伊藤真一、23回目の鈴鹿8耐挑戦は“左手骨折”で不完全燃焼

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伊藤真一、23回目の鈴鹿8耐挑戦は“左手骨折”で不完全燃焼
執筆: 吉田知弘
2018/08/14 2:12

鈴鹿8耐では過去4度の優勝と、7度のポールポジション記録を持つ伊藤真一。#72 Honda Deram RT 桜井ホンダから参戦した23回目の挑戦は困難の連続だった。

 今年で41回目を迎えた鈴鹿8耐。YAMAHA FACTORY RACING TEAMの4連覇達成で幕を閉じたが、その裏では参戦したチームそれぞれにドラマがあり、笑いあり涙ありの鈴鹿8耐だった。

 その中でも、レースウィーク中に話題となったのが、初日のセッションでのアクシデントで左手を骨折しながらも、応急処置してレースに臨んだ伊藤真一と#72 Honda Deram RT 桜井ホンダだった。

 今年は注目の若手ライダーの一人で全日本ロードレース選手権JSB1000クラスにも参戦中の濱原颯道と組み、#72 Honda Deram RT 桜井ホンダから参戦した。

 通常は鈴鹿8耐に向けて半年以上をかけて身体作りやバイクのセッティングなどを準備してきた伊藤。ただ、今年は参戦体制が発表されたのはレース本番の約1カ月前で、急ピッチで鈴鹿8耐に向けての準備を行うこととなった。さらに現在は3人体制が主流の鈴鹿8耐だが、この#72 Honda Deram RT 桜井ホンダは2人体制でのエントリーすることになった。

 それだけに、レースウィークを含め転倒等による怪我は絶対に避けなければならなかった。

「2人で出ると決めた時から、こういうことのないようにしなければいけなかったんですけど、チームにも(僕の)経験をかわれて呼ばれたので……、ちょっと失敗してしまったなという気持ちです」

 伊藤は、木曜日の特別スポーツ走行中に接触があり転倒。その際に手の甲を4カ所骨折してしまったという。バイクには左手の部分にクラッチレバーがついているため、今回の怪我はバイクに乗る上では致命傷になるものだった。

 ただ、彼が欠場するとチームのライダーは濱原だけになり、鈴鹿8耐への出走が不可能な状態になる。それは伊藤自身も十分に承知していた。

 そして翌朝のフリー走行では、チームのピットにライディングスーツヘルメットをかぶってスタンバイしている伊藤の姿があった。

 骨折している左手は負担がかからないように厳重に固定され、それに合わせて通常よりもサイズの大きいグローブを急きょ用意。クラッチレバーを操作するのも一苦労という状態だったが、伊藤は普通にピットアウトしていき、その日午後に行われた予選にも参加した。

「(怪我の状態は)正直、大丈夫ではなかったです。でも、なんとしても挽回したかったので、手が折れようが何しようが乗ろうと思っていました」

「CBRはブリッパーもついているので、なんとか走れましたけど、1回でもシフトミスしたら、どこへ飛んでいくか分からない状態でした。だから、結構気を使いながら走りました」

 そんな伊藤の奮闘もあり、チームは21番グリッドを獲得。注目の決勝レーススタートを迎えた。

 スタートライダーは濱原が務めたが、レース開始早々にミッショントラブルが発生しピットイン。トラブルの状況は一度はリタイアも考えたそうだが、チームは諦めずに修復作業を開始した。マシンを分解し約3時間にわたる作業の末、#72 Honda Deram RT 桜井ホンダは復活。その後は2人で着実に周回を重ねていき、最後は伊藤がチェッカーライダーを務め、総合54位でフィニッシュした。しかし規定周回数に満たず、完走扱いとならなかった。

「ミッションに不具合が出てしまって、苦しいレースになりました。本当はリタイアしようという話になったんです」

「でも、自分たちも最後まで走りたいという気持ちもありましたし、メカニックさんたちが頑張ってくれました。バイクをバラバラにして、なんとか直して(最後まで)走らせてくれたんで、今回は自分も感動しました。本当に良いチームだなと思いました」

 ただ、今回の結果については「不完全燃焼だった」と語った伊藤。特に鈴鹿8耐に関しては毎年入念に準備を行い、人一倍シビアに戦い続けてきた。それだけに、自身の怪我とトラブルで思うように走れずに終わったレースに悔しさを滲ませた。

「毎年、この時期になると鈴鹿8耐に出たくなっちゃいますが、いざ(参戦が)決まると『ヤバイな』という気持ちにもなります」

「本当は(準備期間が)半年くらいあれば全然違うんですが、今回ばかりはそうも言っていられず、1カ月くらいしか準備期間がありませんでした。自分的にも、今年は正直……不完全燃焼でした」

「本当は、今回で(8耐は)最後かなと覚悟していましたが、終わり方が納得できない部分もあるので、もう1回やりたいですね」

 このように語った伊藤の視線は、すでに“自身24回目の鈴鹿8耐へ挑戦”に向いているようだった。もちろん、来年の参戦体制については、何の発表もない状態だが、今度はどんな形で、どんな走りをファンに披露するのか。伊藤真一のこれからの挑戦が楽しみになったレースだった。

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この記事について

シリーズ FIM Endurance
イベント 鈴鹿8時間耐久ロードレース
サブイベント 日曜 決勝レース
執筆者 吉田知弘
記事タイプ 速報ニュース