インタビュー

前代未聞。MotoGPとF1の日本GPが中止に……その背景には何があったのか?(1)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年のMotoGPとF1の日本GPの開催が中止されることが発表された。その細かい経緯について、モビリティランドの田中薫社長に訊いた。

Race winner Marc Marquez, Repsol Honda Team, second place Fabio Quartararo, Petronas Yamaha SRT, third place Andrea Dovizioso, Ducati Team

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Gold and Goose / Motorsport Images

 2020年は、まさに前代未聞の1年となっている。新型コロナウイルスの感染が世界中に広がったため、ほとんど全てのモータースポーツが、開催中断を余儀なくされることになった。

 しかしそんな中でも、徐々にシーズンがスタート。F1とMotoGPも、7月に初戦を迎えることになった。

 ただいずれのシリーズも、今年の日本GPは中止。いずれも、1987年から続いてきた日本でのレース開催の記録が潰えることとなり、ファンの間では衝撃が走った。

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 MotoGPはツインリンクもてぎで、F1は鈴鹿サーキットで、それぞれ開催される予定だった……それぞれ、どんな経緯で中止になったのか? 両方のサーキットを運営するモビリティランドの、田中薫社長に話を訊いた。

 まず最初に開催中止が決まったのは、MotoGPの方である。

「お客様、そしてエントラントの安全・安心という観点が一番重要でした。そして、MotoGPとしてはヨーロッパでできるだけ多くのレースをやって、シリーズを成立させなければいけないということでした。そういう意味では、長年一緒に仕事をしてきたパートナーとしては、開催中止という決定を、仕方なくではありますが、受け入れるしかないということでした」

 田中社長は、MotoGPを運営するドルナの要望により、MotoGP日本GPの中止を決断したと語った。これは、開催中止が発表されたリリースに記載された理由とも同じだ。

「彼らもすごく困っていました。ヨーロッパでは、まだ(新型コロナウイルスの)感染が拡大しています。そういう中では、陸続きのヨーロッパ内を転戦することはできても、フライアウェイ戦は難しいという話もありました」

「我々としても、シリーズ成立のためには仕方がないと判断しました。開催中止を決めたのは6月の初めですが、その状況でEUからの渡航を受け入れることができるかという点も不透明でした。そういう意味では安全・安心という観点から、判断をしなければいけませんでした」

 ヨーロッパでの序盤戦は、無観客で開催されることが決まっている。しかし日本GPが無観客で開催される可能性はなかったという。

「基本的には、無観客という話はなかったです。ドルナとしても、プロスポーツとしてはお客さんに観ていただかなければいけないし、スポンサーやチームとの契約という話もあったと思います」

「フライアウェイ戦は、ヨーロッパでのレースと比較して、輸送費など多額のコストがかかります。ヨーロッパではどうやってレースを実現しているのか分かりませんが……日本GPはその費用を捻出するためにも、無観客という判断はなかったと思います」

 ヨーロッパでのレースをできるだけ多く開催し、その後年末に時期をずらして日本GPを開催する……そんな選択肢も頭に浮かぶが、ツインリンクもてぎの場所を考えれば、それも簡単なことではなかったようだ。

「時期をずらすということも検討しなかったわけではありません。でももてぎは、地域特性や気象条件を考えると、12月の開催は難しい。寒いのはもちろんですし、日没の時間も早まってしまいます。そう考えると、当初の10月以降の開催は、やはり難しかったと思います」

 ただドルナとしても、日本GPの重要度は、大いに認識しているという。

「日本はホンダ、ヤマハ、スズキと、バイクメーカーの母国ですからね。その中で日本GPの重要性は、ドルナにも認めていただいています。しかし現在の状況の中では、やはり仕方ない……という感じではないでしょうか。このウイルス感染の状況については、先がまだ見えないですからね」

第2回「F1日本GP開催中止の背景」に続く……

 

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