【ル・マン24h】スタート直前のブエミに訊いた「問題は気温だ」

いよいよスタートした2017年のル・マン24時間レース。8号車トヨタTS050ハイブリッドのスタートを務めたブエミに、スタート前に話を訊いた。

 2017年のル・マン24時間レースが始まった。昨年、勝利を寸前のところで失ってしまった8号車トヨタTS050ハイブリッドに乗るセバスチャン・ブエミに、レーススタート直前に話を訊いた。

予選&トラフィックの苦労

ーー公式予選はどうだった?

「ル・マンの予選は最悪だね。僕は大嫌いだ。トラフィック、遅いクルマを待たなくてはいけない。LMP1ドライバーは誰ひとりベストラップを走れていない。1秒は失っている。将来はレギュレーションを変更して予選の最終盤、30分はGT、30分はLMPと分けてタイムアタックが出来るようにしたほうがいい。現状は、ピットから出ようとしても、前に遅いクルマがいればそのクルマを待たなければいけないので運転席に座ってじっと待ってなきゃいけない。ル・マンは世界的なビッグレースで誰もがポールポジションを獲得したいのに、やってることは最悪だ。最終的に我々は1位、2位、5位のポジションを獲得したのでよかったけれど、スピードがあったので好ポジションを得ることが出来た。それからレースに向けてのクルマ作り。でも、土曜日になるともう誰も予選のことなんか知ったこっちゃない」

ーーファステストラップを出した周には何台くらいクルマを抜いた?

「ベストタイムを出したのは(中嶋)一貴で、たぶん6〜7台だったと思う。その中の何台かは非常に行儀よく抜かせてくれる。しかし、予選セッションはスタートが遅れたが、その時の対応の仕方が最悪だった。正確に何時からセッションが始まるか情報を流してくれず、そのうち10時5分、10時10分、10時15分、そして最終的に10時20分。待って、待って……タイヤは冷えるは、待たされるはで、さあスタートだとなった時にはタイヤは冷えており、コースに出ても30台も抜かなきゃいけないし、本当に難しかった。それから1周アタックできたが、前にも後にもフリーに走れたのは1周だけだった」

ーーその時には遅いクルマに引っかからなかった?

「問題は、予選が始まると、誰も他のことなんか考えてられないことだ。GT勢だって抜かれるのが嫌で、ストレートは仕方ないにしてもブレーキングやコーナーで邪魔をしてタイムが伸びない。例えばポルシェ・カーブだってコースの真ん中を走って後ろなんか見ていない」

ーーそういう問題を避けるにはどうすれば?

「遅いクルマはノーマルなラインを守って走って欲しい。そうすれば我々は彼らを避けて走る。でも、我々が迫っていくとギリギリでラインを変えたり、ピットへ入ったり、ブロックしたりする。他のクルマをブロックすれば自分たちのタイムも落ちる。でも、これがル・マンの予選なんだ」

ーーLMP2を抜くのは難しいか?

「LMP2はコーナーが速い。彼らは大きなダウンフォースをつけて走っているので、十分に速い。だから、LMP1といえどもLMP2に対してそれほど大きなアドバンテージは持っていない。LMP2もコーナーではそれほど急激に速度を落とすものではない。しかし、GTとのスピード差は信じられないくらい大きい。運悪くポルシェコーナーでGTの後ろに着いたりすると、我々はそこでも270㎞以上のスピードだから、GTは完全な邪魔になる」

ーーポルシェ・コーナーはLMP1が270㎞以上というが、GTはどのくらいのスピードか?

「200㎞は出ていないと思う。我々との速度差は非常に大きい。でも、リズムを持って次々と遅いクルマを抜いている時は問題ない。特にポルシェコーナーの入り口の右コーナーは、GTとはラインが重ならないので、綺麗に抜いていける」

ーーそうした状況は今年も去年も、その前も同じですか?

「ああ、まったく同じだ」

ーー年を追ってLMP1は速くなり、GTとの速度差は大きくなっていますね。

「時と場合による。コーナーが速いGTは問題ない」

ーー予選はどれだけ重要ですか?

「予選は重要だよ。というか、ポールポジションは誰でも獲りたい。しかし、それ以上にレースで優勝したい」

”熱”が心配。戦略に影響も!?

ーー今年はトヨタとポルシェの戦いで、これまでのレースも含めてトヨタが優勢だ。

「問題は、開幕戦のシルバーストン、第2戦のスパが本当にクルマの性能を反映したものじゃないということだ。我々はシルバーストンを最大のハイダウンフォース仕様で走らせたが、ポルシェはまったくそうじゃなかった。だから、彼らはもう少し速く走るかもしれない。スパには我々はダウンフォースの大きなクルマを持ち込んだが、あまり合っていなかった。ポルシェはそれ以上にダウンフォースの大きなクルマを持ち込んで失敗している。もちろんダウンフォースが低すぎても良くない。だから、その中間を探さなければいけない」

「ここル・マンには我々もポルシェも最高のクルマを持って来ているはずだが、レース前には何も言えない。僕はポルシェの後ろを数周走ったけれど、我々の方がほんの少し速く感じた。でも、その差は非常に小さい。トップスピードは我々の方が高いが、加速は彼らの方が良い。普通の加速はほぼ同じ。彼らはターボチャージャーを備えているので、ブーストをいつ掛けるかで違ってくる。テストデーではお互い速かったり遅かったりしたが、その時のデータは余り参考にはならない」

「レースはレースでどうなるか分からないが、問題は気温だと思う。テストデーはとても涼しかった。だから、今週末のように強烈な熱さだと何が起こるか分からない。とはいえ、厳しいレースになることは間違いない」

ーー熱はレースにどこまで影響を及ぼすか? 燃費などにも影響はあるか?

「基本的にそこそこの高温でも我々は大丈夫。ただ、我々がベースにしているのはテストデーの気温なので、それが今週末どこまで反映出来るか分からない。いずれにしても気温にかかわらず、我々とポルシェは接近戦になるだろう」

ーー気温が上がるとタイヤにも厳しい。

「厳しいけれど、どこまで厳しいか分からない。テストデーでは5スティント無交換で行けるんじゃないかって考えたが、もちろんそれは無理。それに、新しいレギュレーションで、2時間以上32℃以上が継続したら、80分毎にドライバー交替をしなければいけないことになった。80分といえば第2スティントのまさしく途中で、それが必要になると毎スティントでドライバー交替をしなくてはならなくなる。こいつは正直いって結構厳しい。燃料補給の間にドライバー交替は可能だが、簡単じゃない。我々は出来る限りクルマの中に留まっていたいわけだから。通常なら3スティントは交替なしに行けるからね。ピットインの回数が増えるとトラブルが発生するチャンスは増える」

ーードライバーの視点から32℃は高すぎますか? 運転に集中出来ますか?

「とにかくクルマの空力状態をベストに保つために、ドライバーは犠牲にされる。肉体的にはF1よりきつい。運転席に空気を流れ込ませるための小さな窓やダクトはあってもあまり用をなさない。空気が入ってこない運転席なので、とにかく温度が上がって、それが肉体的に一番きつい」

ーーハイブリッド・システムやバッテリーへの冷却装置はあっても、ドライバー用のものはない。

「重量制限が非常に厳しく、そこまで重量を減らすには大変な努力がいる。そのために少しでも重量を減らすために小さな冷却装置だって取り付けるのを避ける。ポルシェにはエアコンが装着されているけど、我々のクルマには付いていない。水が少し積まれているだけだ」

ーー小さな窓やダクトとは?

「飛行機のように屋根のところとかに手で開けられる小さなダクトがあるが暖かい空気しか入ってこないし、大きく開かないから入ってきても大したことはない。レギュレーションでは外気温の上限が決められているが、コクピット内の温度は決められていない。コクピット内の温度が15℃しかなくても、外気が32℃を超えたらドライバー交替をしなくてはいけない」

ーー温度がレースを決める大きな要素になるかもしれないですね。

「可能性は十分ある。今週末は非常に暑いらしいし。でも夜になると気温は下がるだろうから、32℃を切れば4スティントだって行ける」

ーーしかし、毎スティントでドライバー交換をしなければいけないとなると……。

「最低だ」

タイヤの温度レンジは幅広い!?

ーー練習走行、予選では気温が10℃近くも変化したが、クルマの動きなどに変化は?

「タイヤに関しては非常に広域の温度レンジをカバーしているので問題が無いとは言えるが、タイヤの磨耗状態によってどこで交換するかを知る必要がある。ドライバーが感じる点も異なるで、それらを突き合わせて妥協点を求めることが必要になる。予選はまったく参考にならない。レースとは環境が違うからね」

ーータイヤの温度カバー領域は広いのですか?

「ミシュランは非常に領域の広いタイヤを用意してくれた。7℃から45℃までカバー出来る」

ーータイヤはいいとして、ドライバーはタイヤの様にはいかない。

「コクピット内の温度が外気より7℃以上高いとクルマは走行を中止しなくてはいけない。外気が32℃で運転席が39℃、40℃になるとクルマを止めなくてはいけないんだ」

ーードライバーは運手席の温度が高すぎで自分でもうこれ以上走れない、という限界は感じないのか?

「限界は自分で知らなきゃね。スペインとかポルトガルでテストを繰り返して、様々な条件を経験している。8月のスペインでは結構いい温度になる」

昨年の雪辱

ーー昨年はほとんど手に入れていた勝利を落としたが、チーム内でのプレッシャーは大きいものがあるのか?

「ル・マンは特に大きなプレッシャーがある。他のレースの比じゃない。ミーティング、イベント、ミーティング、ミーティング……。最も重要なレースだから間違いのない準備をしなければいけないが、そうはさせてくれない。丸々1週間このレースのために集中しているんだから。特に今年は去年よりプレッシャーが大きい」

ーール・マンの夜の走行はどうですか? 最近はライトの性能が上がって明るいですね。

「ル・マンは楽だ。ポルティマオとかアラゴン、ポールリカールなどにテストに行ったが、コースにはまったく灯りが灯っていなくて真っ暗。ル・マンは明るいから楽だよ」

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この記事について
シリーズ Le Mans , WEC
イベント名 ル・マン24時間レース
サーキット Circuit de la Sarthe
ドライバー セバスチャン ブエミ
チーム Toyota Gazoo Racing
記事タイプ 速報ニュース