星野一樹と語る“競馬愛”|押しも押されぬ一番好きな馬は“ドゥラメンテ”。そして2022年有馬記念も徹底予想……本気の複勝1点勝負!
モータースポーツ界随一の競馬好きとして知られる星野一樹。先日のインタビューの続きとして、さらに深い競馬の話を繰り広げていただいた。モータースポーツの話題はほとんど出てこないが……お楽しみいただきたい。
写真:: 星野一樹
昨年限りでスーパーGTを引退し、現在は父が率いるTEAM IMPULを陰ながら支える星野一樹。先日掲載した記事では、彼に競馬について熱く語っていただいた。競馬初心者の方でも、競馬の魅力の一部をお分かりいただけたのではないだろうか。
しかし、競馬をある程度知っている方ならば「そんなことはわかってるよ」という部分も多かったかもしれない。そんな方々、ご心配なかれ……本稿では星野の“競馬愛”の話をお届けしたいと思う。
星野が競馬好きであり、インタビューをお受けいただけると聞いた筆者は、いてもたってもいられず取材に同行。星野とはほぼ同年代であり、通ってきた競馬の歴史も、似たようなところがあるのではないかと想像したのだ。
確かに彼は、一口馬主として数々の競走馬を所有しており、私とは雲泥の差である。それでも通ずるところがあるのではないかと、まず「思い出のレース」の話題からスタート……すると、マチカネフクキタルとまさかの馬名が飛び出し、そして血統の話にまで及んでいった。
そして今週末は有馬記念。星野一樹に、この1年の総決算となるレースの予想もしていただいた。皆さんの買い目の参考としていただければ幸いである。
——今まで色々なレースを見てきたと思いますが、思い出のレースはありますか?
「おそろしくたくさんあるけど、どれがいいかな……すごい古いところで言うと、マチカネフクキタル(父:クリスタルグリッターズ)が勝った菊花賞です。えーと、何年だったかなぁ」
——97年ですね。
「お、すごい! そうです! そのレースには1番人気のシルクジャスティス(父:ブライアンズタイム)という馬がいました。この馬は王道路線を走ってきました。菊花賞は三冠レースの最後ですが、王道を走ってきた馬と、別路線……つまり裏街道を通ってきた上がり馬が激突するんです。マチカネフクキタルもまさにその上がり馬で、トライアルレースを連勝して菊花賞に挑んできたんです」
「僕はそのレースで、シルクジャスティスは来ないと踏んで、(買い目から)外したんです。それで僕はマチカネフクキタルを軸にし、見事に勝ってくれました。2着はダイワオーシュウ(父:リアルシャダイ)だったと思いますが、僕は当時20歳くらいで、確かその馬券を10000円くらい買ったんです。それで40万円くらいの払戻しがあったので、震えちゃって……。そのレースをめちゃくちゃ覚えています」
——なるほど! 他にもありますか?
「当てたと言うよりも、自分が一口馬主で持っているアリーヴォという馬がいるんですけど、それがドゥラメンテ(父:キングカメハメハ)という馬の産駒なんです。このドゥラメンテが僕は大好きなんです。ドゥラメンテは三冠のうち二冠を勝ったんですが、最後の菊花賞は怪我で出られなかったんです。もし出ていたら、三冠馬になっていたと思っています」
「そのドゥラメンテが好きすぎて、一口馬主ではいつもドゥラメンテ産駒にばかり目が行ってしまいます……」
「そのうちの1頭であるアリーヴォが、大阪杯で人気なかったんですけど3着だったんです。最後の直線で怪我をしてしまって……それがなければ勝っていたかもしれません。その後無理して宝塚記念に出たら悪化しちゃって、今は長期休養になってしまってるんです」
■日本競馬の”結晶”ドゥラメンテ「僕にとってこれ以上の存在はいない」
——ご自分がお持ちの馬のレースが思い出の一戦とは、素晴らしいです! しかしなぜドゥラメンテが好きなんですか?
「皐月賞での競馬が、一番強いと感じたんです」
——その強さが魅力?
「それもそうですが、やはり血統ですね。ダイナカール(父:ノーザンテースト)の牝系で、とにかく日本競馬の全てを注ぎ込んだような血統じゃないですか。これ以上無理じゃないかと。ダイナカール、エアグルーヴ、アドマイヤグルーヴと代々続いてきて、そこにキングカメハメハが配合された。日本競馬の優秀な血の全てを入れ込んだ感じですよね」
ドゥラメンテの父、キングカメハメハ
Photo by: Motorsport.com / Japan
——たしかにノーザンテーストの血が入ってるし、サンデーサイレンスも入ってる。トニービンも入ってますね。すごい!
「すごいんですよ。日本競馬の結晶なんですよ。僕にとってはこれ以上の存在はいないです。当分現れないと思います。出てきてほしいですけどね」
——血統っていう意味では、これ以上に衝撃的な存在はないですか? 例えばドゥラメンテは、走って当然という血統です。逆に突然変異……私はキタサンブラックがなんで走ったのか、よく分からないんです。
「結局は、ディープインパクトの代わりにブラックタイドを付けたってことですよね」
——でも、母父がサクラバクシンオーじゃないですか。それで3200mの天皇賞を勝つってのが分からないのです。
「BMS(ブルードメアサイアー/母の父のこと)は距離適性に直結しないって水上(学/競馬評論家)さんとか亀谷(敬正/競馬評論家)さんが言ってるので……。本質的な距離特性は、父から来ると思うんです。でもそこは……僕も悩まされ続けました。キタサンブラックは、買い目から外し続けましたもん。母父バクシンオーは、血統派は買えなかったと思う。そして唯一軸にした宝塚記念は負けました。僕の馬券もハズレです」
——不思議な馬いっぱいいます。
「モーリスもそうですよね。スクリーンヒーローにメジロ系の牝馬なんですけど、なんでそれで爆発するのと思いました」
——他に血統的にすごいなと思った馬いますか?
「もっとネタ用意しときゃよかった! センス問われてるみたいで……。そうですね……なんだろうな。渋めなところで言うと、最近バゴが好きですね。ノーザンファームが作るバゴの産駒は、結構走るんですよね」
「あとマニアックなんですが、僕が一口持っているベレヌスはタートルボウルの産駒なんですけど、タートルボウルの産駒って1200mとか1400mくらいの短いところが得意で、最後はダートでなんとか勝負する……という産駒が多いんです。でもオープンクラスまで昇格したタートルボウルの産駒は、重賞で連対(2着以内)する可能性が高いんです」
——そのベレヌスも、血統を見て買ったんですか?
「最初に見た時、四肢のバランスがめちゃくちゃよく見えたんです。自分の好みの歩き方とか、蹄の反しとか、踏み込みが深い方がいいとか、踏み込みが強すぎて胴が短かったら短距離とか……自分の中の決め事があるんです。そんな中でこの馬はめちゃくちゃ安くて人気なかったんですけど……すごく走ってくれたんで、めちゃくちゃ思い入れがあります」
——ベレヌスは1800mの中京記念勝ってますが、たしかに1800m走るような血統ではないですね。母父にはデュランダル(父:サンデーサイレンス)が入ってますし。
「タートルボウルに足りなかったスピードを、デュランダルが補ってくれていると思っています。タートルボウル自体は中距離走ってますから……バッチリ当たりました。最初ダートでデビューした時には、ガッカリしましたけどね。始めは脚元が弱かったのでダートのレースを走ったようですが……芝転向の初戦でいきなり勝ったんです。すっごく喜びました」
——ところで好きな競馬場はありますか?
「福島いいですよ。夏の福島に行ったんです。ラジオの解説の仕事をいただいたので行けたんですよ。サーキットでも、富士とか鈴鹿とか、設備がしっかりしているところが必ずしも好きだということではないのと一緒かもしれないですね。携わっている人が、福島競馬を愛してるんです。地元愛ですかね。本当に競馬好きなんだなーという人が多かったのをよく覚えてます」
——なるほど。では馬券的に得意としている競馬場は?
「僕は非主流血統が好きなんで、非根幹距離(1200m、1600m、2000m、2400mなどが根幹距離と呼ばれる)とか、直線が短いとか、そういうところで勝負したいと思ってしまう。なのでローカルが得意かもしれないですね」
——ほう。ということは中山競馬も得意?
「得意です。短距離のレースが得意なんですよ。スプリンターズSとか、自慢したい馬券もありますよ。レッドファルクス(父:スウェプトオーヴァーボード)の時に取りました」
■さて有馬記念! 星野一樹の本命はあの穴馬!
——中山競馬場といえば、今週末は有馬記念(2500m)です。有馬記念はいかがですか?
「得意かと言われると……まあお祭りですよね。絶対にやっちゃうというような。有馬記念は、本当に強い馬を決めるレースかと言われると、そうじゃない気もします」
——たしかに!
「他のG1は、そのレースに合わせて出てくるんですけど、有馬記念は年末総決算みたいな感じで、ファン投票で選ばれるし、ちょっと短い距離で活躍していた馬も出てくる。有馬記念じゃ距離適正的に難しいはずなのに、スターホースだからといって出てくることもあります」
——決めている馬はいますか?
「気になっているのは、ジェラルディーナ(3枠5番|父:モーリス/母:ジェンティルドンナ|2022年エリザベス女王杯勝馬)です。みんな足りないだろうなと思っていると思いますけどね。ジェンティルドンナの仔で、初めて走ったんですよね。エリザベス女王杯(2200m)もこの前勝って、非根幹距離の鬼みたいなところがあります。道悪も上手だし、パワー的な要素も必要な荒れた馬場の有馬記念でも行けたりするかもしれません。内枠に入らないと厳しいかもしれませんが、期待していますよ」
——オールカマー(中山2200m)勝ってるのもいいですね。
「そうなんです。オールカマー勝ってるし、有馬記念も非根幹ですからね。しかも母のジェンティルドンナも有馬記念を勝ってます。親子制覇というロマンがありますね」
——でも今年は上位人気3頭が被りそうです。
「イクイノックス(5枠9番|父:キタサンブラック/母:シャトーブランシュ|2022年天皇賞・秋優勝馬)が出てきますし、それからタイトルホルダー(7枠13番|父:ドゥラメンテ/母:メーヴェ|G1レース3勝)とエフフォーリア(4枠7番|父:エピファネイア/母:ケイティーズハート|昨年の有馬記念優勝馬)ですか。でも穴で面白いのはジャスティンパレス(5枠10番|父:ディープインパクト/母:パレスルーマー)です。これは面白いと思ってます。菊花賞3着なんですよ」
ジャスティンパレスの父、ディープインパクト
Photo by: Motorsport.com / Japan
——有馬記念と同じ中山競馬場で行なわれた皐月賞の9着がちょっと気になります。
「お母さんのパレスルーマーが奥手なんじゃないかと思います。ロベルトの血が入ってるんで、中山は絶対に走ると思ってるんですよ。持続力や底力があると思っています。中山競馬をやる時、ロベルトの血が入っているかどうか、全部調べるんですよ。必ず走ります。減速して加速するということができる……器用なんですよ。ダービーは合わなかっただけだと思います」
——あ! ダービーも皐月賞も同じ9着ですが、皐月賞だけ位置取りが後方なんですね。他のレースは先行・好位です。
「そうなんですよ。皐月賞も合うと思って買ったんです。神戸新聞杯はうまく走っていたし、今回は十分にチャンスあると思います。菊花賞は17番枠でしたから軸にはしなかったんですけど、ちゃんと3着に来ました。スタミナもあります。ダービー走るディープ産駒だと、有馬記念は少し違う気もしますけど、この仔はちょっと違うと思います。
「そして所属している杉山厩舎が、僕の中では今はベストなんですよ。アリーヴォもベレヌスもここなんです。この杉山先生は、とにかく馬のことをよく考えている。ここで使うということは、勝算があるんだと思います。まだどんどん成長している時期だと思いますんで、それで言うと、上積みがあるのはこのジャスティンパレスかなと思います」
——イクイノックスも、まだ底を見せていない気がします。
「本当はジャパンカップを使いたかったんじゃないかと思います。でも間隔を空けなきゃならないので、ここに出走してくるんでしょう。東スポ杯から皐月賞に直行しているくらいですからね……天皇賞・秋から有馬記念で、間隔が足りているのかが心配です。だから軸にするのは怖いです。すごく強いのかもしれないですけどね」
——たしかに東京専用という感じもしなくはないです。
「皐月賞が案外だったんで……東京のパンパンの硬い馬場で、スピード勝負なら強いでしょうね。パワーのいる暮れの中山でどうかな……父であるキタサンブラックの血が色濃く出ていれば問題ないんでしょうけどね。1800mとか2000mがベストなように思います」
——有馬記念は、中山で強い馬を買いたい気がするんですよね。マツリダゴッホ(2007年優勝馬)とか。今年はそういう馬がいないですよね。アリストテレス(2枠4番|父:エピファネイア/母:ブルーダイアモンド)かなと思ったりはしますが。
「最近全然走らないんですよね。エピファネイアの産駒は早熟傾向なのがデータにも出てしまっています。エフフォーリアもそういう傾向ではないかなと思ってます。3歳時が一番充実する感じではないかと。エピファネイア自体はもっと遅い時期に活躍しましたけどね」
——では、星野選手の2022年有馬記念、最終的な予想をまとめてください!
「◎10番ジャスティンパレスにします。1週間後に年が明ければすぐに古馬になる3歳が、暮れの有馬記念では斤量的にかなり有利なのでここはローテーション的にも有利な菊花賞組3歳馬から入りたいです」
——なるほど!
「ジャスティンパレスは能力だけで同じ中山での2歳G1ホープフルで2着していて、クラシック戦線は身体が間に合わなかったけど、一夏越して馬が成長し神戸新聞杯で圧勝。続く本番の菊花賞G1は外枠だったのと、4角手前の勝負どころで進路をとれずに減速が痛かった上での3着。さらに今も成長している今回が人気薄で買える最後のチャンスだと思います」
「血統的にも牝系にロベルトを持っていて、中山向きのディープ産駒。絶好の10番枠から4〜5番手以内を取れれば激走あるとみて、複勝1点勝負!」
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