ル・マン24時間”初優勝”の平川亮、100%出し切れた「できるだけ多くル・マンを勝つこと、それが僕の次の夢」
2022年のル・マン24時間で同レース初めての優勝を手にした平川亮は、2016年のル・マンの一件、そして2020年のスーパーGT最終戦のことがあり、チェッカーを受けるまで安心できなかったというが、100%出し切り、満足していると語った。
2022年のル・マン24時間レースを制したのは、TOYOTA GAZOO Racingの8号車GR010 HYBRID(セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮)だった。8号車はポールポジションからスタートすると、一時は僚友の7号車に先行されたものの、24時間をトラブルフリーで走り切り、トップでチェッカーを受けた。
今季からトヨタ陣営に加入した平川にとっては、初の総合優勝。しかし最後の最後まで、安心できなかったという。
「何年か前(2016年)には(中嶋)一貴さんが乗っていたマシンが止まったことがあったり、僕も2020年に富士で最終ラップで止まってしまったことがありました。そういうことは考えないようにしたんですけど……長かったですね。最終ラップだけじゃなく、僕が走行を終えた後2時間か3時間くらいあったんですが、すごく長かったです」
2016年の一件は、トヨタ勢のみならず多くの人にとってトラウマになっている。同年のル・マン24時間レースは、トヨタの5号車が首位を走り、中嶋一貴がステアリングを握っていた。そして残り3分、誰もが5号車の優勝を確信したが、突然のトラブルが発生し、メインストレートにマシンを止めることになってしまった。当時のトヨタはこれにより、ル・マン初優勝を逃したわけだ。
また平川個人にとっても同じような経験があった。2020年のスーパーGT最終戦、平川は37号車KeePer TOM'S GR Supra(当時)のステアリングを握り、最終ラップを首位で走行。このままチェッカーを受ければ同年のチャンピオンを手にできるはずだった。しかし最終コーナーを立ち上がったところでまさかのスローダウン……ガス欠によりチェッカーを受けることができず、チャンピオンを逃すことになった。
これらふたつのことが、平川の脳裏には最後まであったという。それは、マシンが帰還するのを待つ彼の表情にも現れていた。
「ゴールしていないので、どうなるか分からないじゃないですか。最後の最後まで見届けなきゃいけないという気持ちがありました。僕としても2020年の富士でああいうことがあったので、実際にクルマが戻ってくるのを見るまでは、信じることができませんでした」
平川曰く、ずっとプレッシャーも抱えていたという。
「すごくプレッシャーを感じていました。この1週間、ちゃんと眠れなかったです。これまで感じたことのないプレッシャーでした。そして昨日(土曜日)から今日までも、僕は眠りませんでした。アドレナリンが出ていたからということもあるのでしょうが、おそらくプレッシャーもあったと思います」
「今夜はぐっすり眠れるといいですね! でも、興奮しすぎて眠れないかもしれません。これも、レースの一部ですね」
ただ自分の走りには満足したと、平川は語る。
「全体的に安全に行ったので、自分が持っているモノは全て出しきれたと思います。でもまだ改善できる部分はあるので、次のモンツァや来年に向けて改善していかなければいけません。でも、自分が出せるモノは全部出せたという感じもあるので、満足しています」
「色々と難しい場面、難しい判断をしなければいけない場面もありましたが、全て正しい判断ができました。チーム全体としてもミスはありませんでしたし、良かったです」
「100%出せたと思います」
「ちょうど1年前の6月、このマシンを初めてドライブした時の僕は、本当に酷いモノでした。本当に苦労したんです。クルマも重くて、僕にとっては全てが新しかったんです。だから今回のように、その1年後にル・マンに勝てるとは思っていませんでした。12月の発表以来、チーム全体が僕を助けてくれました」
表彰式も楽しんだという平川。そしてル・マンを勝つという夢を実現させた今は、できるだけ多くル・マンを勝つことが次の夢だという。
「(ハートレーがドライブしたマシンに乗り込んだウイニングランは)クルマが速すぎて、ちょっと怖かったです。危ない。でも表彰台は、お客さんがたくさん入っていて……それがすごい人数で、素晴らしかったです」
「(日本人ドライバーとして最年少のル・マン優勝だが)僕は、自分が若いだなんて思っていないですよ。でも今は、できるだけ多くル・マンに勝とうと思っています。それが、僕の次の夢です」
Reported by Jamie Klein
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