駆け引きが今後の課題? 表彰台まで“あと一歩”に迫った中上貴晶、ホンダ首脳の視線は

MotoGP3年目の戦いでポールポジションを獲得するなどライダーとして大きな成長を示した中上貴晶。転倒によって表彰台には手が届かなかったが、ホンダは彼の今年の走りをどう評価しているのだろうか? HRCの桒田哲宏レース運営室室長に話を訊いた。

駆け引きが今後の課題? 表彰台まで“あと一歩”に迫った中上貴晶、ホンダ首脳の視線は

 2020年10月24日、日本の2輪モータースポーツファンの間では大きな期待が渦巻いた。ロードレース世界選手権最高峰のMotoGPクラスに参戦する中上貴晶(LCRホンダ)が、日本人として16年ぶりのポールポジションを獲得し、同じく16年ぶりの勝利の可能性も見えてきたからだ。

 MotoGPクラスでの3年目のシーズンとなった昨年、中上は大きく成長した。第3戦アンダルシアGPでは表彰台までコンマ5秒の位置で4位に入ると、第6戦スティリアGPではキャリア初のフロントロウを獲得。決勝では赤旗中断が新品タイヤの残っていない中上にとって不利に働きチャンスを物にできなかったが、確実に表彰台を狙える位置を走っていた。

 そしてアラゴンサーキットで行なわれた第12戦テルエルGPでは、ついに初のポールポジションを獲得。日本中のファンから、決勝での好結果に大きな期待がかかった。

 ただ中上はそのテルエルGP決勝で、ホールショットを奪って先行したものの、1周目の4コーナーで転倒。あえなくリタイアに終わってしまった。

 中上はその後も好調を維持したが、第14戦バレンシアGPでは表彰台を狙いオーバーテイクを仕掛けた際に転倒。結局2020年に初表彰台を持ち帰ることはできなかった。

 HRC(ホンダ・レーシング)レース運営室室長の桒田哲宏は、年始にオンラインでの取材に応えると、中上は最高峰クラスでの戦い方を学び、戦うステージを上げていっていると話した。

「彼自身も、勝ち方がわからないライダーではないですから」

 中上の2020年シーズンの戦いにおいて勝利や表彰台を逃したことについて訊かれた桒田室長は、そう口を開いた。

「ただMotoGPは、周りにいる選手のレベルが全然違うのも間違いない。彼らとやり合う必要があります。そして一度抜けばOKというわけでもなく、レース距離で前に行かなくてはいけないんです」

「皆がペースをコントロールしつつ、ポイントポイントでプッシュするというレース展開が多いですよね」

「それがMoto2で無いとは言いませんが、MotoGPクラスは周り(のレベル)がやはり違います。しかしこの人とどう戦うか……どういう風に戦っていけば良いんだという経験値が上がっていて、“戦っている場所”も徐々に上がっていると思うんです」

「今までだと『どんなに頑張っても4位だったり5位だよね』というところが、表彰台が狙えるという位置に来ている。それは彼がこういった部分の戦略を理解し始めていて、どう戦っていくのかという頭脳戦ができるようになってきたということだと思います」

 桒田室長が話すように、中上は2020年シーズンの戦いで着実に表彰台圏内を争うようになり、それまでよりステージをひとつ上ったと感じられる走りが多かった。

 では“戦う場所”が上がったことでペースが引き上げられたからこそ、テルエルGPやバレンシアGPのような転倒が発生するのか? それとも上位で争うプレッシャーがそうさせるのだろうか?

 桒田室長はこの点に関しては上位での“駆け引き”がポイントだと指摘。中上はそこで苦しんでいる部分があるのではないかと分析した。

「やはり駆け引きだと思います」と、桒田室長は語る。

「後ろから追いかけられると、どこで速い、どこで遅いというのが知られてしまいます。だから“立ち上がりで負ける”ならば、あえてコーナーの進入スピードを遅くして、(相手が)コーナリングスピードを活かせないようにし、立ち上がりで抜れないようにする……とかそういうことを皆やるわけです」

「自分のマシンの強みを見ながら戦っていて、あるときは(力を)抜いたり、あるときはプッシュしたりとか……周りからは見えない駆け引きが多く行なわれていると思うんです」

「その中で翻弄されたり、ある意味術にハマってしまったり……という点もあるとは思います。それは彼が今年苦しんでいた部分でもあるんじゃないかなとは思っています」

 桒田室長はこの取材の中で、中上の今シーズンに向けては表彰台、ひいては優勝を期待していると明言。初の複数年契約を決め、最新型のマシンを手に入れることになる中上の2021年の走りからは、去年以上に目が離せなくなりそうだ。

 

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シリーズ MotoGP
執筆者 永安陽介