「屠殺場に向かう子羊のような気分」ミラー、ヤマハV4の直線スピード不足に辛辣評価
ジャック・ミラーはヤマハのV4マシンの現状についてかなり厳しい言葉で表現しているが、ヤマハのプロジェクトへの信頼は失っていない。
2026年シーズンからV4エンジンの新型マシンを投入したヤマハは、序盤戦ではかなり苦しいレースが続いている。ジャック・ミラー(プラマック)もそれは認めているが、彼はヤマハが進めるこの野心的プロジェクトへの信頼を失ってはいないと語る。
ヤマハは近年苦戦が続いてきたが、戦闘力向上を目指してV4エンジンへの切り替えを決定。2026年シーズンに向け、マシンを全面的に再設計してきた。しかし開幕3戦を終えた時点では、ライバルに大きく遅れをとっている。
新V4エンジンは依然として出力面でライバルの後塵を拝していて、さらにマシン全体に加えられた変更によって、従来の強みを損なう結果にもつながった。この点に関しては、ヤマハのエースライダーであるファビオ・クアルタラロが「強みが1つもない」とコメントしている。
第3戦アメリカズGPではヤマハ陣営の4名が揃って最後尾を占めるという厳しい状況が示された。特に舞台となったCOTAのロングストレートではライバルとの差が顕著で、最高速度の差はアレックス・リンス(ヤマハ)なら6km/h、クアルタラロやトプラク・ラズガットリオグル(プラマック)は10km/h以上も遅かった。
チームメイトより比較的楽観的な姿勢を見せてきたミラーも、その厳しさを率直な比喩で表現した。
「これは進行中のプロジェクトで、できる限り前進しようとしている。集中して作業を続け、レースの最後まで戦おうとしている」
「(ストレートで)全開にすると、まるで屠殺場に向かう子羊のような気分だ。バックストレートのたびに、相手に引き離されていくんだ」
そしてミラーはアメリカズGPでフランコ・モルビデリ(VR46)の駆るドゥカティのマシンと争って、あえなく敗れた時のことを、次のように語った。
「フランキー(モルビデリ)が僕の後ろにつけていたんだ。最終コーナーの1つ前で僕らは”ダイブボム”を仕掛け、そして最終コーナーでは横並びになった」
「それでも僕がほんの少し先行していたんだ。だけどターン1ではイエローフラッグが出て、その時にはもうダイブボムで仕掛けたり、彼を抑えるための手段が何もなかった」
「(ストレートで)アクセルを開くと、もうどうすることもできなかった」
■ヤマハの開発に期待
Jack Miller, Pramac Racing
Photo by: Gold and Goose Photography / LAT Images / via Getty Images
MotoGPはアメリカズGPのあと、予定されていたカタールGPが中東情勢の悪化によって延期。1ヵ月間の春休みが降って湧いた。この期間はヤマハにとって4月末のスペインGPに向けた新パーツ開発・投入のための絶好の機会だ。
スペインGP後に行なわれる公式テストも重要だ。ミラーはヨーロッパでのレース開幕がヤマハにとって希望の光となることを期待しているという。
「ヨーロッパに戻るし、3週間の休みもある。だからヘレスまでにアップデートが用意できることを願っている」
「新しいスイングアームとシャシーが必要なのは確実だし、それらは開発中だ。エンジンの調整も進めている」
「ヘレスではもう少し競争力を上げたいし、シーズンを通して改善していきたい。もっと良くできるように努力していくよ。もちろん努力が足りないわけではないけどね」
ヤマハにとって事態が厳しくなっているのは時間的な要因もある。彼らがV4マシンへの移行を正式に明かしたのは、2025年最終戦になってからだった。そのため、2026年シーズンに向けてマシンを用意すること自体が大きな挑戦だった。
ミラーはヤマハの昨年からのV4マシンへのコミットメントを認めつつも、MotoGPでは”ライバルが立ち止まることはない”と強調しており、息をつく暇はないと語った。
「今、日本だけでなくイタリアのエンジニアも含めて、多くのスタッフが開発のために動いている。できる限り前進しようとしている」
「今は非常に厳しい状況だ。でもMotoGPでは誰も待ってくれない。だからこそ、最善を尽くして前に進み続ける必要がある」
「まずは4台を走らせるという大きなハードルは越えた。でも一息つく間もないんだ。大量のデータと『ここがダメだ』『あれもダメだ』という意見が押し寄せる。それがライダーというものだからね」
「その中から本当に求めているものを読み取り、改善につなげていく必要がある。最初からすべてがうまくいくと思うなら、それはあまりにも甘いというものだ」
とはいえ、ミラーはアメリカズGPを終えて一定の手応えを感じているという。
「今日は今年一番満足している。レース終盤のペースも良かったし、自分としてはいいレースができたからね」
「ただ、チームとしてもっと連携を深める必要があるだろう」
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