嶋一貴がドライブするトヨタの5号車がメインストレートで停止し、ニール・ジャニのポルシェ2号車が勝利したのは、モーターレーシングの歴史に残るだろう。

スポーツランドSUGO(スーパーフォーミュラ)

ポールポジションからスタートし順調にリードを広げていた関口雄飛だったが、チームメイトのスピンにより最悪のタイミングで出動したセーフティカーのせいで、レースが台無しになりかけた。彼だけがピットストップをしていない状況でレースが再スタートしたが、関口は驚愕のペースで周回を重ね、ピットストップを悠々1回行えるだけのギャップを再び築き上げた。ほとんどワンメイクのカテゴリーで、他のドライバーを落胆させるほどのワンマンショーを見せつけた。

ブラジルGP(F1)

雨の影響を受けたインテルラゴスでのレースは、いつも通りメルセデスの1-2フィニッシュで終わったが、”3時間レース”となった今年のブラジルGPは、フェルスタッペンが3位に入った衝撃的なドライブで見事なものになった。対ロズベルグを筆頭に素晴らしいオーバーテイクを連発し、神業でポジションを回復したパフォーマンスは、わずか19歳のフェルスタッペンの驚くべき反射神経と能力を強調することとなった。

Winning car #2 Porsche Team Porsche 919 Hybrid: Romain Dumas, Neel Jani, Marc Lieb passed the #5 Toyota Racing Toyota TS050 Hybrid: Anthony Davidson, Sébastien Buemi, Kazuki Nakajima after the checkered flag

レースに勝ったポルシェ2号車と、敗れたトヨタ5号車(ル・マン24時間)

議論を呼んだ事件

エリミネーション方式の予選(F1)

 今年のF1では、人気のないルールがいくつか変更された。中でも、愛されていた従来の予選フォーマットから検討不足のまま変更された、決められた時間ごとに最下位が脱落していく新予選方式ほどのものはないだろう。この方式では、予選の時間が終了する前にポールポジションが決まってしまい、予選が終了する頃には全車がピットに戻っているなど、欠点だらけだった。新しいシステムはかなり多くの人々に批判され、システムを廃止するために滅多に見られないチーム間の団結が見られた。幸い、わずか2レースでこの予選方式は廃止され、従来のフォーマットに戻された。

ブエミ対ディ・グラッシ、シーズン2最終戦(フォーミュラE)

 元F1ドライバーのセバスチャン・ブエミとルーカス・ディ・グラッシはふたりとも、フォーミュラEとWECでその才能を最大限に活かしている。フォーミュラEのシーズン2最終戦、バタシーパークでブエミとディ・グラッシはチャンピオンをかけたレースに臨んだ。前述の通り、オープニングラップでブエミにディ・グラッシが激突したため、ブエミはディ・グラッシへの怒りを口にしたものの、他の素晴らしいライバル関係と同様に、ふたりはお互いの才能に対して敬意を表している。

ロッシ&ロレンソ、ミサノレース後会見での”戦争”(MotoGP)

 2016年、バレンティーノ・ロッシとマルク・マルケスの関係は修復され、正常な状態に戻ったが、チームメイトのホルヘ・ロレンソとロッシの関係は凍てついたままだった。ミサノでのレースで、ロッシはロレンソをオーバーテイクしたが、レース後の記者会見でロレンソはロッシを『汚いライダー』だと非難し、記者会見場で激しい口論を繰り広げた。

チャーリー・ホワイティングに対するベッテルの怒り(F1)

 セバスチャン・ベッテルはメキシコGPのレース中、3位をめぐってレッドブルの2台とのバトルをしている最中に冷静さを失い、フェルスタッペンの後ろの4位でレースをフィニッシュした際にはレースディレクターのチャーリー・ホワイティングに暴言を吐いてしまった。フェルスタッペンにペナルティが科されたため、ベッテルは表彰台に上がったが、その後に彼にもペナルティが科され5位に降格。暴言の件でさらなるペナルティを科されることを避けるため、FIAに謝罪の手紙を書く羽目になってしまった。 

Lucas di Grassi, ABT Schaeffler Audi Sport and Sébastien Buemi, Renault e.Dams crash in the first corner
ディ・グラッシ、ブエミと1コーナーで衝突(フォーミュラE ロンドンe.Prix)

サプライズが起きたレース

ハース、デビュー戦オーストラリアGPでグロージャン6位入賞(F1)

ハースは、新規参戦1戦目ということでメルボルンではあまり期待されていなかったが、フェルナンド・アロンソの大クラッシュによる赤旗によって、ロマン・グロージャンはトラックポジションを落とさずにタイヤを変えることができた。彼はこれをフル活用し、ハース最初のレースを6位で終えた。2週間後に行われたバーレーンGPでもグロージャンは5位に入り、開幕戦の結果が偶然ではなかったことを証明した。

パウイ、アルゼンチンでのレースを支配(Moto3)

あまり知られていなかったマレーシアのライダー、カイルール・イダム・パウイはカタールでのデビュー戦を22位で終えた。ところが、雨も絡んで複雑なコンディションとなったアルゼンチンでのレースで他を圧倒し優勝を飾った。彼はザクセンリンクでも雨のレースで独走優勝を果たしており、真のウェット・マスターとしての実績を積み上げた。

フェルスタッペン、レッドブル昇格後の初戦スペインGPで優勝(F1)

ダニール・クビアトのトロロッソへの突然の降格と、フェルスタッペンのレッドブル昇格というレッドブルの厳しくも軽率にも見える決断は、スペインGPの前に行われた。しかしその直後のレースでフェルスタッペンは結果を出し、レッドブルの選択が間違っていなかったことを証明した。

ジャック・ミラーのオランダGP優勝(MotoGP)

マルクVDSのライダーであるジャック・ミラーは、ウエットコンディションになったアッセンでのレースで、マルケスを破って自身初勝利を記録した。ワークスチーム以外から優勝者が出たのは2006年以来初めてであり、シーズン4人目のウイナーとなった。今シーズン、MotoGPでは史上最多9人もの優勝者が出ており、最高のシーズンとなった。

アレキサンダー・ロッシ、インディ500初挑戦、初優勝(インディカー)

アレキサンダー・ロッシは、インディアナポリス・モーター・スピードウェイのオーバールコースによく順応し、アンドレッティ・オートスポートもレース期間中を通して速いマシンを用意できていた。それでも、15年ぶりの新人優勝を予想している者はいなかった。苦しいレース展開となったものの、終盤に上位陣がピットストップをする中でロッシとチームはステイアウトを決断、不可能とも思える燃料セーブを遂行した。最後はガス欠でエンジンがストップしそうになる中、チームメイトのカルロス・ムニョスの4秒前で”ヤード・オブ・ブリックス”(インディアナポリスのスタート/フィニッシュライン)を横切り、第100回インディ500の優勝を決めた。

Alexander Rossi, Herta - Andretti Autosport Honda race winner

優勝したアレキサンダー・ロッシ(インディ500)

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