小椋藍、日本GPを完全制覇も、第一声は”ホッとした”。でも母国での表彰台は「僕にとっても、皆んなにとっても格別だったと思う」
MotoGP日本GPのMoto2クラスで完璧なレースを演じ、勝利を手にした小椋藍は、勝てたことに安堵。もしフェルナンデスとの直接バトルになっていたら、難しい展開になっていたかもしれないと語った。
MotoGPの日本GP、Moto2クラスを制したのは、IDEMITSU Honda Team Asiaの小椋藍だった。
小椋はウエットコンディションとなった予選では苦戦し、13番グリッドからのスタートだった。しかしレースがスタートすると、電光石火の追い上げを見せる。
小椋は抜群の蹴り出しで順位を上げると、1周目を終えた時点で5番手。一気に8ポジションアップを果たすという離れ業を演じた。そしてレース終盤にトップに立つと、最後はタイトル争い最大のライバルであるアウグスト・フェルナンデス(Red Bull KTM Ajo)との手に汗握る戦いに。しかし小椋はペースを緩めることなく、フェルナンデスの接近を許さずにトップチェッカーを受けた。
「ホッとしたという感じですね。最後まで争っていたというか、ギャップをマネジメントする立場だったので、レースを走り切れてホッとしました」
小椋はレース後にそう語った。
「スタートが良かったのが、大きかったと思います。序盤はふたり(アロン・カネット/Flexbox HP40とフェルミン・アルデゲル/Beta Tools Speed Up)が抜け出していて、しかもかなり速かったです。ただ彼らが転倒したことで、自分がいた位置がトップグループになりました」
「そこからちょっとだけ落ち着くというか、冷静になれる時間をもらえることができました」
序盤は、ライバルのフェルナンデスにはかなり差がついていたが、周回が進むにつれてその差は徐々に詰まってきた。そんな中で小椋は前を行くアロンソ・ロペス(Beta Tools Speed Up)を抜いて首位に。この時の気持ちについて尋ねられると、小椋は次のように答えた。
「あの時はもう真後ろに(フェルナンデスが)いると思っていました。そして前のロペスはブレーキングで結構振られてて、止まれない感じも見受けられたんで、これは前に出るタイミングかな、自分のペースで走った方がいいかなと思って、前に出ることにしました。結局はそれがよかったと思います」
そう小椋は振り返る。
「トップに出た後は、後ろがどう動くか次第なんです。自分はベストを尽くすしかありません。後ろが速くて迫ってきたらバトルになるかなと思ったし……逃げ切れるならそれはそれでよかったですけどね」
ただフェルナンデスとバトルになれば、難しかったかもしれないと小椋は言う。
「バトルになったら、ちょっと微妙だったかもしれません。アウグストと僕は、速いセクターや速いコーナーは全然違いました。なので彼とのバトルになったら、どうなるかは全く想像できませんでした」
「来たらすぐに抜き返すかもしれないと思っていました。何周か後ろを走って、何周か後で仕掛けるという展開は難しいと思っていましたので」
「でもトップに出たら、意外と力を抜いて走れることがたまにあるので、今回はそれができたかもしれません。(後続との差は)広がれば広がるほどいいんですよ。でも、(何周も)同じかよと思いながら走りました。でも2周にわたって差が同じだったので、これはもう変わらないと思いました。あとは、自分が頑張るしかなかったです」
MotoGPの日本GPで日本人ライダーが優勝したのは、2006年(当時は250ccクラス)の青山博一以来のこと。つまり、小椋の所属チームであるIDEMITSU Honda Team Asiaの現監督以来ということになる。小椋は、その青山以来の勝利を手にできたことは嬉しいと語ると共に、日本GPの表彰台は格別だったとも明かした。
「青山監督以来だというのは知っています。僕、その時多分いたと思います。遊んでいましたけどね」
そう小椋は続ける。
「でも(青山博一は)監督なんで、嬉しいですね」
「(表彰台からの眺めは)知った景色だけあって、『おおっ! 日本GPで勝てたな』という感じでした。みんな喜んでくれてよかったです。自分にとっても格別ですけど、みんなにとっても格別だったと思います」
今回の勝利の結果、小椋はフェルナンデスとの差を2ポイントまで縮めた。タイトル争いの可能性を十分に手中に収めた状態で、シーズン終盤戦へと向かう。そして次は、次戦タイGPである。
タイGPへの意気込みについて語った小椋は、あくまで冷静だ。
「始まってみないと分からないですね。僕はまだ追いかける立場なんで」
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