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コラム

英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記「トヨタの現行最速マシンはGR010?それともGRスープラ?」

日本を拠点に活動するmotorsport.comグローバル版のニュース・エディター、ジェイミーがお届けするコラム。今回はトヨタのハイパーカー、GR010のパフォーマンスについて、スーパーGT車両との比較を織り交ぜながら綴った。

GR010vsGR Supra

 皆さん久し振り、ジェイミー・クラインです。7月初め、ようやく日本語能力試験を受けました。かなり勉強しましたが(特に漢字!)それでも難しかったので、テストの4時間を集中し続けるのが大変でした。合格したかどうかは9月にならないと分かりませんが、9月のコラムで結果を報告できればと思っています。

 先日、富士スピードウェイで予定されていた2021年のWEC(世界耐久選手権)日本戦の中止が発表されました。日本のファンにとって残念なことだと思いますし、ル・マン24時間を3連覇したTS050に代わるトヨタの新型マシン、GR010が少なくとも来年まで日本で見られないのも残念です。

 さて、スパで行なわれた今季のWEC開幕戦で2台のトヨタのラップタイムを見ていて、私はふと疑問に思いました。「果たしてGR010はトヨタが誇る現行レーシングカーの中で最も速いのか?」そして「実はスーパーGTのGT500クラスを走るGRスープラの方が速いのではないか?」と……。

 このテーマについてお話しする前に、WECにおける現行の最高峰カテゴリー、ル・マン・ハイパーカー(LMH)は、それ以前のLMP1-Hと規則がかなり異なっていることを強調しておかなければなりません。最大の違いは最低重量で、TS050が878kgであるのに対し、GR010は1040kgと、160kgも増加しています。またパワーも大幅に低下しているだけでなく、4輪全てでモーターのアシストを受けられたLMP1に対し、LMHは前輪のみとなっています。こういった変更により、ル・マン24時間の舞台であるサルト・サーキットでは1周のラップタイムが約10秒遅くなるとされています。

#7 Toyota Gazoo Racing Toyota GR010 - Hybrid: Mike Conway, Kamui Kobayashi, Jose Maria Lopez

#7 Toyota Gazoo Racing Toyota GR010 - Hybrid: Mike Conway, Kamui Kobayashi, Jose Maria Lopez

Photo by: Alessio Morgese

 そのため、今季開幕戦のスパでGR010が記録した予選タイムが、過去にTS050が記録したポールタイムからかなり遅かったことは驚くべきことではありません。

 そこで、GR010とTS050のスパでのタイムを較べてみました。正確な比較をするために、2020年のスパのタイムは取り上げず、2019年のタイムで比較してみます。なぜなら、2020年は、TS050とノンハイブリッド勢の性能を近付けるためにTS050に相当量のバラストが積まれていたからです。これではまともな比較は不可能ですから。以下が予選でポールポジションを獲得した時のタイムです。

2019年WECスパ ポールタイム(TS050):1分53秒683
2021年WECスパ ポールタイム(GR010):2分00秒747

 実に7秒以上の差があります。実際、今年の予選でトヨタがマークしたタイムは、2019年のLMP2クラスのポールタイム、2分00秒674よりも遅いのです。

 GT500がスパでどのくらいのタイムを出せるか分かりませんし、これからも知ることはないでしょう。しかし我々は、GT500がどのくらいのタイムで富士を走るのかは知っていますし、TS050の富士での走りも知っています。

 前回のWEC富士でTS050がマークしたポールタイムは1分24秒822でしたが、これはサクセス・ハンディキャップを背負った状態でのタイムです。一方その前年である2018年、トヨタが最適に近いマシンコンディションで出したポールタイムは1分23秒203でした。

 スパでのTS050とGR010のタイム差が7.064秒。スパはコース全長が富士の約1.5倍であることを考えると、単純計算ではありますが、富士でのTS050とGR010のタイム差は4.507秒ほどと推計できます。そして2018年にTS050が出した1分23秒203を基準とすると、GR010は富士を1分27秒710ほどで走ることになります。

 そして昨年のスーパーGT最終戦富士で、山下健太がドライブするGT500のGRスープラがマークしたタイムが1分26秒386。GR010はそれより1.3秒も遅いという計算になるのです。

#37 KeePer TOM’S GR Supra

#37 KeePer TOM’S GR Supra

Photo by: Masahide Kamio

 GR010とさほど重量が変わらず、100馬力ほどパワーが劣るGT500のスープラがどこでタイムを稼いだのか? その大きな要因はタイヤと空力だと考えられます。

 まずタイヤに関しては、スーパーGTは複数のタイヤメーカーが開発競争を行なう世界的にも珍しいカテゴリーです。そのため、特に予選アタックでのグリップはかなり高くなっていますし、常に進化を続けています。実際、2019年に富士でスーパーGTとDTMの交流戦が開催された時、GT500車両にはDTM勢に合わせてハンコックタイヤが装着されましたが、ドライコンディションで行なわれたテストセッションではラップタイムが大きく低下しました。

 また、スーパーGTでは1スティントを走るとタイヤを交換することができますが、ミシュランタイヤを使用するWECの現行規則では、レース中に同じタイヤを2スティント以上使わなければいけないことになっています。

 そしてハイパーカーの最大の弱点のひとつが空力です。LMP1時代には、トヨタはハイダウンフォース仕様、ローダウンフォース仕様の空力パッケージを開発し、長いストレートのあるル・マンではローダウンフォース仕様を持ち込み、その他のレースはハイダウンフォース仕様で戦う、といったことが可能でした。

 しかし、現行規則ではそういったことはできません。つまりGR010は、短いサーキットでのパフォーマンスを多少犠牲にしてでも、超ロングストレートのあるル・マンで勝てるようなパッケージを目指して設計されているのです。したがって、GT500は富士(と、おそらくスパ)でハイパーカーより速く走ることはできても、舞台がル・マンとなると話は違ってくるはずです。

 残念なことに、日本のファンがGR010の走りを生で見られるのは少なくとも1年後になりますが、それよりも速いスーパーGTマシンを見ることが出来るのは幸せなことかもしれませんね。

 

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