持続可能燃料ってレースマシンで使うと何が違う? 未来のMotoGPに向けて開発進めていたスズキに聞いた
世界的な脱炭素への取り組みが高まる中、MotoGPも2024年から燃料の一部に持続可能なバイオ燃料を使用することが義務付けられる。こうした変更はバイクのエンジン開発にどういった影響があるのか? 2022年限りでMotoGPは撤退したものの、事前開発を行なっていたスズキに話を聞いた。
写真:: Suzuki
MotoGP2022年シーズン限りで撤退となったスズキ。もし、彼らが2023年以降も継続して参戦していたら、『GSX-RR』はどんな進化を遂げていたのだろうか?
スズキはMotoGPを運営するドルナと5年の参戦契約を結んでいた。そして当然本社の決定が下るまでは、チームも2023年、2024年と先の開発計画を進めていたはずだ。それが撤退の決定により水の泡と化したわけだ。
MotoGPでは2024年シーズンから、使用する燃料の一部を非化石由来の持続可能燃料へと変更することが決まっていた。当然、スズキもその準備を進めていた。
F1など四輪の世界でも、急速にカーボンニュートラルへの取り組みが進んでいる。これまで使用されてきた化石燃料由来のガソリンから持続可能燃料への変化が、エンジンにどんな変化をもたらすのだろうか?
2024年からの非化石由来の持続可能燃料導入へ向けた取り組みは具体的にどうなっていたのかについて、スズキMotoGPプロジェクトリーダーの佐原伸一に聞いた。
「(従来の燃料と)全然違わないことを確認しました(笑)」
佐原プロジェクトリーダーはそう語っている。
「(燃料の違いは)もっと言ってしまえば、持続可能燃料ではない従来の石油由来の燃料でも、燃料メーカーが変われば特性も変わります。点火時期を変えなければならなかったり、濃さを変えなくてはならなかったり、色々なものが調整し直しなんです。それと同じ作業を(持続可能燃料で)しなくてはいけないと思っていただけでした」
佐原プロジェクトリーダーによると、持続可能燃料への変更によって、ハードウェア面における変更の必要性は無く、基本的にはソフトウェア方面での作業が多量にあるのだという。
「基本的にハード面でいうと、何か設計を変えなくてはいけないという認識はあまりありませんでした」
「(ソフト面の)作業量としては結構あるんですけどね。2023年、全日本(ロードレース)では先にそういう燃料を使っていきましょうとなっていて、今はその仕事もしています。ですが、やる事はそんなに難しい話ではなく、地道に作業して行くことが必要になるという話です」
そして佐原プロジェクトリーダーはこういった持続可能燃料へ適応させていく作業が、レースの世界と、市販車の世界をつなぐ重要な研究だと語る。そして、だからこそスズキのMotoGP撤退でその機会が薄れたことが残念だと語った。
「こういったこと(持続可能燃料への適応作業)は大事なことだと思うんですね。将来的にそういう燃料が市場に出ても、今自分が乗っている車で使えなかったら残念じゃないですか」
「燃料屋さんはそういうのを”ドロップイン”(=現状の石油由来の燃料と互換性を持ち、そのまま使えるということ)と言うんですが、今まで使っていた燃料を入れ替えるだけでそうなるよっていうのは理想ですよね」
「そこが、レースを使ってそういう物を開発する目的のひとつです。将来の市場展開を目標に入れながらいたんですが、それが撤退でなくなってしまったのは残念ではありますね」
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