佐藤琢磨、2度目のインディ500制覇! ディクソンとの息詰まる接近戦は劇的決着で幕

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佐藤琢磨、2度目のインディ500制覇! ディクソンとの息詰まる接近戦は劇的決着で幕
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第104回インディ500の決勝レースが行なわれ、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が通算2度目のインディ500制覇を成し遂げた。

 インディカーの第7戦、第6戦インディ500の決勝レースが行なわれ、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨が2度目のインディ500制覇を達成した。

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 毎年5月に開催されていた伝統の一戦だが、今季はコロナ禍の影響で8月に開催延期。無観客での開催となり、例年30万人以上のファンが埋め尽くしていたインディアナポリス・モータースピードウェイの観客席にファンの姿はない。それでも、レースをひと目見ようと場外にファンが集っているシーンも見られた。

 ポールポジションはマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポーツ)。アンドレッティ家にとって、祖父のマリオ・アンドレッティが1969年に制して以来の栄冠を目指すレースとなった。ポイントリーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が2番手。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は自身初のフロントロウ、3番手からインディ500の2勝目を狙った。

 悪天候の予報もあったインディアナポリスだが、ドライコンディションでレーススタートに向けてセレモニーが厳かに行なわれていった。マリオ・アンドレッティがドライブし、息子のマイケル・アンドレッティが同乗する2シーターカーが先導し、全33台がパレードラップへ。3周のパレードラップ、ペースラップを経てついに500マイル(200周)のレースが幕を開けた。

 スタートでまずトップに立ったのはディクソン。アンドレッティの背後につけて加速すると、一気に前に躍り出た。佐藤もすぐにアンドレッティを交わし2番手に浮上。アンドレッティはその後、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)にも先行を許すと、ハンター-レイは勢いよく佐藤も交わして2番手に上がった。

 6周目、ジェームス・デイビソン(デイル・コイン)のマシンが炎上したことで最初のイエローコーションが出された。デイビソンのマシンは足回りにトラブルを抱えたのか、右フロントのブレーキローターが過熱し”爆発”。デイビソンはピットへと戻ろうとしたが、火の手が上がったためにマシンをコース内側に止めた。

 ピットレーンが9周目にオープンすると、シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)を先頭に後方の9台がピットインし、燃料を注ぎ足すトップオフを敢行。逆転を狙って上位陣と戦略をズラした。

 13周目にレースがリスタート。トップ3の順位は変わらなかったが、後方では3ワイドになるバトルも見られた。4番手にはアンドレッティを交わしたジェームス・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポーツ)が上がり、上位陣はほぼ等間隔でラップを重ねていった。

 すると25周目、8番手マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)がターン2で挙動を乱しクラッシュ。2度目のコーションが出された。ピットレーンがオープンすると、最初のコーションでピットに入った7台がステイアウト。それ以外のマシンがピットになだれ込んだ。

 佐藤はピットに入ったマシンの中で、ディクソンに次ぐ2番手でコースに合流し、チームワークでひとつポジションを上げた形。後ろにはアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポーツ)が続いた。

 オリバー・アスキュー(アロー・マクラーレンSP)を先頭に、32周目にリスタート。パジェノーはアスキューの背後にぴったりとつけ、すぐに先頭に立った。佐藤は速度の遅いマシンの後ろに詰まって、9番手から13番手までポジションを落としてしまった。

 45周目にトップを快走していたパジェノーがピットイン。アスキューもこれに続いた。トップオフ組が次々にピットインし、ディクソンがトップに復帰。ロッシ、リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター)、ハンター-レイ、佐藤というトップ5となった。ただ佐藤は、2度目のピットストップが近づく59周目にハンター-レイを交わし4番手に浮上した。

 各車が61周を過ぎたところで2度目のピットストップをしていく中、3番手につけていたヴィーケイがピットインでクルーに接触。さらにピットアウトのタイミングでストールしてしまい、上位戦線から離脱することに。ディクソン、ロッシ、佐藤はほぼ同じタイミングでピット作業を済ませた。

 戦略が異なるマシンが入り乱れる中、ディクソンは首位キープ。ロッシは5番手、佐藤は8番手でコースに復帰したが、佐藤は次々とオーバーテイクを決めていく。72周目にはロッシをオーバーテイクし、5番手に上がった。

 アスキューやパジェノーなどトップオフ組がピットに入り、佐藤が再び2番手に。しかしトラフィックの中を走っていた佐藤やロッシに対し、ディクソンは10秒以上のリードを築いていた。

 ところが85周目にダルトン・ケレット(A.J.フォイト)がクラッシュし、3度目のコーション。ディクソンのリードが一気になくなった。これで助かったのがフェルナンド・アロンソ(アロー・マクラーレンSP)。すぐ背後にディクソンがつけ今にも周回遅れになりそうなタイミングだったが、コーションに救われた。

 このコーション中、まず上位陣がピットイン。トップオフ組は一旦ステイアウトしたが、結局3周後にピットインし全車のタイヤ、燃料の状況がほぼ揃った形になった。

 93周目にグリーンフラッグが振られるが、コナー・デイリー(エド・カーペンター)とアスキューが最終コーナーでスピン。2台がピットレーン入り口で絡むようにクラッシュし、再びコーションが出された。アスキューは膝を痛めてしまったようだが、ふたりとも自力でマシンを降りた。

 101周目のリスタートでは、ロッシがターン1で佐藤のイン側に飛び込みオーバーテイク。ロッシはディクソンを逃すまいとプッシュし、102周目にはディクソンも交わしレースリーダーに。しかし、106周目には難なくディクソンが抜き返し、1周ごとにロッシとディクソンがリードチェンジを繰り返す展開となった。佐藤はパトリシオ・オワード(アロー・マクラーレンSP)にも抜かれ4番手に下がったが、その後ポジションを取り戻し3番手で前の2台を追った。

 122周目に、アレックス・パロウ(デイル・コイン・レーシング with チームゴウ)がクラッシュし、5回目のコーション。7番手からスタートしたルーキーは粘り強くトップ10を維持していたがここでレースを終えた。

 このコーションで全車がピットインするが、佐藤のマシンにピットアウトしたロッシのマシンが接触してしまった。佐藤の外側にはオワードのマシンがあり、佐藤が挟まれる形となってしまったのだ。その後、ロッシにはアンセーフリリースのペナルティが出され、隊列の最後尾の22番手まで後退した。また、アロンソはギヤがスタックしてしまいタイムロス。ステアリングを変えレースに復帰した。

 レースが132周目にリスタートすると、佐藤はチームメイトのグレアム・レイホールに交わされ実質3番手に後退した。チップ・ガナッシのフェリックス・ローゼンクヴィストがトップでリスタートしたが、ディクソンはチームメイトをあっさりパス。ローゼンクヴィストが後続を抑える形となり、ディクソンは4秒ほどのリードを作った。

 佐藤はチームメイトの前に出ると少しずつディクソンとの差を縮めていく。しかし今度はロッシがクラッシュしてしまい、144周目に6度目のコーションが出された。上位陣はステイアウトし、残り1回のピットストップでフィニッシュを目指す戦略。後方のマシンは、ピットに入り逆転にかけた。

 ロッシのマシンからこぼれたオイル処理が長引き、リスタートは155周目。レイホールが佐藤に襲いかかるが、佐藤は巧みにブロックし2番手をキープ。3番手にはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が上がってきた。

 ストレートスピードが伸びる佐藤は157周目についにディクソンを捉えオーバーテイク。このレース初めてトップに立った。しかしディクソンもすぐ背後を追走。燃費を節約しながら、ピットインのタイミングを伺った。

 168周目にアンドレッティがピットインしたのをきっかけに、各車が最後のピットストップ。佐藤は169周目、ディクソンは170周目にピットイン。このピットストップ競争はチップ・ガナッシに軍配が上がり、ディクソンは佐藤の前でコースに復帰する。しかしスピードに乗った佐藤は173周目のターン1でディクソンをオーバーテイクし、またもトップに立った。

 周回遅れをうまく利用し、ディクソンとの差を1秒に広げた佐藤。しかしディクソンもそう簡単に離されてはたまるかと再接近し、佐藤にプレッシャーをかけていく。

 ディクソンは何度か佐藤に並びかけるが、ストレートでの伸びが足りず佐藤を抜ききることができない。息詰まる接近戦のバランスを崩したのは、残り8周のところで佐藤の前に現れた3台の周回遅れ。これで佐藤は、残り5周の時点でディクソンに対して、1.1秒のギャップを築くことに成功した。

 その直後、スペンサー・ピゴット(Citrone Buhl Autosport with RLL)が大クラッシュ。ピットレーン入り口のバリアに衝突した衝撃は大きく、ピゴットは意識はあるものの担架に載せられた。

 これで7度目のコーションが出され、レースはそのままイエローチェッカー。佐藤が2017年に続き、インディ500での2勝目を達成した。

 かつてレイホール・レターマン・ラニガンに所属していた2012年、ファイナルラップでスピンし、チームに優勝を届けることができなかった佐藤。古巣に戻って2年目、ついにその時の忘れ物をチームに贈ることができた。

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順位 ドライバー チーム 周回数 タイム 前車との差 Mph ポイント
1 Japan 佐藤 琢磨 United States Rahal Letterman Lanigan Racing 200 3:10'05.088     157.824  
2 New Zealand スコット ディクソン United States Chip Ganassi Racing 200 3:10'05.145 0.057 0.057 157.823  
3 United States グラハム レイホール United States Rahal Letterman Lanigan Racing 200 3:10'05.183 0.095 0.037 157.823  
4 United States サンティノ フェルッチ Dale Coyne Racing with Vasser Sullivan 200 3:10'05.480 0.392 0.297 157.819  
5 United States ジョセフ ニューガーデン United States Team Penske 200 3:10'06.749 1.661 1.269 157.801  
6 Mexico パトリシオ オワード Arrow McLaren SP 200 3:10'08.337 3.249 1.587 157.779  
7 Canada ジェームズ ヒンチクリフ United States アンドレッティ 200 3:10'09.357 4.269 1.019 157.765  
8 United States Colton Herta Andretti Harding Steinbrenner Autosport 200 3:10'10.279 5.191 0.922 157.752  
9 United Kingdom ジャック ハーベイ United States マイケル・シャンク・レーシング 200 3:10'11.901 6.813 1.621 157.730  
10 United States ライアン ハンター-レイ United States アンドレッティ 200 3:10'13.049 7.961 1.148 157.714  
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シリーズ IndyCar
イベント インディ500
執筆者 松本 和己