「こんな悲劇は絶対に続けてはダメだ」ミラーやマルケス、エスパルガロ兄らが続く事故死に意見
ドゥカティのジャック・ミラーは、SSP300で発生したディーン・ベルタ・ビニャーレスの死亡事故を受け、近年立て続けに起こっているジュニアクラスライダーの死亡事故はこれ以上続けてはならないと語った。
Dean Berta Vinales, Vinales Racing Team
Gold and Goose / Motorsport Images
9月下旬、スーパーバイク世界選手権と併催で行なわれたSSP300においてクラッシュが発生し、MotoGPライダーのマーベリック・ビニャーレスの従兄弟であるディーン・ベルタ・ビニャーレスが15歳の若さで亡くなってしまった。
2021年のモーターサイクルレースでは、若手ライダーの死亡事故が続発している。6月にはMoto3のジェイソン・デュパスキエ(享年19歳)が、7月にはCEVジュニア世界選手権でヒューゴ・ミラン(享年14歳)がそれぞれクラッシュによって、この世を去っている。
こうした状況を受けてドゥカティのジャック・ミラーは、若いジュニアライダーの死亡事故はこれ以上続けてはならないものであり、「このままではいけない」と安全性の向上を訴えた。
ディーン・ベルタ・ビニャーレスの事故死を受け、モーターサイクルレース界としてもこうした自体を防ぐためにどうすればよいかという議論が巻き起こっており、年齢制限の引き上げや参戦台数の制限、ジュニアカテゴリーのマシンの変更などといった解決策が挙がっている。
MotoGPやスーパーバイク世界選手権を運営するドルナ・スポーツも、これらの問題を議論するためのワーキンググループが社内に設置されたことを認めている。
「Moto3でもこうした議論は行なわれているけど、SSP300でバイクが凄く速いわけではなくても、参戦台数は多いし、バイク自体は軽くはない」
「それなりに重いバイクがグリッドに多く並んでいて、何か残念な事態になれば、悪いことが起こる確率は2倍にも3倍にもなるだろう」
ミラーはジュニアライダーの死亡事故に関する状況について、そう語る。
Jack Miller, Ducati Team
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
「レース自体は素晴らしいものだし、このクラスも素晴らしいものだと思う」
「SSP300のような別の下部カテゴリーがあることは、Moto3でのチャンスを得られない若手ライダーにとっては助けになるし、良いものだと思う」
「でも安全性の面、そしてレースの進み方については、大きなステップを踏み出す必要がある。このままではいけない」
「今年は特に酷い。でもこれを続けちゃいけないんだ。僕らは9ヵ月の間に3人の若者の命を失った。こんなことはあっちゃいけない」
「恐ろしい事だ。こうした若い子たちのために、黙祷の時間を過ごさなくてはいけないことはもう嫌だ……そうみんなを代表して言いたいと思う」
「こんな酷いことは、続けちゃいけないことは確かだ。絶対ダメだ」
6度のMotoGP王者であるマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)は、ドルナはライダーを悲劇から守るために最善を尽くしていると同時に、安全性の向上にも常に取り組んでいると考えている。
しかし最大の問題は、多数のジュニアカテゴリーが存在していることであり、それによってリスクが増えているとも指摘している。
「ドルナについて言えば、彼らは僕たちを守ろうとしているし、サーキットやレザースーツ、ヘルメットなど安全性の向上を試みている」
マルケスはこうした悲劇の連続においてMotoGPが十分なサポートを提供していると感じられるかと訊かれると、そう答えた。
「だけどリスクは常に存在する。20年前と比較して、今は倍ものカテゴリーが存在して、ライダーも2倍になっていることは確かだ」
「僕が言いたいのは、若い才能を見つけようとしている時というのは、より多くのカテゴリーやより多くのライダーがトラックに居るということで、そこにはより多くのリスクが有るということだ」
「それをマネジメントするのは難しいことだろうし、良い妥協点を見つけるのも難しいだろう。でも今僕が言えることの一つがそれだ。僕らはたくさんのカテゴリーを抱えていて、毎週末何かしらレースがある。MotoGP、スーパーバイク、WSBK、欧州選手権と言った形でね」
「つまり当然、過去よりも多くのリスクが有ることを意味しているんだ」
2児の父でもあるアレイシ・エスパルガロ(アプリリア)は、こうしたマルケスの語るカテゴリーの増加について、同じように懸念を示している。
A minutes silence to remember Jason Dupasquier
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
さらに彼は年齢制限の引き上げについて話し合うべきだとも語っている。現在の12歳といった若さでフルコースを走るような状況となる前に、ミニバイクなどでより安全に、スキルを身につける時間を設けるべきだと考えているのだ。
「世界選手権の年齢制限は16歳だけど、16歳なら悪くはないよ」と、エスパルガロは言う。
「でも、それを17歳にすることも可能だ。だけど問題はほぼMoto3と同じようなMoto4クラスを12歳から、しかもバルセロナのような大きなコースを走れてしまうということだ」
「僕としてはそこは凄く良くないと思っている。カートコースでミニバイクのスクールをするなどということも良いだろう。スピードがより遅いミニバイクでなら、ふたりのライダーが事故を起こしても何も起こらないし、大きなトラックへ向かうのを1~2年遅くすることができる」
「以前はミニバイクの人気も高かったけど、今はみんなMoto4に行きたがってしまう」
「SSP300をはじめとして多くのクラスが、大きなサーキットで行なわれている」
「カートコースでもっとレースをするのは、解決策かもしれない。子どもたちはそこで同じか、それ以上に学ぶことができると思うんだ」
ディーン・ベルタ・ビニャーレスの事故死を受け、従兄弟であるマーベリック・ビニャーレスは、事故から1週間後となる今週末に開催されているアメリカズGPの欠場を選択。アプリリアも「ビニャーレスの決定を無条件にサポートする」とした。
スズキのジョアン・ミルは、こうしたアプリリアの姿勢が、グリッドからも評価されているモノだと語っている。
「こうした悲劇が起こった時、みんなが喪失感を感じていると思う。そして、こういうことが起きた時にみんなが共にあるというのは良いことだよ。僕らの誰にでも、こういうことは起こりうるし、本当に厳しい状況だからね」
「僕はマーベリックがここに来られなかった気持ちがよく分かるし、アプリリアの決定は素晴らしいものだ」
「ライダーたちも、こうした事をきちんと認めていると思う。こんなことがもう起こらないことを祈っている」
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