ロッシ時代の盤外戦術=過去の忌むべき風習? “健全”ライバル関係のMotoGPに運営ドルナは満足「そういう目立ち方は必要ない」
MotoGPを運営するドルナのカルメロ・エスペレータCEOは、近年のMotoGPが過剰なライバル関係のクローズアップから逃れていることを歓迎している。
MotoGPを運営するドルナ・スポーツのカルメロ・エスペレータCEOは、近年のMotoGPでライダー間の激しいライバル関係がなくなり、健全な戦いが繰り広げられるようになったことを歓迎しているようだ。
MotoGPは2021年にレジェンドとして君臨してきたバレンティーノ・ロッシが引退。それ以前からホルヘ・ロレンソやダニ・ペドロサなど、2000年代後半からシリーズを引っ張ってきたベテランの著名なライダーが引退してきたことから、世代交代が印象付けられていたが、ロッシの引退によっていよいよ新時代に入った感がある。
2022年はそのロッシの弟子筋にあたるフランチェスコ・バニャイヤが驚異的な追い上げを見せて初チャンピオンに輝き、ケーシー・ストーナー以来の王座となったドゥカティは歓喜に湧いた。
世代交代を示すようなシーズンだったが、この年を通じてかつてのような激しいライバル関係は見られなかった。数年前からその傾向は見えていたが、コース上でのアクシデントがコース外に波及していくことが少なくなっていることを感じているファンも居ただろう。
ファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)とバニャイヤとの直接対決はもとより、オランダGPでクアルタラロがタイトル争いのライバルであるアレイシ・エスパルガロ(アプリリア)を転倒に巻き込んだ後ですら、かつてのような激しい非難の応報は見られなかった。
エスパルガロはクアルタラロに対して過度な批判をすることはなく、ジャーナリストによる記事の見出しを探そうとする詮索具合に苛立ちを見せたほどだ。
「結局、何がほしいんだ? MMA(総合格闘技)にチャンネルを変えればいいだろう」と、エスパルガロはシーズン終了時に語っている。
「腹立たしいね。僕らが互いにギャンギャンやりあうことを期待しているんだろうか? でも僕らはコース上とコース外を切り分ける術を持っている。僕はファビオと争うつもりはない」
「もちろん、ペッコ(バニャイヤの愛称)と(エネア)バスティアニーニの間に緊張が無いと言ってるわけでもない。でもリラックスしているときは大丈夫なんだ。普通のことだ。コースから離れればボルテージも違ったものになる。あまりグチグチ言わないでくれ、いいね?」
Carmelo Ezpeleta, CEO di Dorna Sports
Photo by: RNF Racing
かつてのような“激しい”ライバル関係はもう見られないのか、といった思いを抱くファンもいるかもしれない。
実際、MotoGPを運営する側としては、今の健全なライダー関係が好ましいものだと捉えており、ファンを煽るようなライバル関係の“中毒”から抜け出していることを歓迎しているため、ファンの直感は正しいと言えそうだ。
ドルナのエスペレータCEOはmotorsport.comのインタビューに対し、こう語っている。
「チャンピオンシップがそういったモノ(ライダー間の良好な関係)の価値を守らなければと言えないようなら、それは間違っていると心から思う」
「スポーツ新聞は我々のチャンピオンシップが示している価値に賞を与えている。ライダーは互いに避けられないライバル関係を示しつつ、同時に互いへの敬意を払うことができるということを証明している」
「2015年、ロレンソとマルク、バレンティーノの一件のあと、我々は好奇心の津波を受けていた。当時、すでに私はそういったモノが好きではないと公言していたんだ。私がナイーブすぎるのかもしれないが、個人的にはライバル関係はレースの勝敗という点で注目が集まるべきだと思う。人々の注目を集めるために、ライダーが互いにそうして目立つ必要はないんだ」
エスペレータCEOは、現在の世代のアプローチが好ましいものだと続ける。
「2022年はアレックスとファビオがアッセンでクラッシュしてしまったが、ライバルならこんなものだろう。それより先は私にとって好ましい領域を超えることになる」
「ロレンソとペドロサが互いに口を聞かなかった時も、私はいい気分ではなかった。2001年にモンメロの表彰台でロッシと(マックス)ビアッジが口論していたときもそうだ」
「私もライバル関係自体は好きだ。チャンピオンシップの人気の面でも助けになるからね。しかし友好的であることは悪いことではないと思う」
エスペレータCEOは激しいライバル関係がチャンピオンシップの盛り上げに一役買うことは認めつつも、MotoGPというシリーズにはよりふさわしい価値観があるはずだと考えている。
「ボクシングでは計量で互いに侮辱しあったりし、主催者も明らかにそういったことを望んでいる。それはそれでいいだろう。しかし我々のシリーズのためとなればそれは賛成しかねる。勝つことは良いことだが、敗者を馬鹿にしてはいけないと思う。そういった価値観を広げるべきだ」
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