インタビュー
Indy Lights Road America

インディNXTで勝利したチャドウィックが、“14年ぶり女性ウイナー”という肩書きに覚える悔しさ「通用する女性がいないから? そんなことないはず」

インディカー・シリーズ直下のインディNXTで女性ドライバーとして久々の優勝を記録したジェイミー・チャドウィック。期待を持って今シーズンに臨んだというが、それを上回る結果が出たと感じているといい、自身の活躍が女性ドライバーの増加に繋がることを期待している。

Jamie Chadwick IndyNXT interview

Illustration by Ralph Hermens

 アメリカで、ひとりの女性ドライバーが大仕事を成し遂げた。インディカー・シリーズの直下に位置するレース……かつてはインディ・ライツの名で知られたインディNXTのロード・アメリカ戦で、ジェイミー・チャドウィックが優勝を収めたのだ。同シリーズでの女性の優勝は2010年のピッパ・マン以来で、オーバル以外のコースでは初の女性ウイナーという快挙であった。

 しかもその勝利は、決して“棚ぼた”と言われるようなものではなかった。同レースでチャドウィックはポールポジションを獲得。そこから一度も首位の座を譲ることなく、トップでチェッカーを受けた。

 勝利から1週間以上が経った今も、彼女にとってはまるで“幽体離脱”でもしたかのような、現実味のない感覚があるのだという。

「未だに実感が湧いてこないような感じなんです」とチャドウィックは言う。

「レースを見返して『ああ、本当に起こったことなんだ』と思わなくちゃ……本当に変な感じです。確かに勝ったのですが、まだ現実のものとは思えません」

 彼女にとっては現実味のない話なのかもしれないが、アメリカのファンにとってはさほど驚きではなかったはずだ。チャドウィックは強豪のアンドレッティに所属して2年目。昨年は6位が最高位だったが、今季はインディアナポリスで表彰台を獲得するなど急成長を遂げた。何より、彼女には女性によるフォーミュラカー選手権のWシリーズで3連覇したという揺るぎない実績がある。

 ただそれでもチャドウィックは、実際にレースに勝てる速さがあるのか確信が持てていなかった。

「今年に向けては、表彰台に立ち、レースに勝つことを目標にしていました」

「でも正直なところ、その目標を達成できるとは信じてはいませんでした。表彰台に登れる可能性があるとは思っていましたが、かといってレースに勝てるかと言われたらそうではないと思っていました」

 そして、ロード・アメリカでトップチェッカーを受けた時に湧き出た感情は、そのほとんどが安堵だったという。

「すごく、すごく嬉しかったです」

「ポールを獲ると『いいね、最高』という感じになると思いますが、やはりフィニッシュラインを(先頭で)越え、優勝するまでは完全に満足することはできません。だからあの時は肩の荷が下りたような気持ちでした」

 チャドウィックは周囲に……というより自分自身に対し、インディNXTで勝てるということを証明したかったのだろう。それも波乱や幸運なしに。

「どんなドライバーだって同じだと思いますよ」とチャドウィックは続ける。

「自分自身に(目標となる)数字を与えて、それで自分自身を満足させるんです。昨年はトップ12に入れば満足していた記憶があります。今年は最初の方こそトップ10(で満足すること)から始めましたが、それがいつしかトップ5になり、今はトップ3になりました」

「私たちには速さがあると感じてはいましたが、レースに勝つことを考えた時、トップ2に対してはギャップがありました。今回のレースではそのギャップを埋められたんです。この先もずっとそうしていられるとは言いませんが、今は上位で戦えるという自信を持っています」

 冒頭でも述べたように、女性ドライバーがインディNXT/インディ・ライツで勝つのは約15年ぶりであり、オーバル以外のコースで勝った女性ドライバーはチャドウィックが初めて。彼女は歴史を作ったと言っても過言ではないが、本人はそういった統計については気にしてこなかった。付け加えるなら、今もそうだ。

「そういうデータは好きじゃないんです。それだけ長い間が空いているというのは悔しいことですから」とチャドウィックは言う。

Jamie Chadwick in the No. 28 Andretti at Indianapolis

Jamie Chadwick in the No. 28 Andretti at Indianapolis

Photo by: Penske Entertainment

「なぜこれまで女性がレースで勝てなかったんでしょうか? このレベルで戦えるような女性ドライバーがいなかったから、勝者も現れなかった……そんなことはないはずです」

「このレースには(自分以外の女性ドライバーとして)リンジー・ブルーワーがいますが、インディカーの下部シリーズで走る女性は多くありません。それを変えられればと思いますし、次(の女性ウイナーが現れる)までそう長くかからないといいのですが」

 チャドウィックが言うように、モータースポーツの世界に身を置いて戦う女性ドライバーの数はまだまだ多くないのも実情。彼女も自分自身は恵まれている方であり、これほどの成功を収められるとは思っていなかったという。

「(幼少期は)レースを続けるには十分な環境でしたが、大きなレースに出られるようになるかは分かりませんでした」

「幸運にも私は女性ドライバーとしていくつかのチャンスに恵まれました。Wシリーズがなければ今の私はありません。物事がうまくいっていない時でも自分を信じてくれる人たちがいたのも幸運でした」

 サーキットでは、グランドスタンドに集まったファンの少女たちと記念撮影に応じるチャドウィック。10年以上女性ウイナーが出てこなかったことを「悔しい」と表現した彼女だが、自分の活躍がどういう意味を持つのかを理解している。

「もし彼女たちがこの業界に入りたいと思っているとしたら、成功している人の姿を見ることができれば『私にもできる』ということが分かるでしょう」

「それが彼女たちの記憶に残り、家に帰ってお母さんやお父さんに『カート場に行きたい、私もやってみたい』と言うようなことに繋がればいいですね」

「このスポーツは誰によっても過酷なものです。でも、そもそもレースを始める若い女の子がほんのひと握りしかいなかったとしたら、絶対数の問題で頂点に登り詰める女性を一生見られないでしょう」

「レースを始める若い女の子の数を増やすこと、そして彼女たちが快適で安全な環境で楽しめるようにすることが良いスタート地点になると思います」

 

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