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ついに訪れる! インディカーのハイブリッド時代……新ドライブトレインはどう機能する?

インディカーは今週末のミッドオハイオからハイブリッド化される。まさに新時代への突入だ。この新型ドライブトレインは、どのように運用されるのだろうか。

Graham Rahal, Indianapolis Hybrid Testing

Graham Rahal, Indianapolis Hybrid Testing

写真:: Penske Entertainment

 インディカー・シリーズは今週末のミッドオハイオ戦で、シボレーとホンダの共同開発によるハイブリッド・パワーユニットを導入する。インディカーはまさに新時代を迎えるのだ。

 エンジンはインディカーを支えてきた2.2リッターのツインターボV6エンジンが引き続き使われる。これに低電圧(48V)のモーター・ジェネレーター・ユニット(MGU)および320kJ/ラップのスーパーキャパシター蓄電システム(ESS)が組み合わされ、インディカー初のハイブリッド・パワーユニットを構成する。これらMGUとESSは、エンジンとギヤボックスの間に位置するベルハウジング内に収められる。

IndyCar Hybrid unit: Energy Storage System on top; Motor Generator Unit below

IndyCar Hybrid unit: Energy Storage System on top; Motor Generator Unit below

Photo by: Honda

インディカーのハイブリッドシステム構成

 MGUとESSはエネルギー回生システム(ERS)を構成する4つの主要コンポーネントのうちの2つで、DC/DCコンバーターと電圧制御装置も含めると、重量は42.5kgとなる。

 ホンダ・レーシング(HRC)USAが製造するESSは、スケルトンが設計した20個のスーパーキャパシタで構成され、MGUで回収したエネルギーをドライバーが使用するまで貯蔵する。

 WECやIMSAを戦うLMDh車両で使われているようなバッテリーとは異なり、スーパーキャパシタを採用した背景には、エネルギーをより早く取り込み、そして放出するのに適した能力を持っているという点がある。このESSは最大動作電圧60V、2,000アンペアで動作し、4.5秒でフル充電と放出が可能だ。

 EMPELがシボレーおよびイルモアと共同開発したMGUは、ブレーキング時に発生するエネルギーを電気に変換してESSに送る。最大1万2000rpmで稼働するこのMGUは、エンジンのドライブシャフトとも連動しており、ドライバーは充電したエネルギーを最大60bhpのパワーに変換することができる。

 この60bhpは、これまでもロードコースやストリートサーキットで使われてきたプッシュ・トゥ・パスと併用されることとなり、ドライバーは120bhp以上の追加パワーを得ることができる。

IndyCar Hybrid's MGU

IndyCar Hybrid's MGU

Photo by: Honda

 フランスのパリに本社を置くBrightloop社が開発したDC/DCコンバーターは後部にあり、ESSまたはMGUからのエネルギーがパワートレインに適切な電圧(12V)で出力されるようコントロールする。

 HRC USのYouTubeチャンネルにあるハイブリッド技術シリーズのエピソードで、同社のプレジデントであるデビッド・ソルターズは、「通常の車の電気システムは12Vだ」と語った。

「電圧は常に60V、40V、50Vと上下するが、これ(DC/DCコンバーター)は、クルマの頭脳とも言えるMGUに安定した12Vを供給する」

「だからDC/DCコンバータと呼ばれているんだ。通常、こういうものは2倍から3倍は大きいのだが、サイズとパッケージングに限度があるので、これは我々のために特注したものなのだ」

 電圧制御装置は安全部品であり、60Vを超えることがないようシステムの電圧を制御する。このコンポーネントは、マクラーレン・アプライドから提供されたTAG-400iというエンジン・コントロール・ユニット(ECU)とリンクしており、ソフトウェアでERSとシボレーおよびホンダのエンジンが正確にシンクロするように制御している。

IndyCar Energy Storage System's supercapacitors

IndyCar Energy Storage System's supercapacitors

Photo by: Honda

 ブレーキングで発生したエネルギーをERSが電力としてESSのスーパーキャパシタに充電するプロセスが、いわゆる回生と呼ばれるものだ。

 ドライバーはこの回生プロセスを手動で制御することもできるし、テクノロジーによって自動的に制御することもできる。自動回生では、ソフトウェアが回生のレベルを決定する。一方で手動回生は、ドライバーがステアリングで回生量をコントロールできる。ステアリングホイールのボタンを押すと、設定された割合でエネルギー回生が作動し、ステアリングホイール後部のパドルを引くと、回生量が変化するという形だ。

 さらに、ERSに蓄積されたエネルギーのデプロイメント(展開/使用)は、ステアリングホイールのボタンを使ってドライバーが手動で操作する。また1周につき回生できるエネルギー量は、コースの長さや種類によって異なる。

「回生にはいくつかの方法がある」とソルターズは語った。

「ドライバーはクラッチパドルを使って完全マニュアルで操作することができ、コーナーに進入する時など、好きな時にリニアに回生を増加させることができる」

「あるいはソフトフェアがどこでスロットルをオフにしているかを判断し、回生を開始するしきい値を設定することもできる。ブレーキの圧力を判断し、しきい値を設定して回生を開始するモードもある」

オーバルではどう機能する?

 こうしたプロセスは主にロードコースやストリートコースに焦点を当てたものだが、インディカーはあまりブレーキングをしないオーバルでもハイブリッドを使用する。

 インディアナポリス・モーター・スピードウェイのようなオーバルコースでは、ドラフティング(先行するマシンの真後ろにつくこと)時にスロットルを離すことで回生が行なわれる。

「ビッグオーバルでマシンに接近すると、ドライバーはドラフトに入るときに(スロットルを)リフトする」

 そうソルターズは語った。

「ショートオーバルでは、ドライバーは常にリフトしたり加速したりしている。だから回生の幅が広がる」

「ドライバーはどれだけ回生するかを決めることができるので、次に前のクルマにドラフティングで追いついたときには、エネルギーを使ってパスすることができるんだ」

Honda power unit, Indianapolis Hybrid Testing

Honda power unit, Indianapolis Hybrid Testing

Photo by: Penske Entertainment

 現行ではハイブリッドの最大出力は60bhpとなっているが、インディカーと2つのエンジン・サプライヤーからの要求次第では、システムをアップグレードしてそれ以上の出力を生み出す可能性もある。

「ドライバーは充電状態をコントロールできる。100%から0%、0Vから30Vにすることができる」と、ソルターズは付け加えた。

「多くのエネルギーが行き来することになる。そのためスーパーキャパシタと電気モーターは、冷却システム(追加のポンプとラジエーター)によって冷却され、温度的に最適な状態に保たれなければならない」

 ハイブリッド・パワーユニットのもうひとつの利点は、ドライバーはERSのおかげで、アシストなしでクルマをスタートさせたりすることができるようになったことだ。

 もしESSのチャージ状態が0%だったとしても、ERSには常に十分なエネルギーがリザーブされているため、必要に応じてエンジンを再始動することができるという。

 インディカーのハイブリッドシステムは、2023年8月のセブリングで初テストが行なわれて以来、インディアナポリスやミルウォーキー、ゲートウェイといったオーバルから、バーバー・モータースポーツ・パークやマイアミ・スピードウェイなど、様々なコースでテストされてきた。

 この新しい技術が、インディカーにどんな変化をもたらすのか? ミッドオハイオでその一端が見えてくるだろう。

 

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