「普段どおりに進めていきたい」タイトル獲得のチャンス……でもスズキは“焦らない”
スズキのMotoGPプロジェクトリーダーを務める佐原伸一は、タイトル獲得のチャンスがある今季も焦らず“ステップ・バイ・ステップ”で改善を進めて歴史を作っていきたいと語った。

2020年のMotoGPは新型コロナウイルスの影響でスケジュールが大きく変更されたうえ、チャンピオンのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)が怪我で欠場していることもあって9戦で6名(内4名が初優勝)勝者が出るという、非常に混沌とした展開が続いている。
前述のように勝者の安定しないレースが続いているが、その中でも非常に安定したパフォーマンスを示しているのがスズキ、そしてライダーのジョアン・ミルだ。
MotoGP2年目のミルは目標の初勝利はまだ挙げていないものの、直近3戦で連続表彰台を獲得。さらに過去5戦では4回表彰台を獲得と非常に高い安定性を示して、チャンピオンシップ首位のファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)にわずか8ポイント差の2番手につけている。
スズキはサテライトチームが居ないため、彼らはミルとアレックス・リンスの2名のみでシリーズを戦っている。しかしコンストラクターズランキングではヤマハとドゥカティに次ぐ3番手を確保し、チームランキングでも2番手に並んでいる好リザルトを残してきた。
2020年シーズンは既に後半戦に入っており、残りレースは6戦。フランス、アラゴン連戦そしてバレンシア連戦、ポルトガルとミルが前述のような安定性を示すことができれば、2020年タイトル獲得への道が開いてくるはずだ。
ただスズキの今季の活躍は、ミルの活躍だけによるものではなく、スズキGSX-RRのバランスの良さにある。彼らのマシンはライバルも認めるほどで、グリッド上で最高のバイクと見る向きもあるほどだ。
こうしたGSX-RRの素性の良さについて、スズキのMotoGPプロジェクトリーダーである佐原伸一は次のように語った。
「個人的には、2020年型のGSX-RRは予想した通りに上手く機能していると思います。バイクは我々の哲学“ステップ・バイ・ステップ”に基づいて開発され、我々の素晴らしいライダーとともに上手く機能してくれることを期待していたんです。これまでのところ、非常に上手く進んでいますね」
2020年型のGSX-RRが昨年に比べて改善された点は、特定のトラックに特化したマシンではなく、どのようなセッティングでもパフォーマンスを上手く発揮できるようになった点だと言えるだろう。
そうした前進を果たすために、スズキはマシン全体が改善されたと、佐原PLは語る。
「シャシー、ボディワーク、エンジンそして電子制御、全てが改善されています。我々のアップデートは過去に問題を抱えていたトラックでさえパフォーマンスを改善しました。2020年シーズンの残りで訪れるトラックでも上手く機能することを願っています」
「もちろん、我々は依然としてさらなる改善を試みています。既に未来に目を向けており、そして勝利を達成することに集中しています。我々は歴史を作り続けたいと思っているんです」
ただ改善を遂げたGSX-RRにも“アキレス腱”は残されている。それは予選での一発のラップタイムだ。彼らはこれまでの8レースで2回しか予選2列目以内に入れていない状況がある。
「我々はバイクのパフォーマンスに完全に満足したことは決してありませんし、ファクトリーも改善の手を止めることはありません。それは最高レベルで(バイクを)走らせるなら当然のことだと思います」
「チーム、そしてファクトリーのスタッフはトラックごとにバイクのバランス改善に取り組んでいます。GSX-RRは基礎的なパッケージが非常に優れていますが、グリッドでより良いポジションを獲得するためには、1周の速さを改善しなくてはいけません」
2015年にMotoGPへ復帰したスズキ。彼らの哲学は焦らず、騒がず一歩ずつ進んでいくことだが、2020年シーズンに降ってきたチャンスにも慌てず自分たちのペースで進むことが重要だと佐原PLは考えている。
「こうした不思議な状況に直面してもうろたえないことが重要だと思っています。我々はできる限り普段どおりの行動を試み、仕事に気を配り、バイクを適切に機能させることに集中しています。ライダーにもプレッシャーをかけるのではなく、彼らには自然に能力を発揮して欲しい……頭を冷静に保ちたいんですよ」
「ライダーたちのパフォーマンスに疑いを持ったことはありません。実際、アレックスもジョアンも予想よりも早く彼らの強さを示し始めましたからね」
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。