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GRヤリス投入1年目でJN1クラス制覇! 勝田範彦&トヨタがタイトルを獲得できた理由

全日本ラリー選手権のJN1クラスに、GRヤリスを投入した初年度でチャンピオンを獲得したTOYOTA GAZOO Racing。R5規定のマシンを退けられた要因は何だったのだろうか?

勝田範彦/木村裕介(GR YARIS GR4 Rally)

勝田範彦/木村裕介(GR YARIS GR4 Rally)

Izumi Hiromoto

 TOYOTA GAZOO Racingは、2021年の全日本ラリー選手権のJN1クラスに2台のGRヤリスを投入。エースドライバーの勝田範彦が凄まじいパフォーマンスを発揮し、後半戦で4連勝を達成してタイトルを獲得したことは既報のとおりだが、なぜ“勝田+GRヤリス”はニューマシンのデビューイヤーにも関わらず、チャンピオンに輝くことができたのか?

 2021年は最高峰のJN1クラスに純レーシングカーとして開発された国際規定モデルであるR5仕様車の出場が認められており、実際に2台のシュコダ・ファビアR5が出場していたのだが、勝田+GRヤリスは格上の国際モデルをなぜ凌駕することができたのだろうか。

 まず、今年のTOYOTA GAZOO Racingの躍進において最大の功労者は、ドライバーの勝田にほかならない。今回で9度目のタイトルを獲得したベテランの手綱捌きこそ、GRヤリスおよびTOYOTA GAZOO Racingの最大の原動力だった。

 2020年に厳しい戦いを強いられたことも影響したのだろう。「ドライバーとしては、そろそろ引退かなぁ……と思っていたときに、TOYOTA GAZOO Racingに声をかけてもらった」と語るように、どん底の状態にあった勝田は新天地での再起を決意した。一説によれば豊田章男社長から「GRヤリスを勝てるクルマにして欲しい」と依頼されたと言われているだけに、勝田がいかに奮起したかは想像に難くない。

 とはいえ、開幕前のテスト段階から「スバルWRXの感覚で走るとまったく速くない。GRヤリスは軽いけれど、どうすれば速くなるのか、走らせ方が分からない」と勝田は苦戦を強いられていた。

 実際、実質的な開幕戦となった第2戦の新城ラリーはSS1でエンジントラブルに祟られてリタイアしたほか、第3戦のツール・ド・九州も4位に終わるなど、その苦戦は開幕後も続いたが、百戦錬磨の勝田は徐々に対応した。2021年より勝田とコンビを組んだコドライバー、木村裕介によれば「丹後あたりからペースノートが合ってきました。その辺りからリズムが良くなった」とのことだが、その言葉どおり、第5戦のラリー丹後で勝田は2位入賞を果たし、トヨタ移籍後の初の表彰台を獲得したほか、第6戦のモントレーでも3位で表彰台を獲得した。

 そして、開幕当初から語っていた「グラベルのほうがGRヤリスの軽さが活かせると思う」という言葉を実践するように、今季初のグラベル戦となった第7戦のラリー・カムイで、勝田はGRヤリスでの初優勝を獲得している。さらに「ラリー・カムイでの勝利で勢いに乗ることができた」と勝田は後に語っているが、その言葉通り、第9戦のラリー北海道ではサスペンションを破損しながらも勝田はグラベル2連勝を達成した。

 グラベルラリーではターマック以上にドライバーのパフォーマンスがリザルトを左右することから、ラリー・カムイとラリー北海道での連勝は筆者の予想の範疇だったが、勝田が圧巻だったのは、その後のターマック連戦においてもR5仕様車と互角に戦ったことだった。前述のとおり、勝田はラリー・カムイで初優勝を獲得したことで“勢いに乗ることができた”と語っているが、おそらくグラベル戦を戦ったことで、ドライビング面においてもセッティング面においても熟成が進んだに違いない。

 グラベル連戦を消化したあとの勝田+GRヤリスは一皮むけたように、R5仕様車が有利と目されてきたターマックでも好タイムを連発。第10戦のラリーハイランドマスターズを制してランキング首位に浮上すると、シーズン最終戦となる第4戦の久万高原ラリーで4連勝を達成し、前述のとおり、逆転でタイトルを獲得した。

「R5がいるのでタイトルを獲得できるとは思っていなかっただけに本当に嬉しい」と語った勝田は、同時に「レグ1のセカンドループでプッシュしすぎたことでタイヤを使い切ってしまったので、レグ2はタイヤをマネジメントしながら走った。GRヤリスでのタイヤの使い方も勉強になったりと最終戦になっても学びがあった」と語っているが、この言葉に象徴されるように、状況に合わせて進化する勝田のドライビングが自身9度目、そして、GRヤリスでの初タイトルに導いた。

勝田範彦/木村裕介(GR YARIS GR4 Rally)

勝田範彦/木村裕介(GR YARIS GR4 Rally)

Photo by: Izumi Hiromoto

 一方、ハード面であるGRヤリスも、TOYOTA GAZOO Racingのタイトル獲得には欠かせない存在で、2021年のシーズンを通して着実に進化を重ねていた。緒戦の新城ラリーでは2台揃ってエンジントラブルでリタイアに終わったが、その後はエンジンが壊れなくなったほか、少しずつ出力も向上していた。また開幕当初はステージ途中でリアの駆動が掛からずにトラクション不足に悩んでいたが、シーズン中盤にはその対策が実施され、ラリー北海道の段階で勝田は「駆動系の制御が良くなっていて、ラリー・カムイよりもトラクション性能が大幅に向上していた」とインプレッションするように、GRヤリスはイベントを消化するごとに熟成を果たしていた。

 このマシンの進化については、TOYOTA GAZOO Racingはもちろん、パーツを供給するサプライヤーのサポートも大きく影響していたに違いない。なかでも、タイヤメーカーのダンロップの影響は大きく、シリーズ終盤に投入したウエット路面に特化した新型タイヤが威力を発揮。「ダンロップの新しいタイヤが出たタイミングが良かった。あれがなければタイトル獲得は厳しかった」と勝田が語るように、ラリーハイランドマスターズ、久万高原ラリーともに雨のレグ2で勝田は好タイムを連発して勝利を手繰り寄せた。

 つまり、2021年におけるTOYOTA GAZOO Racingの躍進は勝田、そしてGRヤリスの進化が支えていたことになるが、このふたつの進化はチームメイトの眞貝知志にも好影響を与えた。眞貝はこれまでFFモデルを武器に活躍してきたドライバーだが、4WDモデルは初挑戦で「自分なりには走らせることはできるけれど、勝田選手や新井敏弘選手、鎌田卓麻選手と争うことはまた別の段階」と語るように苦戦を強いられていた。

 それでもマイルを重ねることで確実に眞貝は進化した。とくにラリー・カムイではターマックマイスターの眞貝がグラベル戦において4位入賞。さらにラリーハイランドマスターズでは3番手タイムをマークするなどチャンピオン経験者たちに匹敵する速さを見せており、5位に入賞を果たした。コドライバーの安藤裕一によれば「眞貝選手がドライビング、チームがセッティングで歩み寄ることでリズムが良くなった」と語っているが、JN1クラスのルーキー、眞貝も確実にスキルアップ。「JN1クラスに難しさを痛感したけれど、ラリー・カムイとハイランドマスターズではいくつかのステージでうまく走れた」と語るように、セカンドドライバーにとっても実りのあるシーズンとなったに違いない。

奴田原文雄/東駿吾 (ADVAN KTMS GRヤリス)

奴田原文雄/東駿吾 (ADVAN KTMS GRヤリス)

Photo by: Izumi Hiromoto

 このようにGRヤリスの参戦1年目から成功を収めることができたTOYOTA GAZOO Racingだが、今後の課題があるとするならば、カスタマーサポートの充実にほかならない。勝田を中心にGRヤリスは素晴らしい走りを見せていたが、その一方で、GRヤリスを投入するカスタマーからは『ワークスチームだけが特別なことをやっている』という疑念や不満の声が上がっていたことも事実である。

 全日本ラリー選手権の国内規定モデルのRJ車両は、国際規定のグループNと違って、チーム、サプライヤーで自由にパーツの開発ができることから、かつてスバル/STI、三菱/ラリーアートが行なっていたサポート、例えばホモロゲーションパーツの供給などは不要だが、トラブルを防ぐためのセッティングの情報共有や不具合があった場合の対策パーツの供給、さらに強化ブッシュやスポーツECUの供給は、ラリーだけでなく、ダートトライアル、ジムカーナと各カテゴリーでGRヤリスが増えているだけに、今後はカスタマーサポートが急務になってくることだろう。

 以上、簡単に2021年の全日本ラリー選手権におけるTOYOTA GAZOO Racingの動向をまとめたが、2022年のJN1クラスは性能調整を導入する予定で、関係者によれば苦戦を強いられてきたスバルWRXを救済すべく、軽量化あるいはリストリクター系の拡大が行なわれるようだ。その性能調整がうまくいけば、真っ向勝負を繰り広げてきたGRヤリスとファビアR5にWRXが加わり、三つ巴の構図でタイム争いが展開されるに違いない。

 
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