レーシングドライバーがトレーニングに活用する自転車も”フィッティング”が欠かせない?
レーシングカーをドライブする際に、シートに身体を合わせる”シートフィッティング”が必要不可欠だ。しかし今や多くのレーシングドライバーがトレーニングに使う自転車も、最大限に活かすためには”フィッティング”が欠かせない。
Ukyo Sasahara
Motorsport.com / Japan
モータースポーツを戦うドライバー、ライダーのトレーニングには、昨今では自転車を使うことが欠かせない。様々なドライバーやライダーが、特に心肺機能を高めるため、自転車を使用。コースの下見をする際に、ロードバイクに跨る選手もよく見られる。
ただ、効率的にトレーニングするためには、自転車が身体に合っていることが必要不可欠。そのため、”フィッティング”と呼ばれる作業が存在する。ドライバーのサイズに合わせてサドルの高さや位置、そして形状を変更し、ハンドルの高さや前後のポジションなども整える。さらにはシューズのインソールの形状、クリート(競技用の自転車は、ロスなく力をペダルに伝えるため、”ビンディング”を用いてシューズとペダルを固定する。クリートとはペダルにシューズを繋ぐためのパーツ)位置を細かく調整する。それはまるで、レーシングカーのシート合わせをするようなモノだ。
最近自転車をトレーニングに取り入れた笹原右京は、今年の初めにアメリカのロードバイクメーカー大手であるスペシャライズドの銀座コンセプトストアを訪れ、ロードバイクのフィッティングを行なった。
笹原が受けたのは「RETÜL FIT」というフィッティング。まずは身体の特徴を観察・計測し、その後3Dモーションキャプチャを用いて身体の動きをリアルタイムで見ながら実際にバイクを漕ぎ、そしてバイクのサイズを理想の数値に近づけていく。これによって、最適な走行を実現するのだ。
このフィッティングを受けた笹原は、徐々にそのケイデンス(ペダルの回転速度)が自然に上がっていき、ペダリングのパフォーマンスが間違いなく改善していった。実際、最初は1分間に80回前後の回転数だったモノが、様々な調整を経た結果、1分間に100回以上という数値となった。しかも本人は、特に力を入れたということでもなかったようだ。
Ukyo Sasahara
Photo by: Motorsport.com / Japan
「ちゃんとポジションを決めることだったり、ちゃんと身体を使えることが、非常に重要だと思います。レースにおいても、自転車においても、それが重要なんだということを痛感しました」
RETÜL FITを受けた笹原はそう語った。
「やってみて、ワクワクしました。本当に数ミリの変化で、これまで使っていた部分がこういう形で使えるようになったり、もっと力をかけられるようになったり……そういうことが実感できました」
「それはレースも一緒です。ドライビングポジションを数ミリ単位で調整することは少ないですが、マシンのセッティングでは、もっと細かい部分で調整します。それは感じられる部分なんです。それが非常に重要なことなんだということを認識しました」
スペシャライズドの担当者も、フィッティングの重要性について次のように語る。
「自転車はペダリングの時に膝が上下します。ケイデンスを見ると、1分間に数十回上下運動を行なっていることになります。その中で(シューズとペダルが)固定されている状態で乗るので、数mm単位の調整が、膝の怪我の予防だったり、パフォーマンスの向上に活きてきます」
「昔はプロ選手でもフィッティングを重視している方は少なかった。コーチも『これで乗っておけ』と言うことが多かった。でも今は、スペシャライズドを中心にフィッティングが定着してきて、プロチームでもやるようになってきたんです」
そう技術的な進歩があったと明かす。
「プロチームもこのRETÜL FITを受けて、快適に速く走れるポジションを見つけていっています。実際にプロ選手も行なっているフィッティングサービスです」
「たとえばハンドルを下げれば、一時的には速くはなります。筋肉を使う量が増えますからね。ただそれは、誰にでも当てはまることになるかは分かりません。身体が効率的に、長い距離を走ってパフォーマンスを発揮できる”道”を見付けてあげなければいけないんです。そうしなければ、どこかに痛みが出たり、パフォーマンスを出しにくかったりします」
「一般の方でも受けていただくと、快適に遠くまで行けるように、そしてさらにペダルを踏みやすくなります。そういう意味では、フィッティングというのは意味のあることなんだなと思います」
レーシングドライバーたちが効率的に自転車トレーニングを行なう上でも、フィッティングは欠かせないとスペシャライズドの担当者は言う。
「フィッティングがしっかりできていないと、心拍数が上げられないポジションで自転車に乗っているかもしれません。力もかけられず、筋肉も使えないということにもなりますし、使う筋肉が全然違ってしまうことにもなりかねません。ですので、適切なフィッティングを行なうことが、適切なトレーニングをするための近道になるということもあります」
「自転車が身体に合っていないと、怪我をしてしまう可能性もあります。それがないようにするため、自転車を身体に合わせていく。まずはそれをやって、心肺機能や集中力を高めていきましょうということだと思います」
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