バリー・シーン、バレンティーノ・ロッシ……チャンピオンが『1』を使わなくなった現代MotoGP
MotoGP2021年シーズンのチャンピオンとなったファビオ・クアルタラロは、チャンピオンナンバー『1』を来季使用しないつもりだと明かしている。チャンピオンとしての1番を使用しない流れはどこからきたのだろうか?
MotoGP2021年シーズンのタイトル争いが、第16戦エミリア・ロマーニャGPで決着。ヤマハのファビオ・クアルタラロが、2レースを残して早々と王者に輝いた。
最高峰クラスでのキャリア3年目にしてチャンピオンとなったクアルタラロだが、彼は早くも2022年シーズンに、チャンピオンナンバーである『1』を着用するつもりはなく、現在の『20』を継続使用する意向を明かしている。
パーソナルナンバーを使い続けたチャンピオン達
近年ではMotoGPライダーのパーソナルナンバーは特徴的なものとなっており、チャンピオンとなった翌年に1番を使用することが少なくなっている。Moto2クラスやMoto3クラスでは王者となったライダーはステップアップしていくことが多いということもあり、彼らの中で1番を着用する選択肢が薄れてきていると考えると、近年最高峰クラスで1番が見られないことも理解できる。
ではこうしたチャンピオンナンバーを使用しない潮流を生み出したのは誰か?
それは1977年と1978年に500ccクラスで王者となりつつも『7』を使い続けたバリー・シーン、そして2000年代になり再びパーソナルナンバーの使用にこだわったバレンティーノ・ロッシと言えるだろう。
バリー・シーンはチャンピオンとして『1』を着用する慣例に従わなかったライダーの最初の存在とも言える。彼はチャンピオン獲得以前は様々な番号でレースに参加していたが、チャンピオン獲得以後は7番に拘り、引退するまでそれ以外の番号を使用することはなかった。
彼はゼッケンナンバー以外、たとえばホテルの部屋番号でなどでもこの『7』という数字に拘りを持っており、そうした姿勢はファンにもよく知られているところだ。
しかし、彼のように特定のパーソナルナンバーにこだわるライダーの出現は、その後20年以上にわたって見られなかった。ケニー・ロバーツやフレディ・スペンサー、エディ・ローソン、ウェイン・レイニー、ミック・ドゥーハン……幾度もチャンピオンに輝いた名ライダーたちも、王者の証と言える1番を使用してきたのだ。
そしてバリー・シーンの次にチャンピオンとなった後もパーソナルナンバーを使い続けたのが、ロッシだ。ロッシは合計7回にわたって最高峰クラスのチャンピオンとなったが、そのいずれにおいても彼の象徴とも言える46番を使い続け、ロードレース界のみならず他カテゴリーでも、広く”ロッシ=46”と知られている。ロッシが四輪のレースに参戦する時もこの46を使うことが多かった。さらにはロッシのファンであることを公言しているアレクサンダー・アルボンは、F1デビューするにあたって23というパーソナルナンバーを選んだが、これはロッシの46を半分にした数であると明かしている。
そして2010年代のMotoGPを席巻してきたマルク・マルケスも、ロッシと同じようにパーソナルナンバーの93番の使用を続け、6度MotoGPチャンピオンとなりつつも、1番を付けたことはない。
なお過去20年でチャンピオンナンバー”1”を付けた数少ないライダーは、ニッキー・ヘイデン、ケーシー・ストーナー、そしてホルヘ・ロレンソだ。しかしチャンピオンナンバーには“呪い”があるかのように、2007年のヘイデン、2008、2012年のストーナー、2011年のロレンソらは、1番を付けた年にタイトル防衛に失敗してしまっている。
ただ2020年にチャンピオンとなったジョアン・ミル(スズキ)は、1番を使わずに自身の36番を使い続けたが、タイトルを守り切ることはできなかった。
2022年は史上最長となる全21戦が予定されているが、1番を使わないことを選んだクアルタラロは、呪いを遠ざけてタイトルを守り切ることができるのか……注目のシーズンとなるだろう。
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