motorsport.com編集長日記:「お前ら、クソくらえだ!」

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motorsport.com編集長日記:「お前ら、クソくらえだ!」
執筆:
2019/03/22 11:22

motorsport.com日本版の編集長が、日々経験する様々な事柄の中から、琴線に触れるようなものをピックアップ。

2019年3月22日・金曜日

「お前ら、クソくらえだ!」

 先週から右肩が痛くて思うように腕が上がらない。趣味の弓道も腕が上がらなければ出来ないので、ここ2週間ほどお休み。整骨院に行ったら若い女性の整復師が仕事中の姿勢の悪さを指摘してくれた。椅子に座った状態で上体がやや後ろに傾斜気味とか。よってパソコンで原稿を書くときに頭が前下方に向くために猫背になる。それが痛みの原因でしょう、とのこと。まあ、昔から姿勢はあまり良い方ではなかったので、原因は納得。しかし、治していくとなると相当時間がかかりそう。毎日精進しなくては。

 私なんぞ、たったこれだけのことでヒーヒー言っているのだが、F1ドライバーともなると身体に相当な負荷がかかっているはずで、あちこちに痛みを抱えているはず。ただ、年齢が若いということは負荷に対して強力な反発力をもっているということで、還暦を過ぎた私と彼らが同じレベルであると考えてはいけないことは理解している。それにしても、年間21戦もの戦いをくぐり抜けてくるドライバーは、相当強靱な身体を持っているに違いない。特にラリーの大事故から生還したロバート・クビサなどは、自由に動かない手で本当によくやっている。

 でも、F1ドライバーが身体的に強靱でも、精神的にどうかというとそこは我々と同様に弱さもある。オーストラリアGPで勝ったバルテリ・ボッタスがチームとの無線で、“To whom it may concern; Fxxk you.“ と叫んでしまった。日本語に訳すと「お前ら、クソくらえだ!」というようなものか。この叫びは、昨シーズン1勝も出来なかった彼がどれだけ精神的に辛い思いをしていたか、手に取るように分かる叫びだ。

 彼は、「思わず叫んでしまった。別に深い意味があって言ったんじゃない」と弁明したが、私は彼が辛い思いをしていた昨年1年間、どれだけ世間が彼に冷たかったかを表す指標のような言葉だと思う。「ずっと俺のことを馬鹿にしやがって! 勝ちゃあいいんだろう!」という開き直った気持ちが叫びの裏にある。それは、裏を返せば弱さの叫びだ。

 このボッタスの例に見るように、超高速のF1マシンを操る鉄の筋肉を持った戦士達でも、その内面は実にナイーブで脆い。勝てなかった1年間、彼は勝てない理由を探しながら悪路を走ってきた。数多くの批判や悪口を聞きながら、表面だけは強面を見せながら、葛藤の渦の中にいたのだ。その時に溜まったあれやこれやがメルボルンで勝った途端に沸騰して、叫び声となって飛び出した。辛かったのだ。しかし、一番驚いたのは無線で叫びを聞いたエンジニアだろう。ひぇ〜参ったと思ったか、よくぞ言ったと思ったか。そのエンジニアがもし返事をしていたら、どんな返事をしたのか聞いてみたい。

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シリーズ F1 , 編集長日記
執筆者 赤井邦彦
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