【MotoGPコラム】Moto3予選で19名にペナルティの異常事態。解決策はあるのか?

サンマリノGPのMoto3クラス予選では、19名のライダーにペナルティが科せられた。

 Moto3クラスでは、毎戦のように10台前後のマシンがトップグループを構成し、その大集団が息を呑むバトルを続けながら、コーナーごとに順位が入れ替わる激しい攻防を繰り広げている。しかし、このクラスでは毎戦のように繰り返されているもうひとつのことがある。予選終盤で他選手のスリップストリームを待つための露骨な牽制合戦と、それに対するペナルティ、そしてその結果発生するスターティンググリッドの変動だ。

 たとえば、第13戦サンマリノGPでは19名の選手に合計23のペナルティが科された。他の選手を妨害するスロー走行に対しては3グリッド降格、複数セクターでのスロー走行に対しては12グリッド降格、そしてピットレーン出口での極端な低速走行には1000ユーロの罰金が科料された。その結果、土曜の予選終了後に発表された暫定スターティンググリッドと、ペナルティ処分後の日曜午前に決定した正式グリッドでは、ポールポジションを含め大半の選手のグリッド位置が変わる事態になってしまった。全31選手中、暫定グリッドと正式グリッドが同じだったのは2名のみ、という異様さだ。

 8月の第11戦オーストリアGPでは、24選手に対して各500ユーロの罰金が科されたが、グリッド降格処分ではなかったために大きなスターティングポジションの変動には至らなかった。とはいえ、全人数の3/4への罰則適用はやはり尋常な事態ではない。また、これらの2レース以外でも、Moto3クラスではほぼ毎戦といっていいほど、誰かがスロー走行によるペナルティを受けている。

 予選で選手たちが速いライダーを待ってその後ろについて走り、良いラップタイムを稼ごうとする傾向は、なにもここ最近に始まった出来事ではない。125cc時代からよく見られた光景だし、他のクラスでも露骨に誰かの後ろについてタイムを出したがる選手はいる。

 ただ、Moto3クラスが今のような状況になってしまったのは、現状の是正を狙ったルール規制が、効果的な歯止めとしてうまく作用していないから、ともいえるだろう。

 コース上で速い選手を待とうとする行為に対する特段の罰則は、かつては設けられていなかったように思う。だが、レーシングスピードで走行するライダーとあえてゆっくり走行する選手たちの速度差が危険であるということから、現在ではコース上での極端なスロー走行に対しては積極的にペナルティが科されるようになった(それでも上記のように、処罰されるライダーは後を絶たない。その一方で、現在の「スロー走行」はかつてのような極端な遅さではない、ともいえる)。

 処分を避けるために、ライダーたちはコース上で他選手を待つ代わりに、予選終盤になると一斉にピットボックスへ引っ込んで、最後のタイムアタックに出る様子を互いに窺い合うようになった。そのため、予選終盤のある時間帯になるとコース上には誰の姿もなく、まるで赤旗中断のように静まりかえる、という奇妙な状況になっている。そして、選手たちはピットアウトのタイミングを様子見しながら、ピットロードでは誰が先にコースインするのか互いに牽制し合うことになり、結果的にはそれが今回のような大量処分へと至る、というわけだ。

 速いタイムを出すために自分を引っ張ってくれる相手を探し、よしんばそれで好タイムを記録できたとしても、結局はペナルティを科されてグリッドを降格されるようでは、本末転倒でしかない。だが、たとえ誰にどれほど何回ペナルティが適用されようとも、全ライダーが群集心理で同じような行動を取っているようなこの状況下では、現状の罰則処分は抑止力としての効力を持ち得ていない。

 さらにドラスティックで効果的な規制策を見つけないかぎり、おそらく今後もこの傾向が改まることはないだろう。

取材・執筆/西村章

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この記事について
シリーズ Moto3 , MotoGP
イベント名 Misano
サーキット ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ
記事タイプ 速報ニュース