【ル・マン24h】トヨタ村田氏「"あの日"から364日間同じ想いのまま」

ル・マン決勝前日にトヨタのハイブリッドプロジェクトリーダーの村田は、予選での小林可夢偉の驚異的なラップタイムや現在の心中について語った。

 2016年ル・マン24時間レース残り3分というところまで中嶋一貴の駆るTOYOTA GAZOO Racing TS050 Hybridがトップを走行していた。しかし、突然のマシントラブルによりトヨタは悲劇的な終幕を迎えた。その雪辱を晴らすべく、敗北したあの日にトヨタは再スタートを切った。

 ル・マン勝利を誰よりも希求するWECトヨタのハイブリッドプロジェクトリーダーの村田久武は、テストデーよりも前からル・マン入りし、決勝レースに向けて余念が無い状況だ。ル・マン決勝前日に村田は、予選での小林可夢偉の驚異的なラップタイムや現在の心中について語った。 

トヨタが新たなコースレコードを樹立

 昨日行われたル・マン予選では、全セッションで7号車トヨタの小林がトップタイムを記録した。またQ2では、314791というタイムを記録した。これは2015年に更新されたサルテ・サーキットのレコードタイム(ニール・ジャニ/ポルシェ919Hybrid316887)を約2秒上回っており、新たな記録が樹立されたことになる。

 今年のマシンの最大ポイントについて、村田は次のように説明する。

「今年の最大のポイントは、エンジンの馬力がかなり上がったことと、空力のレギュレーションを完全にキャッチアップできたことですね。だから空力のダウンフォースレベルで言えば、去年のレベルは完全にクリアできています」

「つまりマシンの空力が昨年レベルに達成している上で、さらに馬力が上がったエンジンが搭載されている。そうでないと14秒台は出ないですよね。それにしても、あの14秒台には驚かされました」

「”シミュレーション上だとどれくらいなの?”とみんなに質問されるのですが、言えないですね。ただ我々の想像を超えていました」

 その理由について深掘りすると、村田はさらに説明した。

「面白くない答えをするならば、路面とタイヤがきっちり当てはまったということですよね。いくら馬力やダウンフォースを出したところで、タイヤが働かない限りはタイムは出ないです。シミュレーションとの違いはそこです」

「コンディションと路面温度は想定を越えていました。僕らはあんな高い温度の場所でテストを行ったことがないんです。なので特にFP(フリー走行)ではかなりデータを取りました。最後アタックタイムを出そうとしたらそれなりのタイムが出たので、かなり良いデータが取れました」

「可夢偉のアタックのタイミングって、一番タイムの出る頃よりもちょっと手前の段階なんです。次のQ3は(コースインが)遅れたじゃないですか。だいたいトラブル明けってみんな一斉に出てこないので、バックマーカーが長い距離に出てしまうんですよね。89号車がアタックしようとした時にもGTに詰まってしまって、勿体無かったですよね。あれが決まればもうちょっと綺麗に並んでいたかもしれません」

Q2での8号車のトラブル

 Q2ではもうひとつのトピックスがあった。それは8号車トヨタに搭乗してきたセバスチャン・ブエミがアウトラップ中にユノディエールの直線の終わりでスローダウンし、マシンを止めたのだ。

 一時トヨタのピットには緊張が張り詰めたが、EVモードで無事にピットに帰還した8号車は約1時間30分間に及ぶマシンの修繕作業に入り、セッション内に再びコースインすることができた。

 ル・マンの前々日ということもあり、再出走できたものの気がかりな出来事であったが、そのトラブルの詳細について訊くと、むしろ村田ははにかみながら次のように語った。

「あれは全然大したものではありませんでした。本当に大したことではないので言うのも恥ずかしいです。なので言わないです」

「僕たちのシステムは色々とアラームが取れるように作ってあるんです。僕たちも(ピットの)テレメトリーでマシンを見ているんですが、ドライバー自身もモニターを見て、エンジンのアラームがでるのを確認できるんです。それでブエミはアラームが出たってことで減速してエンジンを止めてくれたんですね。あとは、自分たちが作っているサバイバル方法、つまりEV走行で帰ってきました。でも逆に言えば、そこもちゃんと機能して、あの距離を電池で走りきったのですから大したものだと思います。自分がいうのもなんですが(笑)」

あの敗北から

 泣いても笑ってもあと数時間でル・マン24時間レースの決勝はスタートする。村田は”現在”の心情について次のように打ち明けた。

「ポルシェと比べてどうだという質問をよく受けますが、僕たちはそうではなくて、昨年レースを終えて、自分たちが今年優勝するためにそれぞれの数値目標を決めて、その数値目標を達成するために頑張ってきているんです。決めたことを淡々とこなしているだけです」

「ル・マンに来てどうだとか、予選が終わってどうだとかという質問をよく受けるのですが、僕らの活動って一貴の『ノーパワー』からスタートしていて、365日のうち、364日間ずっとそのままで過ごしてきています。だから最後の1日に何かあったところで何も変わらないですよ。やることをやるだけです」

「全てがうまくいっていたなんてことはないです。去年の年末とか泣きそうでしたよ。だいたい立てた目標の数値が出ないものですから。もういろんなトラブルが起きたし、うまくいかなかったこともあったし、やり直したことも山ほどあったけど、それでもみんなで歯を食いしばってここまで持ってきました。だから雑誌やメディアにはドキドキしてますとか情緒的なことを嘘でも言えれば良いのですが、僕は嘘を言えないので(笑)。もうほんとにやるべきことをやるだけです」

「やってきてはいるけれども、去年のトラブルもそうですよね。僕たちの去年のレベルだったら、やってきているつもりだった。やったつもりだけど、そこが抜けていたことは事実です。自分達の意識のレベルで本当にやったのか、本当にやりきったのかという合言葉でずっとやってきていると、やっぱり見るポイントが上がっていくんですよね。そうするとなんぼでも粗が見えるんですよ。粗が見えたら潰さなくてはならなくて、それをひたすら繰り返しているんです」

「もちろん今もやっています。だから今も早いところ帰ってやりたいです(笑)」

 ル・マン24時間レースは、6月17日午後3時(日本時間6月17日22時)にスタートする。

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この記事について
シリーズ Le Mans
イベント名 ル・マン24時間レース
サーキット ル・マン
記事タイプ 速報ニュース