2016年モータースポーツの印象的なシーンを振り返る:Part2
2016年も各カテゴリーで様々なドラマが生まれた。motorsport.comでは今年印象的だったチームやドライバー/ライダーをピックアップした。

ベストチーム
メルセデス(F1)
3年連続でダブルタイトルを獲得。メルセデスの快進撃は留まるところを知らず、彼らに挑んだフェラーリはあえなく失敗。またレッドブルはシーズン序盤にフェラーリの後塵を拝したことと、ルノー製パワーユニットのパワー不足が響いた。時には、つまらないレース展開だと感じることもあったが、やはりライバルチームに対して素晴らしい仕事をしたメルセデスを認めざるを得ないだろう。もちろん、2017年にメルセデスとそれ以外のチーム間のギャップが縮まることが期待される。
フォースインディア(F1)
F1では伝統的に、チームの予算によってマシンのパフォーマンスレベルが決まってしまう。フォースインディアの場合、チームに加入するドライバーによって財政が左右されてしまうが、それでも今年はコンストラクターズランキングで4位を獲得した。2017年もこれが可能かどうかはわからないが、セルジオ・ペレスとニコ・ヒュルケンベルグだけでなく、シルバーストンのファクトリーで働くスタッフにとっても、今年は満足できる年であっただろう。
ペンスキー(インディカー)
他のチームよりも優れたマシンで16戦中10勝を挙げたチーム・ペンスキーは、並外れた実力を発揮した。ペンスキーのマシンは2015年も速かったが、3勝しか挙げられなかった。今年はタイトルを決定したレースで表彰台を独占し、同じシボレーのエンジンを使うライバルのチップ・ガナッシ・レーシングを置き去りにした。
プレマ・パワーチーム(GP2)
今シーズン、プレマは11ラウンド中7ラウンドで勝利を挙げた。そしてピエール・ガスリーとアントニオ・ジョビナッツィは熾烈なタイトル争いを繰り広げ、ガスリーがタイトルを獲得した。プレマはF3ヨーロッパにも参戦しており、そこではランス・ストロールが2位以下に圧倒的な差をつけてタイトルを獲得している。また、ADAC F4やイタリアF4では、ミック・シューマッハーが勝利を挙げている。
コンストラクターズ選手権4位のフォースインディア
最も成長を遂げたドライバー/ライダー
カルロス・サインツJr.(F1)
シーズン序盤の4レースはマックス・フェルスタッペンとのコンビで参戦。そのフェルスタッペンがスペインGPを前にレッドブルへ移籍し、そのスペインで初勝利を挙げたが、サインツも自己ベストの6位入賞。そこから7レース連続で入賞を果たした。トロロッソは型落ちのフェラーリ製パワーユニットを使用していたため、徐々に好成績を残すことが難しくなっていった中で、サインツは2度も6位フィニッシュを果たした。彼は、来年のルイス・ハミルトンのチームメイトになる可能性があるとも言われている。
ノーマン・ナトー(GP2)
彼のシングルシーターでのキャリアを鑑みて、昨年GP2でデビューした時から彼に注目していたジャーナリストもいた。しかしアーデンからデビューした昨年は、ランキング18位という結果だった。今年はレーシング・エンジニアリングへ移籍し、開幕戦スペインの第1レースで勝利を挙げ、モナコの第1レースでも2位を獲得した。しかし不運にも見舞われたこともあり優勝は1度のみ。ランキングは5位だった。
マーベリック・ビニャーレス(MotoGP)
2015年、ビニャーレスは自身よりもはるかに経験のあるチームメイト、アレイシ・エスパルガロと接戦を繰り広げた。今年は、スズキのライダーでトップとなる、チャンピオンシップ4位を獲得した。また今年は第12戦イギリスで勝利を挙げ、リタイアは第2戦のアルゼンチンのみだった。これ以上の成績は残せなかっただろう。
ブラッド・ビンダー(Moto3)
Moto3での最初の数年は、ビンダーは確実に進歩を遂げていたが、将来的なチャンピオンの素質を見せることはなかった。しかし2016年には飛躍を遂げ、今年は第4戦へレスで初優勝を飾ると、その後も勝利を積み重ね、6勝を挙げた。9月には4戦を残して、タイトルを獲得した。
国本雄資(スーパーフォーミュラ)
2015年、国本は非常に苦しいシーズンを送った。チームメイトの石浦宏明がチャンピオンに輝いた中、国本は表彰台にすら上がることができなかったのだ。しかし2016年にはそのパフォーマンスが大幅に向上。開幕戦鈴鹿で2位に入ると、合計2勝、4回の表彰台登壇を果たし、見事チャンピオンに輝いた。石浦の経験を吸収し、貪欲なまでの勝利への強い想いが、国本を強くさせた。そして彼を信頼し、サポートし続けたチームの存在も大きかった。また彼は、スーパーGTでも活躍。タイでは#19 WedsSport ADVAN RC Fに初勝利をもたらした。
チャンピオンシップ4位のビニャーレス
ベストルーキー
パスカル・ウェーレイン(F1)
ウェーレインは、メルセデス製パワーユニットを使用しているマノーのポテンシャルを見出すために、重要な存在だった。彼は多くのトラックで様々なことを学ぶ必要があったが、10位入賞を果たしたオーストリアGP以外のレースでも、自分たちよりも優れたマシンを相手に健闘した。予選でも、シーズン後半からチームメイトになったエステバン・オコンを上回り、チームで唯一のポイント獲得者になった。
アントニオ・ジョビナッツィ(GP2)
彼は、今シーズンのGP2で最も手強かったルーキーだろう。速さが増し、ミスもなく、オーバーテイクとタイヤマネージメントに自信を持っていた。彼とチームメイトのピエール・ガスリーは、周囲の予想以上に激しいレースを展開し、彼の評判は急上昇した。ジョビナッツィはフェラーリのリザーブドライバーにはふさわしくないと考えている人たちも多くいるようだが、今シーズンの成績を鑑みれば、十分その価値はあるだろう。
シャルル・ルクレール(GP3)
F3からGP3に転向し、シーズン序盤は好調だったが、終盤は失速してしまった。しかし今年は、おそらく昨年以上に印象的だっただろう。フェラーリ・ドライバー・アカデミーの一員であるルクレールは、タイトル争いのプレッシャーに押しつぶされることなくタイトルを獲得し、すでに成長を遂げたドライバーであると思われる。
ロビン・フラインス(フォーミュラE)
フラインスは2015年の夏にアンドレッティに起用され、わずか数時間フォーミュラEのマシンで走行しただけでデビューレースに臨んだ。これを鑑みても、生まれ持った才能と、虎視眈眈とオーバーテイクを狙う並外れた能力を示した彼のパフォーマンスは素晴らしいものであった。ホイール・トゥ・ホイールのバトルでは、彼ほどうまくバトルできたドライバーはそれほどいなかっただろう。
アレクサンダー・ロッシ(インンディカー)
シーズン後半はレースから多くのものを学んでいたが、インディ500で勝利する可能性はほとんどなかったにもかかわらず、優勝を遂げたことが理由でノミネートされたのではない。シーズンが終わるまでに、彼はオールラウンダーなドライバーになったので、もし来年アンドレッティが競争力を持ったマシンを用意できれば、勝利も期待出来る。
関口雄飛(スーパーフォーミュラ)
SUGOで見せた走りは圧巻だった。序盤からリードを築いたものの、セーフティカーのタイミングが悪く、各車がピットインする中、彼ひとりステイアウトせざるを得ず、しかもリードは完全に失われた。これで万事休すかと思われたが、レース再開後は驚異的なペースで飛ばして再びリードを築き、勝利を手にした。レース後チームの星野一義監督は「もう日本においておきたくない。ウチはもう卒業だ!」と最大限の賛辞を送った。他にももてぎで勝利を挙げるなど、初年度らしからぬ活躍で、同じくルーキーで来季F1デビューするストフェル・バンドーンを上回るランキング3位でシーズンを終えた。
8ポイント差でガスリーに敗れたジョビナッツィ
ベストドライバー/ライダー
ニコ・ロズベルグ(F1)
今年はチームメイトのルイス・ハミルトン相手に予選で何度も奮闘し、レースでは過去最多の9勝を挙げた。もしマレーシアでハミルトンにエンジンブローが起きなければ、ハミルトンがタイトルを獲得していたかもしれないと言うことも可能だが……どうだろうか? 終盤の4レース、ロズベルグは本当に100%の力でレースに臨んでいただろうか? もしくは、それまでのポイント差からして、もう十分だと考えていたのだろうか? 彼はようやくタイトルを獲得し、長年のライバルに打ち勝ったのだから、おそらく、こういった考えは憶測の域を出ないだろう。とにかくロズベルグは、モータースポーツで究極のパフォーマンスを見せた。
ダニエル・リカルド(F1)
2014年に当時のチームメイトだったセバスチャン・ベッテル(現フェラーリ)を打ち負かしたリカルドだが、今年もベッテルを上回った。今年は、シーズン途中でマックス・フェルスタッペンがチームに加入し、難しい局面を迎えたが、メルセデスと勝負をしてもマシンをバリアにぶつけることもなく、チームがタイヤを用意してなかったことや、フェルスタッペン優遇のタイヤ戦略に対して冷静さを失うこともなかった。彼はすべてのことを正しく行い、ほとんどミスを犯さなかった。
マックス・フェルスタッペン(F1)
メディアは、フェルスタッペンのF1での2年目のシーズンと、ミハエル・シューマッハーが初めてF1にフル参戦した年の比較をしてきたが、それはジャーナリズムの停滞ではない。フェルスタッペンは、メルセデスが自滅したスペインGPで初優勝を遂げたが、シューマッハーも1992年のスパでウイリアムズ・ルノーがミスを犯したことで優勝を手にした。またフェルスタッペンは、レッドブルで17レース中6回のポディウムを獲得した。そしてシューマッハーは、1992年にベネトンで16レース中7回のポディウムを得ている。そしてどちらも、チームメイトを苛立たせることを気にしてなどいなかった。
マルク・マルケス(MotoGP)
2レースを除いて、マルケスとチームメイトのダニ・ペドロサは信じられないほど速かった。両者の冷静さも相まって、マルケスはタイトルを獲得した。彼は、新たな視点を見せただけでなく、ここ数年のように刺激的な瞬間を作り出した。もちろん何度かミスを犯したが、3レースを残したタイトルを決めた後、そういったミスが出たようだ。2016年のバイクはベストなものではなかったが、5勝を挙げ、7回ポディウムを獲得した。
シモン・パジェノー(インディカー)
今年のパジェノーは、シーズンの始めの勢いを後半にも維持し、チャンピオンを獲得した。彼の素晴らしい走りがインディ500以降途切れていたら、少なくとも彼のタイトルはなかっただろう。彼はインディ500でも、チーム・ペンスキーの中で最も速いドライバーだった。今シーズン終盤、パジェノーはミッド-オハイオでライバルのウィル・パワーに勝ち、ソノマでも勝利した。最終的には、ポールポジションを7回獲得し、5勝を挙げた。パジェノーはチャンピオンにふさわしいドライバーだ。
セバスチャン・オジェ(WRC)
オジェは、自身とライバルたちの差を縮めるために設けられた新たなルールに直面しながら戦っていたが、2016年は6勝を挙げ(キャリア通算38勝)、100ポイント以上獲得してチームメイトのアンドレアス・ミケルセンを突き放した。フォルクスワーゲンのWRC撤退に伴い、来シーズンはMスポーツから参戦する。
MotoGPで3度目のタイトルをもてぎで決めたマルケス
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