佐藤琢磨「モータースポーツの魅力・楽しさをみんなに知って欲しい」

インディ500を制し、束の間の凱旋帰国中にある佐藤琢磨が、motorsport.comの取材に答えた。

佐藤琢磨「モータースポーツの魅力・楽しさをみんなに知って欲しい」
Winner Takuma Sato, Andretti Autosport Honda
佐藤琢磨
佐藤琢磨とホンダ八郷隆弘社長
佐藤琢磨と八郷隆弘社長
佐藤琢磨の凱旋帰国に駆けつけたファン
佐藤琢磨凱旋帰国
Takuma Sato, Andretti Autosport Honda kisses the bricks with his team
Winner Takuma Sato, Andretti Autosport Honda
Takuma Sato, Andretti Autosport Honda celebrates his win of the Indy 500 by kissing the Borg-Warner Trophy on the yard of bricks
Winner Takuma Sato with team owner Michael Andretti, Andretti Autosport Honda
Winner Takuma Sato, Andretti Autosport Honda celebrates
Takuma Sato, Andretti Autosport Honda passes Helio Castroneves, Team Penske Chevrolet
Takuma Sato, Andretti Autosport Honda celebrates with milk in victory lane
Winner Takuma Sato, Andretti Autosport Honda
Takuma Sato, Andretti Autosport Honda with Michael Andretti, Andretti Autosport team owner and team on the bricks for a kiss
Takuma Sato, Andretti Autosport Honda crosses the finish line and the yard of bricks under the checkered flag for the win
Takuma Sato takes the checkered flag and win
Takuma Sato, Andretti Autosport Honda, Josef Newgarden, Team Penske Chevrolet
Takuma Sato, Andretti Autosport Honda in victory lane, with you Japan

 インディ500を制し、凱旋帰国中の佐藤琢磨。報告記者会見やファンイベント、スポンサー企業への挨拶など、多忙な日々を過ごしている佐藤だが、motorsport.comの取材に応えてくれた。

インディ500のスケール感・魅力

 佐藤琢磨は、6月13日に行われた記者会見の場で次のように話していた。

「このニュースを是非、多く取り上げていただいて、インディ500そしてモータースポーツの魅力をたくさん伝えていただきたいです」

 この発言の真意、そしてそのために成さねばならないと考えていることについて訊くと、佐藤は次のように答えた。

「具体的にどうしなきゃいけないかというのは、正直分からないですね。僕自身もシーズンを続けているし、現役でやっている以上はレースに集中しなきゃいけない。でもやっぱり、メディアに取り上げていただけるということが、人の目に触れて、(世間の)関心が強くなって、モータースポーツの魅力を伝える機会が増えるということに繋がると思うんです」

 そう佐藤は語る。

「そうすれば、より多くの人がサーキットに足を運んでくれて、『これ面白いな』というひとつのムーブメントになる。そうするとテレビ放送も変わってくるだろうし、全体的に日本のモータースポーツ界も変わる。さらに自動車業界全体にも良い効果があると思います。そういう風に伝えていきたいですね」

 そして佐藤は、インディ500の魅力や凄さを日本に伝え、それを若いレーシングドライバーを目指す子供たちに反映できるようにしたいと考えている。

「今回は、(インディ500での優勝が)日本人初だということで取り上げてもらえてると思うんです。でも、インディ500の魅力は、日本にいたらなかなか伝わってこないですし、みんな知らない。僕も、初めは知りませんでした。でも、本当に凄いことだし、どれだけスケールが大きいかということを、知ってもらえるようにしたいです。次にインディ500に挑戦する若い子が、もっと応援してもらえるようにね。(インディ500への理解が高まって)メディアへの露出が増えれば、単純にスポンサーシップにも繋がるわけですから。そういう形でのサイクルができればいいなと思います」

子供たちがレースに触れるきっかけを作りたい

 佐藤は、東日本大震災の復興地を支援するためのプロジェクト『With you Japan』を立ち上げ、様々な支援活動を行っている。その一環として『TAKUMA KIDS KART CHALLENGE』と題した、子供たちがカートを体験できるプログラムを開催している。いわばモータースポーツへの”本当の入り口”とも言える存在だ。この『KIDS KART CHALLENGE』から、プロのレーシングドライバーを育てていく、そんな構想はないのか? 佐藤に尋ねると、次のように語った。

「やりたいですよね。それには本当に多くの人のサポートが必要だし、実際にスカラシップということになると、スポンサーシップとして多額の活動資金が必要になってきます。メーカーさんのご理解も、当然必要ですからね」

「でも将来的には、特に復興地からレーシングドライバーが育って行って、世界に通用するようになれば、すごく格好良いし夢のある話ですよね」

「でも、レースだけじゃなくていいと思うんですよ。あの子たちには、いろんなことに挑戦して欲しいし、いろんな世界を知って欲しい。でもレースに少しは関わったということで、その魅力を伝えてくれたりしたらいいですね。例えば大きくなって会社を起業したり、大きな会社に入った時、レーシングドライバーを応援しよう……そういう形でも良いじゃないですか。そんなきっかけを作れるような、お手伝い、サポートができたら良いなと思います」

インディ500を制した今、改めてモータースポーツの魅力は?

 佐藤が惹きつけられ続ける、モータースポーツ。その魅力とは一体何なのか? インディ500を制した今、改めてその想いを訊いた。

「楽しいですよ。レースは本当に楽しい! 今回のように嬉しい想いをしたことなんて、ほんの数回しかないんですよ。それ以外は辛いことばかりだから……それでもやるっていうのは、勝った時に喜びが爆発するからだと思います。心の底からね。しかもインディ500だと、35万人の歓声が、ひとつのエネルギーになるんです」

 コクピットでも、その歓声は聞こえるのだと、佐藤は説明する。

「聞こえますよ! アクセル全開の時は聞こえませんけど、アクセル抜いた時にはよく聞こえます。チェッカーフラッグを受けて、僕絶叫してたじゃないですか? それで(スポッターを務める)ロジャー(安川)から日本語で『おめでとう!』と言ってもらってハッと我に返った時、もうアクセルは緩めてたんですが、”ワーッ!”っていう観客の声が聞こえて、それはすごかったですね。2002年の日本GPでゴールした時も、観客の声が地鳴りのように聞こえたんですけど、それを上回るすごいエネルギーがあった。あの瞬間、レースは最高だなぁと思った。僕はレースが大好きだし、クルマが大好きだし、運転することが大好き。それをみんなの夢を乗せて、みんなで作業して、いろんな試行錯誤をしながら速いクルマにしていくというのは、非常に達成感があります」

ル・マン24時間レースへの興味

 インディ500は、F1のモナコGP、WECのル・マン24時間レースと並び、世界三大レースのひとつに数えられる。この3つをすべて制したのは、歴史的にもグラハム・ヒルただひとりしかおらず、今年はフェルナンド・アロンソがこの”完全制覇”目指しインディ500に挑んだ。

 佐藤琢磨はそのうちのひとつを今回制したわけだが、他のレースについてはどんな印象を持っているのか尋ねると、次のように答えた。

「アロンソなら(完全制覇)できると思いますよ。モナコのF1には、僕は戻れないですけどね」

 そう”三冠”について語った。

「でも、ル・マン24時間には興味ありますね、もちろん。今まではフォーミュラひと筋でやってきたので、今はインディのチャンピオンを獲りたいという気持ちがすごくあります。その後、もし機会があれば、ル・マン24時間レースに挑戦してみたいなと、ずっと思っています」

 佐藤は2012年、OAKレーシングのマシンに乗り、世界耐久選手権(WEC)の富士戦と上海戦に出走した経験を持つ。

「面白かったですね。1台のクルマをチームメイトとシェアするという経験がなかったですから、不思議な感覚でした。でもすごく連体感は生まれるし、チームメイトがタイムを上げると本当に嬉しい。その反面、自分のターンが近づいてくると、緊張感も上がるしね。そういうチーム一丸となってレースをするっていうのもすごく楽しいと思う。ル・マンはそんな耐久レースの頂点ですから、機会があればもちろん、やってみたいですね」

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この記事について

シリーズ IndyCar
ドライバー 佐藤 琢磨
執筆者 田中 健一