問題発言がなければ、今ごろF1で走っていた可能性も……ユーリ・ヴィップスが語る反省と更生の日々。周囲も「1度のミスで大きな代償を払った」と同情
インディカーシリーズでチームオーナーを務めるボビー・レイホールは、自身のチームに新加入するユーリ・ヴィップスについて、レッドブル陣営からF1にデビューするチャンスがありながら、ひとつのミスで大きな代償を払ったと語った。
インディカーシリーズのポートランド戦で、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングからデビューを果たすこととなったユーリ・ヴィップス。そんなヴィップスについて、チームオーナーであるボビー・レイホールが語った。
ヴィップスは以前、レッドブルジュニアチームに所属してFIA F2に参戦しており、昨年のF1スペインGPのFP1ではレッドブルのマシンをドライブするなど、F1昇格候補のひとりだった。しかし同年にゲームのライブ配信中に人種差別的発言をしたことが問題となり、レッドブルジュニアから解雇。F2にはシーズン終了まで参戦したが、それ以降はレースを走っていなかった。
「ユーリはとても好青年だと思う」
そう語るレイホールは、さらにこう評する。
「彼が間違いを犯し、それによって大きな代償を払ったことは言うまでもない。しかしヨーロッパの人たちは、彼のことをドライバーとして、人として称賛していた」
「彼が犯したのはたった一度のミスだ。残念ながら、ユーリはそれによって大きな代償を払い、ジュニアドライバーとして傑出した存在であったにもかかわらず、レッドブルでの地位を失った。当時彼の(F2での)パートナーであったリアム・ローソンがアルファタウリのマシンをドライブしているのは興味深いことだ」
「彼はイギリスとアメリカで行なってきたダイバーシティに関するトレーニング・プログラムを通して、しっかり償いをしてきたと思っている。実際(NASCARドライバーの)カイル・ラーソンもそれを受講していたが、非常に優秀だったと思う」
「そんな中で、彼はカムバックをしようとしている。我々は彼にセカンドチャンスを与えられて嬉しく思っている。彼はそれに相応しいものを見せてくれたし、自分のした間違いを正すために努力してきた」
また当のヴィップスは多様性に関する講習を受けたことについて、“模範的な人間”となるために自ら受講したのだと説明した。
Juri Vips, Hitech GP
Photo by: Red Bull Content Pool
「昨年色々とあった後、当時の所属チームだったハイテックに、何が侮辱的で品のないもので、何がそうでないかを理解するための講習をお願いした。というのも、僕はそれがこんなにも大変な過ちだと理解せぬまま、間違いを犯したんだ。当時はただの罵り言葉だと思っていた」
「このようなことが二度と起こらないように、まずは色々と知りたいと思っていた。そこからは自分が色んな人を失望させたことについて反省する時間があった」
「僕にはたくさんのファンがいて、たくさんの人が応援してくれて、たくさんの人たちがキャリアを通して助けてくれた。僕はその人たちのことをないがしろにしてしまった……。あの時まで僕はレース以外のことに関心がなかった。レースのことだけ考えていた」
「だから、あの時僕が言った言葉は単なる行儀の悪い言葉だと思っていたし、実際はもっと酷い言葉だと知らなかった。あれ以来たくさんのことを学んだ」
「思いやりに関するふたつのコースを受講した。ひとつはイギリスで受けたけど、レイホールで走れることが決まって、(アメリカで)再受講をした方がいいと思った。アメリカでは事情が少し違うかもしれないし、今までと違った視点で物事を見られる」
「人として成長できたと思っているけど、セカンドチャンスをもらえたことは本当にありがたく思っている。同時に、周囲からの厳しい声も完全に理解している。その言葉の意味を理解した今、そういった声は正当に思うし、傷付けてしまった全ての人に申し訳なく思っている」
またヴィップスは今後のプランについて、インディカーでキャリアを築くことを目指していると語った。F1への思いは断ち切ったようだ。
「F1のことは全く考えていない」とヴィップスは言う。
「ここアメリカが本当に好きなんだ。インディカーのレースを何度か見て、時間を過ごしたけど、インディカーとアメリカの全てが好きになった」
「F1とは全く違う環境だし、楽しんでいるよ。F1のことは少し忘れてしまった。そこに対する野心はないけど、とにかく来年は(インディカーで)フルタイムで走れるように頑張りたい」
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