MotoGP昇格の中上貴晶。昨年末のへレス非公開テストが”鍵”だった
来季MotoGP昇格が決まった中上貴晶。実は昨年末にへレスでMotoGPマシンをテストし、それが今回の決定につながったという。

来季MotoGP昇格が決まった中上貴晶が記者会見に臨み、その想い、来季へかける意気込みについて語った。
「ずっと夢だったMotoGPの舞台のスタートラインに立つことができて、光栄に思っています」
そう中上は語る。
「まだMoto2クラスは7戦残ってます。来季のMotoGP昇格が決まったのは嬉しい限りですが、残り7戦集中して、勢いをつけるためにも、ひとつでも勝ち星を延ばしていきたいと思います」
「これまで頂点を目指してやってきました。家族、ホンダ、HRCなど、多くの協力があってスタートラインに立てました。今はとにかく嬉しいです」
昨年は1勝を挙げた中上だったが、今年は表彰台こそあるものの、勝利できていない。本人も「正直に言うと不安がありました」と語る。
「昨年のランキング上位のライダー3人が昇格したので、今年はランキング3位以上と思っていました。(フランコ)モリビデリと(トーマス)ルティだけがライバルだと考えていたんですが、求めていたシーズンの流れではないです。焦りを感じる瞬間もありました。でも、今回正式にMotoGP昇格を発表していただいたんで、スッキリというか、今まで以上にMoto2に集中していけると思います」
実は中上は、非公開ながら昨年末にMotoGPマシンをヘレスでテストしたという。最終的にMotoGP昇格が決定したのは先週のオーストリアGPでのことだったというが、そのテストの走りが印象的だったことで、MotoGP昇格の方針が概ね決まっていたという。
会見に出席した山本雅史モータースポーツ部長は、次のように語った。
「昨年のオーストリアGPでの走りを見て、彼だったらMotoGPに乗れるんじゃないかと考え、年内にテストに乗せようという話になりました」
「レースの後に彼と話してみて、彼の中に期待できるモノを発見したので、年末にヘレスで3日間テストをしました。初日はバイクに慣れるのに四苦八苦したそうなんですが、3日目には非公式ながら、ダニ・ペドロサの予選タイムを上回ってみせたんです」
「3日目にはしっかりタイムを出し、ラップを重ねたことが、評価に繋がりました」
ホンダ・レーシングの桑田哲宏レース運営室 室長は「MotoGPでは、体力的にも多くのモノが求められる」と語る。
「へレスのテストでは、最初は体力的には厳しかったけど、そんな中でもしっかり走って、先ほどの結果を出してくれた。その後、トレーニングをしっかり積んできてくれている。そういう意味でも、世界最高峰の中でもしっかり結果を出してくれると思いました」と語った。
この時のテストで初体験したMotoGPマシンについて中上は、「全く別のバイクだった」と語った。
「テスト初日にはMoto2より遅かったんですが、3日目には確信を持つことができました。Moto2とは全く別のバイクです。でも、メカニックにも問題点を指摘してもらいましたし、乗るのは楽しかったです。経験はゼロに近いですが、またすぐに乗りたいなという気持ちです」
前述の通り、今季の中上は思うような結果を残せていない。これについて山本MS部長は、「ホンダとしてプレッシャーをかけすぎた」と語る。
「昨年末に、中上選手と色々と話をしました。ホンダとしても、プレッシャーをかけすぎたのではないかと感じています。例えば8耐では、彼はヘアピンで転倒してしまった。ありえないですよね? だから、彼の中に何か引っかかるものがあるのではないかと思いました。だから先日のオーストリアでは、自分の好きなように走りなさいと話したのを覚えています」
「期待値が高いと、我々はプレッシャーをかけてしまう。でも、私は彼の走りを目の前で見てますから」
桑田室長も「MotoGP昇格に迷いはなかった」と語る。
「MotoGPで走れるという自信を持っていたので、昇格に迷いはありませんでした。だからこの時点で決めて、不安をなくして、来季に向けて走ってもらった方がいいんじゃないかということになりました」
来季MotoGP昇格が正式決まり、ある意味”吹っ切れた”はずの中上。Moto2での残り7レースでどんな走りを見せるのか、注目が集まるところだ。
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