【MotoGPコラム】最高峰クラス昇格決定直後、中上が挙げた勝利の意味

MotoGP昇格発表直後のレースを、理想的な形で勝った中上貴晶。その勝利は、彼の周囲の雑音に打ち勝つ、価値ある1勝だった。

 MotoGP第12戦イギリスGPのMoto2クラスで中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)が今季初優勝を挙げた。8月20日に来季のMotoGP昇格を発表して以来、多くの注目が彼に集まっていた。スタート直後から慌てずに状況を見定め、中盤以降に前へ出るとペースをコントロールしてトップでチェッカーを受ける、という今回の力強い勝ち方は、プレッシャーを勝利への動機に昇華させるという意味でも、中上の精神的な成長を感じさせる内容だった。

「勝ちたいという気持ちがポジティブに働いて、良いレースをできました。(最高峰クラス参戦の)発表前に勝てなかったライダーが発表直後のレースで勝つのはなかなかできないことだし、このままじゃいけないという気持ちも自分のどこかにありました。いろんな思いがあっただけに、今回の優勝は心の底から嬉しいですね」

 2014年の青山博一を最後に、日本人選手の最高峰クラスフル参戦は途絶えている。その〈飢餓状態〉も手伝ったのか、中上の昇格を取扱う多くのニュースでは、このmotorsport.comを含め、来季の活躍に対する期待感をただ過剰に煽る調子のものが多く目立った。そこにはプロのスポーツ報道としての分析や考察はなく、むしろ応援心理の代弁装置以上の役割はほとんど果たせていないようにも見えた。根拠を欠く無責任な煽動は、根拠を欠く反感の火種にもなり得ると同時に、反動的で”ためにする”言説の誘因にもなり得る。その意味で、第12戦のレースウィークは、中上の周囲には様々な〈ノイズ〉があったことは想像に難くない。それらにも惑わされることなく、チームと力を合わせて自分たちのやるべきことに集中し、理想に近い形で優勝したという自信は、将来に向けて大きな財産になるだろう。

「今日は絶対に勝ちたいと思って決勝に挑み、気持ちよく全てをコントロールできました。この優勝で周りの見る目も変わってくると思うし、自分はできるんだという気持ちで今後のレースにも臨めます。現在のランキングは7位で、チャンピオンシップのことはもはや考えていないので、このあと6戦は全戦優勝するくらいの強い気持ちで臨みます」

 来シーズンから彼が参戦する世界最高峰クラスとその頂点の座は、あまりに高く狭く、そこに至る道も峻厳だ。おそらく、特に初年度は苦戦を強いられることになるだろう。それは、中上自身も覚悟をしているはずだ。

 だが、器が人を作る、ともいう。その器の度量に叶う成長を遂げるための助走がすでにこの第12戦から始まっているのだとすれば、最終戦までの6戦は大いなる飛躍に向けた有意義な加速期間になるだろう。

取材・執筆/西村章

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この記事について
シリーズ MotoGP , Moto2
ドライバー 中上 貴晶
チーム Idemitsu Honda Team Asia
記事タイプ 速報ニュース