なぜサウジアラビアはモータースポーツに巨額の投資を始めたのか? 同国スポーツ大臣が語るF1誘致とeスポーツの可能性

今日日、地球上でサウジアラビアほどモータースポーツに投資を行なっている国はないだろう。今季のF1初開催を控え、モータースポーツ界でも存在感を強めているサウジアラビアがこれほどの投資を行なう理由はどこにあるのだろうか。同国でスポーツ大臣を務めるアブドゥルアズィーズ王子に話を伺った。

なぜサウジアラビアはモータースポーツに巨額の投資を始めたのか? 同国スポーツ大臣が語るF1誘致とeスポーツの可能性

 サウジアラビアのモータースポーツ界への献身は、F1の2021年シーズン終盤のサウジアラビアGPとして世界に表れる。F1はサウジアラビアと長期の開催契約を結んでおり、最終的にはジェッダのストリートサーキットからキディヤの専用サーキットでF1を開催することとなっている。サウジアラビアはF1以外のモータースポーツ誘致にも力を入れており、ダカール・ラリーやフォーミュラE、エクストリームEも開催している。

 なぜこれほどまでにサウジアラビアはモータースポーツに注力するのだろうか。そこでサウジアラビアのスポーツ大臣であるアブドゥルアズィーズ王子に、モータースポーツに対する同国の意欲や、F1の「#WeRaceasOne」という差別撤廃のメッセージをどう受け入れるかなど、話を聞いた。

「(投資を行なってきたのは)モータースポーツだけではないが、モータースポーツにスポットライトが当たることが多かったのかもしれない。王国では多くのスポーツに投資を行なっている」と彼は語る。

「政府は、若者の未来のためにスポーツが非常に重要な役割を果たすことを理解している。王国の人口の40%は40歳以下だ。我々は彼らをアクティブにしたいし、もっとスポーツに参加してほしい。そしてそれを正しい方法で行なう必要がある。2017年に32個だった(国内のスポーツ)連盟は、今では92個になった。これは国内で大きな投資が行なわれていることを示している」

 サウジアラビアは、政府主導の経済改革計画「ビジョン2030」の一環としてスポーツへ投資を行ない、サウジアラビアの選手が国際的に活躍する選手から学び、国内スポーツのレベルを世界水準まで押し上げることを目指している。モータースポーツ界では、その例としてFIAバハ・クロスカントリー・ワールドカップで複数のチャンピオンを輩出。T3カテゴリーでは、サウジアラビア出身の女性ドライバーであるダニア・アキールがタイトルを獲得し、2022年のダカール・ラリーへの出場が決まっている。

Saudi driver Dania Akeel won the FIA Cross Country Baja World Cup.

Saudi driver Dania Akeel won the FIA Cross Country Baja World Cup.

Photo by: FIA

「(サウジアラビアでは)たった4年前まで、女性が車を運転することは許されてはいなかった。その発展が実際にスポーツ以上のモノであるとわかるだろう」と彼は続ける。

「これは住みやすさや若者へ与えられるチャンス、国際的な舞台で存在感を示すことに関わるモノだ」

 しかし、世界的な注目を集めるということは、同時に国への監視の目も厳しくなるということだ。厳格なイスラーム教義を重んじた政教一致体制を採るサウジアラビアはかねてから国際社会、特にヨーロッパやアメリカから人権問題について槍玉に挙げられてきた。あらゆる差別の根絶を目指した「#WeRaceasOne」を掲げるF1がサウジアラビアでグランプリを開催することについてもこの点で批判が寄せられ、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、人権問題から目を逸らさせる“スポーツウォッシュ”だとしてサウジアラビアGPの開催を非難してきた。

 サウジアラビアはそれらをどのように受け入れていくのだろうか。

「この国では誰もが歓迎される。他の国と同様に我々にも独自の文化や風習があるが、我々はすべて(の文化や風習)において敬意を払う」とアブドゥルアズィーズ王子は語る。

「それだけだ。これからもたくさんのイベントを開催していきたいと思っている。世界中の皆がサウジアラビアに来て、サウジアラビアがどのような国か見てもらうことを心待ちにしている。我々は誰でも歓迎するし、皆を尊重している。実際に皆のためにショーを確実に実施する必要がある……このレースに訪れた皆が他とは違う体験を得られることを願っている」

Jeddah Street Circuit overview.
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写真:: Uncredited

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 アブドゥルアズィーズ王子は、2018年にフォーミュラEを主催したことが、サウジアラビアの観光ビザ解禁に拍車がかかったと考えている。

「今は観光ビザを世界中で発行できているが、2017年のサウジアラビアには存在しなかったモノだ。フォーミュラEを通じて(観光ビザ解禁の)プロセスが開始され、そこから3ヵ月以内に観光省がスポーツ部門を含むシステムを採用することになった」と彼は語る。

「今では50以上の国で到着時にビザを受け取ることができる。解禁していなかった以前は、どのイベントも開催することはできなかった」

 F1としては、先日行なわれたF1グローバルファン調査で、ファンの年齢層が若返り女性ファンも増えていること、24歳以下の年齢層ではゲームでもモータースポーツを楽しんでいることが明らかになった。

「我々が参画するには絶好のタイミングだと私は思う。また、オーナーが新しくなったF1は、『F1とは何か』、『ファンとは何か』という哲学を変えてきたのだと思う」と彼は語る。

「F1はソーシャルメディア上でとても積極的に活動しているし、Netflixのシリーズもある。その結果多くの人がF1に興味を持ち、レースにあまり興味のない人たちがF1を観るようになった。そして今、彼らはF1ファンになっている。若者や次世代の人々にF1の未来を担ってもらうというF1のアプローチは、まさに変革をもたらすものだと思う。我々としても驚くべきことだった。私が述べたように、(サウジアラビアの)人口の70%は40歳以下であり、彼らはテクノロジーに精通している」

 ゲームやeスポーツについては、人口分布やスポーツへの情熱を背景に、サウジアラビアにとって大きな機会になるとアブドゥルアズィーズ王子は考えている。

Abdulaziz bin Turki Al Saud.

Abdulaziz bin Turki Al Saud.

「ゲームの良いところは、いつでもどこでもできる点にある。我々は、ロックダウン中に行なわれたル・マン24時間バーチャルレースのタイトルスポンサーになった。その結果、多くの人々がサウジアラビアに興味を持ち、参加してくれた」

「サウジアラビア内で実際にゲームを管理している独自のeスポーツ協会(SAFEIS)があることはとても重要だ。これは未来の波だと考えている。他のスポーツと同じくらい重要視すべきことだと捉えている」

「若者や将来のためにはとても重要なことだ。我々もこの波に乗らなくてはならない」

 
 
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