
Thinking Forward
インタビュー:スージー・ウルフ「F1オーナーになる”野望”はなし。ウルフがひとりいれば十分でしょ?」
フォーミュラEに参戦するベンチュリのチーム代表を務めるスージー・ウルフが、motorsport.comのインタビューに応じ、チームの野望、そしてモータースポーツに多くの女性が進出することなどについて語った。
ベンチュリのフォーミュラEチームの代表を務めるスージー・ウルフは、ランキング首位に立っていたとしても、その直後に転落する可能性があるということを十分に理解している。
今のフォーミュラEでは、チャンピオンシップ上位のドライバーが予選序盤に走らねばならず、せっかくランキングを上げたとしても、次のレースでは大きく低迷することも珍しくない……つまりシーズンを通じて一貫性のあるパフォーマンスを披露するのは難しく、各チームがジェットコースターのように浮き沈みを繰り返している。

Photo by: Sam Bagnall / Motorsport Images
ウルフ代表は、ベンチュリのチーム代表となって初めて、ロンドンでのePrixに挑む。
「今回は私にとって初めてのロンドンでのレースですから、とても楽しみにしています」
そうウルフ代表は語る。
「我々には、チャンピオンを争っているドライバー(エドアルド・モルタラ)がいます。でも、まだ本当に多くのライバルと争っているんです。これは、フォーミュラEにとって大きな課題だと思います。勢力図は変化しやすく、一貫性を保つのはとても難しいのです。ニューヨークでの週末は大変でしたから、そこから立ち直る必要があります。残りの4レース、全てうまく戦う必要があるんです」
「フォーミュラEにとって非常に重要な要素は、エンターテイメント性という部分だと思います。それは、我々がとても意識していることですし、エキサイティングなレースを提供したいと考えています。モナコePrixは良い例だったと思います。グランプリコースに移ったことで、オーバーテイクが多く繰り広げられ、首位は最終ラップで変わることになりました」
「アタックモードが採用されたことで、戦略の面でエキサイティングになりました。常に、各車が前に行ったり後ろに下がったりするようになったんです。ファンブーストのような他の要素もありますが、それは失う可能性があると思います。でもとにかく、今シーズンはとても多くの勝者が誕生する、非常にエキサイティングなモノとなりました。たしかに勢力図の移り変わりが大きく、このスポーツは公平性を欠いていると主張することもできます。でもそれは、我々も今調査していることなんです」
フォーミュラEは、そういった様々な問題点に正しく対処し、問題点を修正していく必要がある。もはやこのシリーズは、”生まれたばかり”ではないのだ。特に最近は、メーカーの撤退も出始めている。将来に向けて正しい決断を下す必要があるのだ。
「我々はもはや、周りに多くの問題を抱えた新興企業ではありません。今は本当に強固な基盤を築き、成長するための長期、中期、そして短期的な計画を立てるという変化の必要性に直面しています」
そうウルフ代表は言う。
「このシリーズのマネジメント陣には、素晴らしい人々が揃っています。彼らはより良いショーを生み出し、それを長期的に確実なモノとするために変更する必要がある部分、そして我々をより良い状況に置くために必要なことを理解しているんです」
「来る次の大きな変化は、Gen3マシンの導入です。これは、来シーズンが終わると、投入される予定です。そしてこのフォーマットが最高のモノであることを確認するための方法については、明らかに多くの議論があります。おそらく、予選フォーマットを少し公平なモノにする変更が必要でしょう」
チーム代表を務める女性は、モータースポーツ界広しと言えど、それほど多くない。そんな中でもフォーミュラEという世界選手権シリーズで、ベンチュリのチーム代表を務めるウルフの存在は、モータースポーツの世界での女性が活躍する場を広げていく上で、非常に大きな影響力を持っていると言えるだろう。
「私たちは、モータースポーツ界だけでなく、より広い世界で多様性が非常に大きな話題になっているということに、大いに助けられてきました」
そうウルフ代表は語る。
「人々は今、多様な環境を見ることを期待しています。そしてそれが多様でなければ、十分ではないのです。今は勢いがあるために、それについて話をしても大丈夫です。でも、それこそが問題なのです。違いを生み出すために、我々全員が取る行動が重要なのです。我々は非常に多くの素晴らしいチャンスを目にしています。でも、そのチャンスを満たすだけの、十分な才能を持った女性がいません。そのため、”ガールズ・オン・トラック”のキャンペーンでは、草の根レースに参入することに重きを置いていますし、このスポーツへの門戸を確実に開いています。そして次に、様々なスポーツで成功している才能のある女性の例を取り上げ、そこから模範となるモノを作り上げていきます」

Photo by: Daimler AG
ウルフ代表は、ベンチュリで多数の女性を雇用しており、今では従業員の約33%が女性だという。そして自身も含め”働く母親”も数多くいるという。
「私たちこそが、最も効率的であり、マルチタスクをこなせる人たちなんです。だだ、そうしなければいけないんですからね」
そう言ってウルフ代表は笑う。
「しかし、それが成功していることを証明する必要があります。なぜなら私の仕事は、結局のところチームのパフォーマンスを上げるということなんですからね。そして今年のフォーミュラEでのパフォーマンスで、それが実際に機能するということを示せたと願っています」
彼女は、自分自身の将来の野望について、F1でチーム代表をすることは考えていないという。
「だって、F1にはウルフがひとりいれば十分でしょう? ふたりもいたら、多過ぎますよ」
彼女の夫は、メルセデスのF1チームで代表を務めるトト・ウルフである。

Photo by: Channel 4
「私がベンチュリに加入した時には、今とは全く異なる状況にありました。そしてチームには、エキサイティングなことがあります。将来に向けてとても野心的な、新しいアメリカ人のオーナーがいるんです」
「私自身の個人的なことで言えば、常に進化するのが好きなんです。私は自分自身にプレッシャーをかけ、成長し続けるために自分自身に挑むのが好きです。だからシーズンが終わったら、実績を評価し、そしてチームとして達成したことを誇りに思えることを期待しています。その後で、将来何が起きるのかということを見てみたいと思います」
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