変貌を遂げるマカオGTカップ。”ワークス対決”色は年々色濃く……

今年のマカオGTカップには、多くの自動車メーカーがワークス体制で参戦。その存在価値は年々変化を遂げている。

 マカオGTカップはほんの数年前まで、GTアジア・シリーズやアジアン・ル・マン・シリーズを戦う、アジアのプライベート・チーム、セミプロやアマチュアのドライバーが集うお祭り的なイベントだった。しかし、GT3カーによるレースが世界的に隆盛となり、マカオGTカップにも自動車メーカーが強く関与するようになった。2015年にFIA-GTワールドカップの称号が冠せられるとその勢いは加速し、ヨーロッパを活動の主軸としてきたチームやドライバーがこぞって参戦し始めるようになった。

 11月16〜19日に中華人民共和国マカオ特別行政区の市街地を一時的に封鎖した公道コース、1周6.120kmのギア・サーキットで20台の参加により開催された第64回マカオGP・FIA-GTワールド・カップ。そこにはドイツ・ツーリングカー選手権やブランパンGTシリーズなどに参戦する“プラチナ”ドライバーが15名、“ゴールド”ドライバーが3名、“シルバー”ドライバーが2名と、もはや往時の“緩さ”を感じさせない自動車メーカーの威信をかけた“ガチンコ”勝負の場に”成り果てて”いた。

 当然レースは過激になった。なにしろ、自動車メーカーと契約する“ワークス・ドライバー”は自身で参戦資金を用立てる必要もないから、チャレンジングでデンジャラスな市街地コースであっても、走りではリスクを冒してまで究極を追い求める。たとえクラッシュしても、修復費用に頭を悩ませるわけではない。むしろ、目一杯の戦いをしないで成績を残せないほうが、彼ら“ワークス・ドライバー”にとっては死活問題である。

 こうした背景もあるからだろう、ここ数年のマカオGTカップは少し行き過ぎているようにも感じる。もともと、ギア・サーキットは山側区間のコース幅が狭い。年々巨大化するGTカーにはあまりにも窮屈な舞台だ。だから今年のFIA-GTワールド・カップ予選レース、ダニエル・フンカデッラ(メルセデス)がポリス・コーナーでバリアに突き刺さり、後続車両が避けきれずに多重衝突事故となったのも決して不思議ではなかった。

 今年のFIA-GTワールド・カップには、これまでのBMW、アウディ、メルセデス、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリといったヨーロッパ勢に加えて、日本のホンダが新たにNSX-GT3で参戦した。「従前のアメリカに加えて、アジアでのシェア確保を狙っている」と、ドライバーのランゲ・ファン・デ・ザンデ自身が営業マンよろしくセールストークを披露した。

 また、ブランパンGTシリーズに参戦しているニスモ現場責任者の渡辺亮も今回のマカオGPには顔を見せた。目的を訊ねると、「ヨーロッパだけでなく、アジアでもニッサンGT-R NISMO GT3を走らせたい。19年仕様の正式販売に向けて、ここで開催される18年のFIA-GTワールド・カップでは19年仕様を先行して走らせたい。また、現行の15年仕様の貸し出しも含めて、18年の鈴鹿10時間耐久レースには複数台を送り込みたい。そのために、今回はチームやドライバーと接触している」と認めた。

 マカオGPのFIA-GTワールド・カップは、今後はさらに過激な自動車メーカーの対決の場になりそうだ。しかし、こうした現状を受けて、アジアでGTレースを盛り上げてきたプライベート・チームやアマチュア・ドライバーはすでにGT4カーで競える場へ避難している。すでにヨーロッパの自動車メーカーと親密な繋がりを持つチームやドライバーが大半を占める中、ホンダやニッサン/ニスモは限られたパイを奪い取れるのだろうか? 店を開いて商品を並べただけでは客足は鈍い。馴染みの店から新規開店したこちらの店へ足を向けさせるには、相応のベネフィットを用意しなくてはならない。

取材・執筆/石井功次郎

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この記事について
シリーズ GT
イベント名 FIA GT World Cup: Macau
サーキット Circuito da Guia
記事タイプ 速報ニュース