絶好調なザルコ、LCRが抱える”厄介”な問題を浮き彫りに。大苦戦新人チャントラに残された猶予はわずか?
ヨハン・ザルコが大活躍中のLCRホンダ。しかし、その活躍が強烈なことによって、チームメイトのソムキアット・チャントラの苦戦ぶりもまた鮮明となっている。
Somkiat Chantra, Team LCR Honda
写真:: Team LCR
今季のMotoGPでホンダ陣営随一の活躍を示しているLCRのヨハン・ザルコ。しかし彼の活躍ぶりが凄まじいことで、チームメイトのソムキアット・チャントラの苦戦ぶりも鮮明となってしまっている。
ザルコは昨年から、苦境を脱しようともがくホンダ陣営を引っ張る存在となっていたが、2025年はその傾向が顕著に。母国第6戦フランスGPでは雨という好材料はあったものの、マルク・マルケス(ドゥカティ)を下して勝利してみせた。
続く第7戦イギリスGPでもザルコは躍動。勝利したマルコ・ベッツェッキ(アプリリア)から、4秒差の2位フィニッシュで連続表彰台を記録した。
ファクトリー契約とはいえ、サテライトチームでこうした結果を残すザルコの走りは、間違いなく称賛に値するモノだ。実際、こうした実績を残しているザルコはホンダとの契約延長交渉の真っ最中にある。
しかし、ザルコが絶好調なことで、もうひとりのライダーが深刻なパフォーマンス問題を抱えていることが、あまりにも色濃くあらわれてしまっている。
Johann Zarco, Team LCR Honda
Photo by: Marc Fleury
これまでのレースにおいて、ザルコのチームメイトとして今季MotoGPクラスにデビューしたソムキアット・チャントラは思うようなパフォーマンスを発揮できず、入賞は0回。下位争いが定位置で、ランキングは最下位だ。
チャントラはMoto2クラスで勝利こそ挙げているが、MotoGPクラスに昇格できたのはスポーツ面だけではなく、商業的な理由があったと広く理解されているのが現状だ。
LCRでは中上貴晶が長年参戦してきたが、2024年をもって彼は現役を引退。ホンダはその後任としてMoto2トップランナーのひとりで後にクラス王者となった小椋藍を昇格させようとしたが、小椋はこれを断りアプリリア陣営のトラックハウス入り……そこで白羽の矢が立ったのが、チャントラだった。
この選択の背景には、ホンダ、そしてタイトルスポンサーの出光興産による影響があった。両社はアジアでのライダー育成の取り組みを支援しており、アジア・タレント・カップからLCRのMotoGPシートという頂点までのルートが敷かれている。
ライダーが準備万端であり、シートにふさわしい状況ならば、これは理に適った戦略だと言えるだろう。しかし、これこそがまさにチャントラの置かれた立場を悪くしてしまっている理由でもある。
腕上がりの症状緩和のための手術を受けたことで欠場したフランスGPを除いた今季6戦のチャントラの成績を見ると、改善どころかむしろ後退という印象が目立っている。ほぼ全てのグランプリで最下位であるが、それ以上に心配されるのはトップとの差だ。
例えば開幕戦タイGPでチャントラは勝利したマルク・マルケスから31秒差。しかし第7戦イギリスGPでは1分以上の差をつけられてしまった。なおカタールGPでは38秒差、12周目にリタイアしたスペインGPでも既に25秒差だった。
チャントラは確かに腕上がりの問題に悩まされたが、そのペース不足に対する完全な言い訳とすることはできない。motorsport.comの取材では、チャントラが他のホンダ勢よりも1周1.5秒遅く周回しており、HRCのエンジニアは彼から得られるデータをほぼ無視しているという。
Somkiat Chantra, Team LCR Honda
Photo by: Team LCR
現在ホンダはファクトリーとLCRの4台体制でMotoGPを戦っている……その開発ポテンシャルの25%を犠牲にするというのは、どのようなシナリオであっても良い戦略とは言い難いはずだ。苦境からの復活を目指しているメーカーなら、なおさらだ。
そんな現状もあり、チャントラの来季以降に関しては不確かな状況となっている。
「ナカガミと出光のプロジェクトは、スポーツの観点から言えばかなり堅実なモノだった」
LCRを率いるルーチョ・チェッキネロはmotorsport.comのインタビューにそう語った。
「しかしその後バイクが競争力を失ってしまった。昨年、ホンダはソムキアットの昇格を決めた。彼にもっと期待していたというのは事実だが、腕上がりの問題によってかなり苦しんでいたのも本当だ」
チェッキネロ代表は、厳しい立場に立たされたチャントラの成績不振についてこだわらずに、MotoGPで最もパワフルなメーカーであるホンダとパートナーシップを組んでいることを重視するコメントを残した。
「ホンダにとって、アジア人ライダーを支援するという社会的なメッセージはとても大事なものだ。本当の問題は、出光のようなスポンサーを失うことだ」
これまでに述べてきたことから、LCRのセカンドライダーの将来はこれから正念場を迎えることとなりそうだ。motorsport.comの調べでは、チャントラには現状、ポテンシャルを証明するための猶予がしばらく与えられるはずだと見られている。とはいえ、目に見える形での転機がなければ、ホンダ、そして彼の最大の後ろ盾である出光でさえ、2026年に彼をRC213Vに乗せ続けることを正当化するのは難しいかもしれない。
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