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10年以内に女性F1ドライバーの誕生を目指す……クルサードらが立ち上げた女性ドライバー支援活動”More Than Equal”

F1に女性ドライバーが参戦しなくなって久しい。しかし元F1ドライバーのデイビッド・クルサードらが立ち上げた活動”More Than Equal”では、10年以内に女性ドライバーをF1にデビューさせることを目指している。

Girls on Track visit to teams garages in pit

 モータースポーツは常に進化を続けており、男性と女性が対等に争える、数少ないスポーツのひとつになりつつある。世界中のレースで女性ドライバーが活躍するようになっているが、なかなかトップカテゴリーで活躍するには至っていない。特にF1では、1992年のジョバンナ・アマティ(ブラバム)以来、レギュラードライバーとしてエントリーしたドライバーはいない状態だ。

 今季NASCARでは複数の女性ドライバーが走り、インディカーではタチアナ・カルデロンとシモーナ・デ・シルベストロが走った。カルデロンはFIA F2にも参戦した。またWEC(世界耐久選手権)には、全員が女性ドライバーで構成されたアイアン・ダム・チームもエントリーした。

 今季F1チームでの役割を手にしていたのは、アストンマーチンのジェシカ・ホーキンスと、ウイリアムズのジェイミー・チャドウィックのふたりのみである。

 ただF1では、様々な役割で女性の活躍機会が広まっている。ストラテジスト、ピットクルー、エンジニア、広報担当者……多くの女性が、パドックで日々活躍している。しかしながら前述の通り、女性ドライバーがF1のシートにたどり着く機会は非常に限られている。

 女性であろうが、男性と同じような成功を収めることができるのは間違いない。女性の宇宙飛行士は珍しい存在ではなく、軍隊に従軍している女性も多い。そして多くの国で女性リーダーが誕生している。しかし、F1のシートは獲得できていない。

 F1はテクノロジーやイノベーションの面でモータースポーツ業界をリードしている。しかし女性ドライバーに対するサポートが不足しており、その結果レギュラードライバーが誕生していないわけだ。近い将来でもそれが変わる見込みはほとんどなく、若い女性ドライバーたちに適切なサポートを提供するのは不可欠だ。

 元F1ドライバーのデビッド・クルサードらを中心に立ち上げられた非営利の育成機関「More than Equal」は、女性ドライバーたちがトップレベルのモータースポーツに参加するのを妨げる障壁を打破するために、特別なプログラムを通じ、今後10年でF1に女性ドライバーをデビューさせようとしている。

Jamie Chadwick, celebrates on the podium.

Jamie Chadwick, celebrates on the podium.

Photo by: Sam Bloxham / Motorsport Images

 Wシリーズは、モータースポーツにおける女性ドライバーの活躍機会を提供するためのものだった。今シーズンも一定の成果を挙げ、シルバーストンでのレースでは、100万人ものイギリスの視聴者がレースを見た。F1以外のモータースポーツで、これほどの視聴者を集めたのはイギリスでは初めてだったという。

 これだけの視聴者を集めるということは、ビジネス的な観点から言えば、利用する価値のあるモノと言えるかもしれない。そして女性ドライバーがレースをするのを見たいという需要が存在するのであれば、これはトップレベルのカテゴリーにも反映すべきなのではないだろうか‏?

 さらに深い視点から見れば、女性ドライバーがコース上で活躍すれば、若い女性たちの注目が集まり、希望や勇気を持ってサーキットで夢を追うこともできるはずだ。

Super One British Kart Championship: Lewis Hamilton, 1st position, Cadet Class

Super One British Kart Championship: Lewis Hamilton, 1st position, Cadet Class

Photo by: Motorsport Images

 モータースポーツは、カートからキャリアをスタートさせ、F1などのトップカテゴリーにたどり着くまでには、多額の資金を必要とする。実にお金がかかるスポーツなのだ。

 女性ドライバーがレースキャリアを通じて悩まされる問題のひとつは、資金と長期的なスポンサーの欠如だ。この問題は、もちろん男性ドライバーにとっても乗り越えるのが実に難しい問題だ。しかし古い認識を克服しなければならないという意味では、女性ドライバーにとってはより大きな懸念となる。

 適切な財政的支援やスポンサーがなければ、質の高い機器やプログラム、体力トレーニング、そして最高のマシンを手にすることはできない。これらを手にする上では、男性ドライバーと比較して女性ドライバーは不利な立場に置かれている。

 More Than Equalは、いつの日か女性ドライバーがF1に参戦するというだけではなく、ワールドチャンピオンになることを目指している。そして女性ドライバーがモータースポーツに参戦することを妨げているモノが何なのか……それを特定し、その障壁を引き下げて、女性たちがF1のシートに近づけるような枠組みを構築したいと考えている。

 FIAのウーマン・イン・モータースポーツ・コミッションやガールズ・オン・トラックなど、様々な組織のイニシアチブにより、多くのモータースポーツに女性が参加する可能性が開かれている。そんな中、More Than EqualはF1のみに焦点を当てているため、F1を目指す女性ドライバーたちにとっては不可欠であろう。

 クルサードはこの活動により、レーシングドライバーになることを渇望している若い女性ドライバーを見つけることができれば、F1参戦に必要なサポートシステムをまとめることができると信じている。そしてMore Than Equalは、レーシングキャリアの早い段階で、若い女性ドライバーたちに対して、男性ドライバーと同じチャンスをサポートを提供できるように務める。10年以内にF1デビューさせるという目標を達成するためには、十分な時間がある。

 現時点では、女性ドライバーがF1を目指すのは非常に困難だ。しかし、More Than Equalなどのイニシアチブの存在により、将来は有望に見える。レースキャリアを通じて適切なサポートと経済的支援を受け、F1への障壁を破る段階に一歩ずつ迫っている。

 
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