フラガ、スーパーフォーミュラをドライブした2日後にeスポーツ大会で優勝。超多忙な”二刀流”レースキャリア「ずっと走っていられるのがメリット」
12月10日に行なわれたHRC(ホンダ・レーシング)のeスポーツ大会「Honda Racing eMS 2023」のグランドファイナルを制したのは、イゴール・オオムラ・フラガ。スーパーフォーミュラを走った2日後に、全く別のカテゴリーを制する”二刀流”の活躍を見せた。
イゴール・オオムラ・フラガは年末、多忙な日々を過ごしたが、12月10日にホンダ・ウエルカムプラザ青山で行なわれたHRC(ホンダ・レーシング)のeスポーツ大会「Honda Racing eMS 2023」のグランドファイナルを制し、上々の形でシーズンを締め括った。
まさに多忙だった。フラガはブラジル代表として12月1〜3日にスペインのバルセロナで行なわれた「グランツーリスモ ワールドシリーズ 2023」のワールドファイナルに参加し、ネイションズカップで3位となった。その後帰国し、一路鈴鹿サーキットへ向かい、12月6日〜8日に行なわれたスーパーフォーミュラの合同/ルーキードライバーテストに参加。7日と8日にはTCS NAKAJIMA RACINGのマシンのステアリングを握った。そして9日は猛練習に充てた後、10日に開催された「Honda Racing eMS 2023」のグランドファイナルに挑み、チャンピオンに輝いた。
Photo by: Motorsport.com / Japan
Podium:Winer Igor Fraga,2nd 佐々木拓眞,3rd 伊藤玲夢
「最近は良い成績を収めることができていたんですが、2位や3位ばかりだったので……こういう形で優勝できたのは嬉しいです」
超ハードスケジュールを駆け抜けたフラガは、「疲れた……」と言いながらもそう答えた。
これだけのハードなスケジュールをこなしたフラガ。以前にはGTワールドシリーズでチャンピオンを獲得し、2022年にはGT300クラスとスーパーフォーミュラ・ライツに参戦しながらeモータースポーツの大会にも挑戦。二刀流ドライバーの筆頭とも言える存在だ。
バーチャルとリアル、両方でレースを戦うメリットについて尋ねると、フラガは「ずっと走っていられること」と語った。
「レースをやっていない日がないんじゃないかと思うくらいに、いろんな形、いろんなクルマに乗っています。今年はGT300とスーパーフォーミュラ・ライツでレースして、先日はスーパーフォーミュラに乗りました。そしてバーチャルでは実に色々なクルマに乗りました。すごくレースの経験を積んだんじゃないかと思います」
「今年はその合わせ込みだったりとか、もうちょっとうまくやれた部分もあったんじゃないかと思います。多く走っている分、課題も見つけやすいんじゃないかと思います」
バーチャルの経験がリアルのドライビングに活きるのか? まったく違うモノではないかと思うが、フラガは間違いなく活きると断言する。
「間違いなく活きます! 多少違う部分もあるんですが、バーチャルの方がシビアかもしれません。Gを感じられないですし、タイヤの挙動も、100%を超えるとグリップをロスする方向にしかいきません。リアルだと、少しホイールスピンしても、前に進むこともできますからね」
タイヤを扱うのは、レースではもっとも難しいことのひとつ。その挙動は路面や温度など、ほんのわずかなことでもガラリと変わる。それを現実と同じようにバーチャルの世界で表現するのは難しいのではないかと、フラガも想像する。
「ゲームでは、(タイヤについては)実際と違う形で表現されているのかなと思います。タイヤって、実に謎の多い物体じゃないですか。それをゲームで再現するのって、難しいですよね。クルマの挙動や作りは、厳密に再現されていると思います」
Photo by: Masahide Kamio
イゴール・オオムラ・フラガ, TCS NAKAJIMA RACING
スーパーフォーミュラという、F1に次ぐ速さを持つと言われるマシンをドライブした直後、バーチャルとは言えより速度域の低いシビックやNSXで今回のイベントを戦うことになったフラガ。先の言い方を借りれば、速いマシンから遅いマシンに乗り換えた、その効果が出て勝つことができたのではないかというようにも感じられる。しかしフラガは、スーパーフォーミュラに乗ったことは、今回の結果にはまったく活きていないという。
「いやぁ、スーパーフォーミュラに乗ったことが今回に活きたというのはちょっと違うかなぁ。遅い車も違う乗り方が必要だし、特にシビックは荷重移動が大きかったです。ブレーキのコントロールや荷重移動が、スーパーフォーミュラとは全然違うんです」
「ですから、金曜日の夜に家に帰ってきて、昨日(9日)はほぼ1日中練習して、新しいクルマを学んだという感じです」
「フルエアロのマシンから、エアロがほとんどなくて、市販車に近いクルマになると、違いますよね」
そう語るフラガは、スーパーフォーミュラの”フィーリング”について、次のように説明してくれた。
「スーパーフォーミュラは、荷重をかけなくても、『なんでこんなにフロントのグリップがあるんだ!』という場面が度々あるんです。いつものつもりで『ここで荷重をかけないと』と思うと、減速しなきゃいけないじゃないですか? すると、減速しすぎてしまうんです」
「でもそのままの速度で行くと、フロントのグリップが出てきて、曲がれてしまう。そこが若干不自然でした。『なんでここでグリップが来るの?』という、僕のイメージと違うところがあって、テスト初日はそこに少し苦戦しました」
そういうフィーリングを感じたコーナーは、フラガ曰く”逆バンク”だったという。
なおフラガは、いずれのメーカーの育成ドライバー枠でもない立場。「F1ドライバーになることが目標」と公言するフラガにとって、今回ホンダ主催のeスポーツイベントで優勝したことは、F1用パワーユニットの開発と製造を手がけ、2026年からF1へ復帰するホンダとの関係性を持つ絶好の機会になったようにも見える。
「僕みたいにメーカーとの繋がりが無い立場からすると、どこかのメーカーと繋がりを持たなければいけないと思っています。そのきっかけになればいいなと思います」
「僕としては、今参戦しているカテゴリーで良い成績を残せれば、次のステップは訪れると思っています。今は自分に出来るベストを尽くし、色々な人に注目してもらえればと思い、全力でやっています」
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