MotoGP
ドゥカティの血でヤマハに遠州“やらまいか”的精神復活? リスクも辞さない新体制で暗黒時代に光明見えた
ヤマハは2024年もMotoGPでは苦戦が続いた。技術陣はマシン開発で差を縮めた実感はあるものの、まだライバルの背は遠いと認め、さらなる開発加速を誓った。
公開日時: 2025/01/14 2:30
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

ヤマハはMotoGPの2024年シーズンにおいてコンストラクターズランキング4位。表彰台はゼロと苦しい状況が続いている。ヤマハ内部としても、開発に対する姿勢にも大きな変化があった1年間だったようだ。
MotoGPはこの数年間、ドゥカティによってシリーズが支配されている状況にある。かつては日本メーカーが勝利を独占していたが、今は全く太刀打ちできておらず、ドゥカティだけでなくアプリリアとKTMら他の欧州勢にも水を開けられている。
ヤマハ、そしてホンダの大苦戦ぶりからMotoGPは、戦力均衡に向けて新たな優遇措置制度(コンセッション)を2024年から導入。ヤマハとホンダの2社は開発における自由度が大きく高められることになった。
通常なら禁止されるシーズン中のエンジンのアップデートや、エアロの変更回数の増加、レギュラーライダーによるテスト許可と自由なプライベートテスト実施などがこの優遇措置のメリットで、これらを活かしての日本メーカー復活に対する期待の声もあった。
しかし2024年シーズンもホンダとヤマハは苦戦。ヤマハはコンストラクターズランキングでは5メーカー中4位で、チームランキングは8位………ファビオ・クアルタラロは2023年よりも獲得ポイントが減りランキング13位、新加入のアレックス・リンスも良いところは見せられず18位という結果だった。
しかしヤマハのMotoGPプロジェクトリーダーである増田和宏は2024年シーズンを振り返り、数字上の結果はともかく、ヤマハ内部では改革が進んだ1年間でもあったという認識を示し、今後のさらなる改善に期待を寄せている。
12月にメディアの取材に応じた増田プロジェクトリーダーは、2023年の結果から2024年のマシン開発をどう進めてきたかを問われると、こう語った。
「昨シーズンからどこにパフォーマンスの問題があったのかと言うと、やはり加速の領域ですね。ロングストレートの(加速時の)ウイリーから、我々がエンジンリミットと呼んでいるエンジンのパフォーマンスがものを言う領域において、他社に対してのビハインドが明らかにありました。そこを我々の重点項目として開発を進めてきました」
「昨年(2023年)の冬季のテストから用意してきて、それを開幕に持ち込んだという形になります。 目標はストレート改善で、ある程度そこは達成できたという手応えを、冬季テストや(2024年開幕前の)セパンとカタールのテストで掴んで開幕戦に臨みました」
「ストレート改善はある程度……トップには至らなかったですけれども、他社に対してビハインドがあるところからは一歩二歩とステップアップできました。そう感じながらレースをスタートさせたんですが、それと引き換えに失った部分も感じていました」
「ライダーからのハンドリングや切り返しでバイクが重く感じるなどのコメントだけでなく、如実に切り返しセクションなどでビハインドが見て取れるようになりました」
増田プロジェクトリーダーは、2024年シーズンのヤマハYZR-M1のパフォーマンスについてそう語った。そこからは優遇措置を活かして積極的な開発を目指していくものの「“どうしていいかわからない”苦しい時期」があったとも認めている。
■ドゥカティから加入のエンジニア、空気・マインドを変える。
しかし今年のヤマハ内部はひと味違ったという。飛ぶ鳥を落とす勢いのドゥカティから新加入しテクニカルディレクターに就任したマッシモ・バルトリーニを中心に、昨年までのヤマハでは難しかったスピード感のある開発が進められるようになったのだ。
それはシーズン中に投入されたエンジンやシャシーでどれだけ仕様違いが存在していたか、というところにも現れている。
ヤマハによるとエンジンはおよそ5種類、シャシーもそれと同程度の数をトライしており、ピットに並ぶ2台のマシンで同じ仕様になっていることが少なかった、というから驚きだ。
2023 Yamaha YZR-M1 feature
写真: Yamaha Motor Racing
増田プロジェクトリーダーは「今まで自分たちのやり方の延長線上ではないことをいっぱいトライしました」と言う。
「従来はリクエストを受けたあと、検討やものづくりに必要な時間が前提条件となるところを、もっと別のやり方で時間を短くできるアイデアが本社メンバーから出るなど、トライに前向きな議論が多くなりました」
「そのおかげで、例年と比べるとびっくりするようなスピードで開発ができましたね。短いサイクルでやれたおかげで、結果としてバイクのパフォーマンスを積み上げていく大きな助けになったと思っています」
ヤマハは従来、手堅く行くスタイルで開発をやってきた……そう増田プロジェクトリーダーも語っていたところから、2024年は「安全性はこれまで通り妥協はしない前提で、パフォーマンスが必ずしも良くなるとは限らず、GP現場・開発や、パーツ運営に混乱を生じる多少のリスクが残っていてもいいから、より早く現場にものをください」と、スピード感を持って進めるように変化していた。
そして、その変化をもたらしたのがバルトリーニだった。ドゥカティからの移籍してきたことを考えれば、マシンの違いなどを指摘したのかと想像してしまうが、実はヤマハにとって大きかったのは、バルトリーニの仕事への取り組み方や、その考え方だったという。
「彼にテクニカルディレクターというポジションで今シーズンは率いてもらいましたが、テストのやり方、レースウィークの進め方、物事の判断の仕方……そういったところですごく変化を与えてくれましたし、僕らも気づきが非常に多かったです」
「こういう状況で辛い面も多いですけど、『できることはできる。できないことはできない。今の状況からできることはこれだよね』っていうふうにポジティブに解釈してそれを僕らにはっきりと示してくれて、良い雰囲気で開発も進めることができました」
「日本にも何度も来て、非常に積極的にコミュニケーションをとってくれていました。仕事への取り組み方とか、車を良くしていくことへの考え方とかそういったところに大きな影響を与えてくれたと思っています」
今年のヤマハは彼らの地元静岡・遠州地域の気風とも言われる『やらまいか』(とにかくやってみよう、のような意味)精神に近いモノがあったと言えるかもしれない。そしてそれは、リスクを負うことをきちんと言葉にしてくれるバルトリーニの存在なくては実現しなかっただろうと増田プロジェクトリーダーは語った。
2024 YZR-M1
写真: Yamaha MotoGP
「テクニカルな面での責任者である彼が、『リスクは分かった』と、残ったリスクは現場でマネージするから持ってきてといったことを、きちんと言葉にして言ってくれるんです」
「僕らはヤマハの素性で育っているので、これでいいのかという思いがある中でも、ポンと彼がそれを言葉にしてきちんと言ってくれるので、みんなの背中を押してもらえるんですね」
「(バルトリーニがいなければ)迷いながら時間をかけて判断したり、検証を重ねて判断したり……いや、していたでしょうね」
とはいえ2024年のヤマハの成績はいまだ低迷中……バルトリーニの加入によってこれまで言われてきた日本と欧州メーカーの“良い所”をミックスさせようという試みが、真の果実を結ぶことを、2025年シーズンに期待したい。
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 マルケス、7度目のMotoGPタイトルは”ボーナス”?「僕の主な目標はすでに達成できている」
次の記事 アプリリア移籍のマルティン、MotoGP連覇は視野に入れず?「大きな挑戦になる。チャンスは早ければ2026年にやってくるだろう」
![]()
More from
アレックス リンス

アレックス・リンス、2026年限りでバイクレースから引退。MotoGPクラスでは通算6勝…今後は別プロジェクトへ
MotoGP
MotoGP
サンマリノGP
1 日前
アレックス・リンス、2026年限りでバイクレースから引退。MotoGPクラスでは通算6勝…今後は別プロジェクトへ

ヤマハ、2026年限りでクアルタラロ&リンスとの契約終了を発表。後任は小椋藍&マルティンか?
MotoGP
MotoGP 2 ヵ月前
ヤマハ、2026年限りでクアルタラロ&リンスとの契約終了を発表。後任は小椋藍&マルティンか?

シート喪失のリンス、2027年の残留諦めず「まだ空席は残っている。返事を待っているところ」
MotoGP
MotoGP
イタリアGP
3 ヵ月前
シート喪失のリンス、2027年の残留諦めず「まだ空席は残っている。返事を待っているところ」
![]()
More from
ヤマハ・ファクトリー・レーシング

クアルタラロ、ヤマハとの亀裂は修復へ。サンマリノGP前に話し合い実施「適切じゃない言葉使いだったかも」
MotoGP
MotoGP
サンマリノGP
1 日前
クアルタラロ、ヤマハとの亀裂は修復へ。サンマリノGP前に話し合い実施「適切じゃない言葉使いだったかも」

ヤマハ、クアルタラロとの亀裂が明確に。批判に反論「クアルタラロはジャック・ミラーを見習うべき」
MotoGP
MotoGP 10 日前
ヤマハ、クアルタラロとの亀裂が明確に。批判に反論「クアルタラロはジャック・ミラーを見習うべき」

クアルタラロとヤマハ、関係さらに拗れる? 「2027年向けの開発はしたくない」ピレリタイヤテストの参加拒否が引き金
MotoGP
MotoGP
アラゴンGP
11 日前
クアルタラロとヤマハ、関係さらに拗れる? 「2027年向けの開発はしたくない」ピレリタイヤテストの参加拒否が引き金
最新ニュース

自分でも驚きだ! ノリスがキャリア最高アタックでポールポジション獲得。角田裕毅は15番手、アストンマーティン・ホンダはQ1敗退|F1スペインGP予選
F1
F1 F1
スペインGP
2 時間前
自分でも驚きだ! ノリスがキャリア最高アタックでポールポジション獲得。角田裕毅は15番手、アストンマーティン・ホンダはQ1敗退|F1スペインGP予選

F1スペインGP予選速報|角田裕毅悔しいQ2敗退15番手。ポールポジションは全力を絞り出したノリス! アントネッリ、フェルスタッペンが続く
F1
F1 F1
スペインGP
2 時間前
F1スペインGP予選速報|角田裕毅悔しいQ2敗退15番手。ポールポジションは全力を絞り出したノリス! アントネッリ、フェルスタッペンが続く

逆転タイトルへ邁進! マルク・マルケス、レース完全コントロールしてスプリント連勝|MotoGPサンマリノGP
MotoGP
MGP MotoGP
サンマリノGP
3 時間前
逆転タイトルへ邁進! マルク・マルケス、レース完全コントロールしてスプリント連勝|MotoGPサンマリノGP

「ついに勝てたよ」宮田莉朋がFIA F2初優勝! 初開催マドリンクで逃げ切りV。ランク首位のツォロフはリタイア……王者争い混沌|FIA F2マドリード戦スプリントレース
FIA F2
F2 FIA F2
マドリッド
3 時間前
「ついに勝てたよ」宮田莉朋がFIA F2初優勝! 初開催マドリンクで逃げ切りV。ランク首位のツォロフはリタイア……王者争い混沌|FIA F2マドリード戦スプリントレース
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録