〈アジアから“世界”へ〉小椋藍とIDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦:2度目ポルトガルは“スピード不足“実感する週末。バレンシアで良い締めくくりできるか?
MotoGPアルガルヴェGPでは、レース序盤に転倒リタイアとなってしまった小椋藍。彼はこのレースウィーク中のペースが足りていなかったことから、余裕のない状態だったと振り返っている。
写真:: Gold and Goose / Motorsport Images
IDEMITSU Honda Team Asiaと小椋藍の第17戦アルガルベGPは、じつにあっけない終幕になった。Moto2クラスの決勝レース開始直後の2周目、14コーナーで転倒。そのままレースを終えたのだ。自分が跨がったバイクから投げ出される格好のハイサイド転倒だったが、幸いにも怪我はなかった。
「前について行くのにあまり余裕がない状態で、そこで単純にがんばりすぎてしまった結果です」
転倒の一部始終を振り返る口調も、こころなしか冷めている。あまりに早くレースが終わってしまい、とくに語る内容など思いつかない、というのがおそらく正直な心境なのだろう。
土曜の予選を終えた段階では3列目9番グリッドを獲得。ポールポジションとのタイム差は、0.682秒だった。
「一発タイムはなんとかなるんですが、今回はライディングの面で、とくにセクター2とセクター4が厳しかったですね」
前回の取材でも述べていたように、小椋はこのポルティマオサーキットでは、プレシーズンテストと第3戦ポルトガルGPの際にも走行をしている。Moto2クラスではもっとも走りこんでいると言ってもよいコースだ。
「バイクの経験があるぶん、走りは前よりいいところもたくさんありましたけれども、ほかの選手たちも(条件は同じで)いいですからね。苦手意識や相性の悪さがあるでもないんですが、そんなに遅いわけでもないし……。まあ、速くもないですけどね、普通です」
そういって苦笑をうかべた。
上記の言葉にもあるとおり、予選のタイムアタックはまだなんとかなったとしても、コースを攻略しきれていなかったために、レースペースで見るとどうしても上位陣にわずかずつの遅れをとってしまう。レース周回では、やがてその差が積み重なって決定的なギャップになってしまうものだ。その埋め合わせを狙い、小椋とチームは今回の決勝でリアタイヤ用にソフト側のコンパウンドを選択した。フロントタイヤについては、全選手がハード側で一致したが、リアについてはソフトとハードがきれいに半々に分かれた。
「自分はペースがない分、ソフトで0.2~0.3秒を稼ぐことに頼ってそっちを使うレースにしたんです。(ハード側でも)行けなくはなかったんですが、とくにそちらを選ぶ理由もなかった。ソフトのほうが速く走れていたし、なんとか最後まで摩耗を持たせたい、というイメージで臨んだんです。それでも、ハードを履いてるライダーに対して序盤からついていくのが厳しかったので、単純に自分のスピードが足りなかった、ということなんだと思います」
今回のレースウィークは、4月の第3戦開催時期よりも温度条件がやや低いこともあって、ダンロップのタイヤアロケーションは、ソフト/ハードそれぞれワンステップ柔らかいものになっていたようだ。レースウィークの3日間を通して快晴に恵まれたものの、気温は20℃前後で路面も30℃に届かないコンディションだ。小椋とチームがソフト側のコンパウンドを選択するのは合理的な帰結だった、といえるだろう。
「今も、自分たちの状況に対してソフト側を選んだのは間違いだとは思ってないです。間違いというならば、自分がハードを使えないようなペースで走っていたところなので、タイヤ選択ではなく、それ以前のスピードが問題だったんだと考えています。ハードでもソフトと変わらないペースで速く走れていれば、レースでは硬い方を選択できますからね」
次戦はいよいよ2021年の最終戦バレンシアGPだ。ここまで17回のレースを戦ってきた締めくくりとして、Moto2クラス18回目の決勝はシーズン最高の結果を目指したいところだ。
「……でもまあ、べつに最終戦だから特になに、っていうこともないですしね、はい」
やはりいつものように、適度にリラックスした言葉が返ってきた。
「今まで戦ってきた一戦として良い結果になればうれしいですし、毎回毎回、自己ベストの結果を目指しているので、次もそうなるといいですね」
がんばります、と締めくくった。なにも大仰な自己主張をしなくても、小椋藍が学習と成長を続けていることは、さりげない言葉の端々にも明確にあらわれている。表立って口にこそしないものの、2022年に向けて期すものは、おそらく彼の心中にあるだろう。それがバレンシアで何らかの形を伴って結果にあらわれるならば、なおのことよし、である。
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