〈アジアから“世界”へ〉小椋藍とIDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦:前半戦締めくくりはセカンドベスト。青山監督は「期待と同等かそれ以上の結果」と評価

MotoGP2021年シーズンの前半戦締めくくりの第9戦オランダGPで、IDEMITSU Honda Team Asiaの小椋藍はセカンドベストの位置、6位でフィニッシュ。小椋はシーズン前半を振り返ると、「思っていたよりは良かった」と語りつつも、トップグループへ追いつきたいと更に意欲を燃やしている。

〈アジアから“世界”へ〉小椋藍とIDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦:前半戦締めくくりはセカンドベスト。青山監督は「期待と同等かそれ以上の結果」と評価

 2021年のMoto2世界選手権は第9戦オランダGPで前半戦を終え、5週間の夏休み期間に入った。シーズン前半の締めくくりとなったこのレースで、小椋藍(IDEMITSU Honda Team Asia)は6位でチェッカーフラッグを受けた。

 決勝レースは6月27日(日)の現地時間午後12時20分にスタートし、24周で争われた。いつものように4台ほどのトップグループが少しずつ後続を引き離していく展開で、セカンドグループを構成していた小椋は、最初のうちこそコーナーひとつ先くらいの距離に先頭集団を捉えていたが、周回を重ねるにつれてじわじわと前との差が広がっていた。中盤から終盤にはマルコ・ベッツェッキ(SKY Racing Team VR46)と5位を争ったが、ラスト2周でベッツェッキとの距離も少し広がって、最後は単独の6位ゴール。第2戦ドーハGPの5位に次ぐセカンドベストの結果で、第6戦イタリアGPと同じ順位だ。

 レースを終えた小椋は、「ペース的にはまずまず、あんなかんじなのかな」と振り返った。

「他のレースと比べると序盤はよかったんですが、今日は序盤に遅れたというよりも、力の差がそのままレース内容に出た結果だと思います」

 優勝選手と小椋のゴールタイムのギャップを見てみると、今回は10.960秒で、前半戦9戦ではもっとも優勝者からのタイム差が少ない。

 ただし、小椋自身は今回の結果にも厳しい自己評価を下している。

「カタルニア(第7戦)で完走できていれば、差は1番短かったと思います。今回は(レースを終えて)いろいろと前向きではありますけど、それでも他のレースと比べて飛び抜けてよかったわけではないですからね」

 参考までに、シーズン前半戦の小椋の順位と優勝選手からのタイム差は、それぞれ以下のとおりだ。

・開幕戦カタールGP(17位)……19.143秒

・第2戦ドーハGP(5位)……16.640秒

・第3戦ポルトガルGP(DNF)

・第4戦スペインGP(7位)……12.313秒

・第5戦フランスGP(7位)……27.975秒

・第6戦イタリアGP(6位)……23.170秒

・第7戦カタルーニャGP(DNF)

・第8戦ドイツGP(DNF)

・第9戦オランダGP(6位)……10.960秒

 今回のオランダGPでは、レース終盤まで前のベッツェッキと拮抗する1分37秒台中盤のタイムでピタリと張りついていた。しかし、ラスト2周になると38秒台にガクンと落ちて、そこで一気に差が開いた。このラップタイムの下落はタイヤの摩耗等によるものなのかどうかと訊ねてみると、小椋は少し照れたような表情を泛かべた。

「いや、あれはね……。ここ2戦は最後に転んじゃってたので、今回は気持ちで負けました。そういう考えだったからドイツではダメだったくせに、また同じようなことをしちゃってますけど……」

 そう言いながら苦笑し、さらにこう続けた。

「ベッツェッキ選手を追っても抜けなさそうで、5位を狙える状況でもなかったので、『サマーブレイク前だし、まあ、(しっかりと結果を持ち帰った方が)いいかな』と考えました」

 シーズン前半戦を終えて9回のレースについて、自分自身では「予想していたよりも良かった」と振り返る。

「速いと遅いときがバラバラ、という状態ではなかったので、しっかりとステップを踏みながら上げてこれている感じはあります。(シーズン前の予想と比べると)思っていたよりは良かったかな、と思います」

 サマーブレイク後の後半戦に向けた課題は、「早くトップの人たちと最後まで戦えるようになる、ということですね」 と簡潔に述べた。

■ IDEMITSU Honda Team Asia監督、青山博一は前半戦の小椋をどう見た?

 一方、IDEMITSU Honda Team Asiaチームの青山博一監督は、シーズン前半戦の小椋のパフォーマンスを以下のように総括する。

「今年はMoto2クラスの1年目なので、シーズン最初のカタール2戦とポルティマオ(ポルトガル)という特殊なコースは、あまり結果を求めて見ていませんでした。ところが、予想していた以上に感触良く進み、その後のヨーロッパラウンドでも、期待と同等かそれ以上の結果を残してくれたので、よかったと思っています」

「最近は惜しいところで最後に転倒するレースが2回続いたので、今日は手堅くゴールをしました。一年生のシーズン前半戦としては、予想よりも少しいいかな、というところですね。細かいことを言い出せばキリがないのですが、激戦のMoto2クラスで初年度の前半からここまで走れているのだから、Moto2クラスに昇格させてあげて良かった、と感じています」

 シーズン後半戦で小椋が改善していくべきことについては、課題を指摘する青山監督自身が中排気量クラスでのチャンピオンという実績を持つ元ライダーだけに、具体的で実際的だ。

「ライダーの部分で言うなら、たとえば、レース前半に少し慎重に走りすぎるところだったり、あるいはレースの最後にもうちょっとのところでイージーミスを犯して転倒してしまうところだったり。前回や前々回もそうでしたよね。あれはバイクからではなく、ライダー自身のミスから来ていたことなので、そういう観点ではまだまだ改善の余地があります」

「テクニカルな部分では、まだトライしていないことや試していないセットアップなどもあるので、今後はより多くのレースをしながら詰めていきたい、と考えています」

「本人はまだ、セットアップ面でバイクに対して『ああしてほしい、こうしてほしい』というリクエストがそんなにないんですよ。今はアベレージ的なセットアップで走っていて、それはそれでいい面もあるんですが、バイクに対してもう少し細かいリクエストが出てくるようになればいいのかな、とも思います」

「ここ数戦、エンジンブレーキの調整等で、少しずつ積極的にコメントしはじめているので、さらにもう少し細かいところまで伝えることができるように自分のなかでさらに理解が進み、『ここがもう少し良くなれば、さらにもうちょっと速く走れる』というところが掴めるようになるのが理想です。今はまだ、そこまで行けていないんですよ。経験とともにそこがわかってくれば、セットアップはさらに早く進むし、セットアップが早く進めばレースで上位を走る可能性も高くなるでしょう。大まかなところは、順調に適応していると思うので、ここからさらにあと2〜3ステップの前進を狙い、それをシーズン後半に達成していきたいですね」

「一刻も早く表彰台に乗りなさい、というようなことは、我々はまったく考えていません。今年はまず、全レースをしっかりと最後まで走りきって経験を積み、その経験値をベースに次の段階に進んでほしい。今のところは我々が期待しているとおりに進んでいるので、がんばってくれていると思います」

 監督はじめチームスタッフは、着実に成長を続けていけば、やがてその結果として表彰台や優勝は自然と射程距離に入ってくる、と考えているようだ。ただ、レースを日本から応援するファンの本音としては、一刻も早く小椋が表彰台に登壇する姿を見たい、という期待が高まっているのも事実だろう。

「レースをやるうえでは、本人はもちろん優勝したいと思って走っているし、我々チーム側も優勝してもらいたいと思っていつもがんばっています。でも、それは時間とともにいつか到達することだろう、とも思います」

 青山監督は、落ち着いた口調でそう説明する。

「今は目先にとらわれず長いスパンで見て、ケガをしないように攻めながら足りない部分を補っていく、という姿勢が重要です。経験を重ねながら、ステップアップをしていく。そうすれば、結果的に表彰台が出てくる可能性もきっとあるでしょう」

 小椋以外のライダーの前半戦とシーズン後半へ向けた期待については、青山監督は以下のように総括をした。

「Moto2のチームメイト、ソムキアット・チャントラは、藍の活躍が刺戟になってここ数戦は良い成績を残しています。しっかりと改善していますね。刺戟を与えあうライバル同士としていい関係性でがんばっているので、この状態を維持してステップアップしていってほしいと思います」

「Moto3クラスでは、1年目のアンディ・ファリド・イズディハールは最近少し伸び悩んでいるので、後半戦はもうちょっと伸ばして行ってほしいですね。國井勇輝は2年目のシーズンなので、2年目らしい走りでしっかりポイントを獲れるようになってほしいと思っています」

「ワイルドカードや代役で数戦走ってくれた松山拓磨君は、がんばっていましたが、世界グランプリの土俵で緊張してしまい、まだうまくパフォーマンスできていないようでした。場数を踏んで年齢を重ね、気持ちをもうちょっとコントロールできるようになれば、この先面白いライダーに成長してくれると思うので、今後も努力を続けてほしいです」

 2021年シーズン後半戦は、オーストリア中腹のレッドブルリンクで、8月6日(金)午前に第10戦スティリアGPのフリープラクティス1回目がスタートする。

 

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