【アプリリア|勝利への道】トップ常連への進化、”時代を代表する”開発者の尽力アリ。最もエモーショナルな2022年に!

MotoGP2022年シーズンに初優勝を成し遂げたアプリリア。最高峰クラスでは長く苦戦が続いていたアプリリアの、最高峰クラス初期からの”旅”を振り返り、現在の好調なシーンまでの繋がりを今一度見てみよう。全3回の最終回となる今回は、好調な2022年に繋がるまでの話……。

【アプリリア|勝利への道】トップ常連への進化、”時代を代表する”開発者の尽力アリ。最もエモーショナルな2022年に!
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 2022年MotoGP第3戦アルゼンチンGPでアレイシ・エスパルガロが挙げた優勝は、アプリリアの企業史に残る歴史的な出来事だった。テルマス・デ・リオ・オンドで繰り広げられたドラマチックなレースと勝利は、エスパルガロのキャラクターとも相まって日本のファンたちの気持ちも大きく揺り動かしたようだ。

 そこで、アプリリアが最高峰クラスの初勝利を達成するまでの長い道のりを、数回に分けて振り返ってみたい。全3回の最終回となる今回は、2015年のMotoGP復帰からついに初優勝を果たすまでの道のりについてだ。

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 2015年に11年ぶりのMotoGP復帰を果たしてから現在に至るまで、アプリリアでマシン開発の陣頭指揮を執ってきたのが、ロマノ・アルベッシアーノだ。

 アプリリアのグランプリ参戦史を振り返ると、それぞれの時代に象徴的な技術者たちがいたことがわかる。20世紀後半から21世紀初頭の2ストローク全盛期、陣営の支柱となる役割を果たしていたのがヤン・ウィットベン。その後任として中小排気量クラスの2ストローク最後期を支え、MotoGPにもCRTの枠組みを利用してマシンを供給したアイディアマンがジジ・ダッリーニャ。そして、ダッリーニャの離脱後に本格的なプロトタイプマシンを用意してMotoGPへ復帰し、いちからのスタートで苦闘しながら最強陣営のひとつへと育て上げた人物がロマノ・アルベッシアーノ、という流れになる。

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 アルベッシアーノとグランプリ界のつながりは長く、1991年のカジバ時代に遡る。エディ・ローソンが劇的な優勝を飾って大きな注目を集めたあの時代に、陣営を支えていたカジバ技術者のひとりがアルベッシアーノだった。1995年から97年まではDTM(ドイツツーリングカー選手権)のメルセデス用エアロダイナミクスプロジェクトに参画するが、98年にカジバへ復帰。その後、2005年にアプリリアへ移り、開発を担当することになった。ダッリーニャが抜けた最初のシーズンの2014年には、WSBKでRSV4を駆るシルバン・ギュントーリが王座を獲得している。

 MotoGPへの参戦は、当初は2016年を目処にしていたようだ。それを1年前倒しにしたのは、多くの実戦経験を重ねて戦闘力を早く向上させることが狙いのひとつだったという。

2015年/ステファン・ブラドル

2015年/ステファン・ブラドル

Photo by: Aprilia Racing

 この復帰に際して、アプリリアのチーム運営はグレシーニレーシングが担当することになった。1990年代からホンダ系の有力チームとして広く知られる存在だったグレシーニレーシングが、2015年以降の4年契約でチーム運営契約を交わしたことは大きな話題になった。ライダーはアルバロ・バウティスタとマルコ・メランドリというラインナップだったが、メランドリはシーズン半ばでチームを離脱。以後は、ステファン・ブラドルが空いたシートを埋めた。

 2015年は、アプリリア以外にもスズキがMotoGPへの戦線復帰を果たした年としてよく知られている。こちらのライダーラインナップは、アレイシ・エスパルガロとマーベリック・ビニャーレス。このふたりが後年にアプリリアでふたたびチームメイトになった事実は、巡り合わせの面白さを感じさせる。

 スズキの場合、MotoGPから離れていた空白期間は2012年から14年の3シーズン、とアプリリアよりも短い。また、チーム運営も日本のファクトリー直結、と様々な部分が異なっている。とはいえ、初年度はアプリリアとスズキともに学習期間のようなシーズンになった。マニュファクチュアラーズランキングでは、スズキの総獲得ポイントは137で4位、アプリリアは36で5位。だが、翌2016年は、両陣営の差が明確になった。スズキは、ビニャーレスが第5戦フランスGPで3位に入って初表彰台を獲得し、第12戦イギリスGPでは優勝を達成した。一方、アプリリア勢は相変わらずの苦戦が続き、トップテンに食い込むのもやっと、というレースが続いた。

 この年の半ばにビニャーレスは、翌年はスズキを離れてヤマハファクトリーへ移籍する、と発表した。一方、エスパルガロはチームへの愛着が強くスズキ残留を希望していたが、結局はアプリリアへ移籍することになった。

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 エスパルガロがアプリリアへ移った2017年には、オーストリア企業のKTMも最高峰クラスへ参戦を開始した。KTMとアプリリアはともに、他の強力なファクトリー勢と比べると新興勢力であったために、テスト回数やマシンスペックの緩やかな制限など、数々のコンセッション(優遇措置)を受けながら参戦を続けた。

Mika Kallio, Red Bull KTM Factory Racing
Aleix Espargaro, Aprilia Racing Team Gresini

2017年のKTMとアプリリア

 しかし、KTMは2018年最終戦で初表彰台を獲得。2020年には3勝を含む8表彰台でコンセッションを脱して、ホンダ、ヤマハ、スズキ、ドゥカティと肩を並べるメーカーになった。その結果、2021年シーズンのコンセッション対象メーカーはアプリリア一社のみになった。

 だが、アプリリアもただ黙々と屈辱に耐えながら参戦を続けていたわけではない。この期間中にはいくつもの大きなてこ入れを実施している。

 そのひとつは、2019年にMotoGPチームのCEOとしてフェラーリからマッシモ・リボラを招聘し、スポーツディレクターに据えたことだ。これより、アルベッシアーノはそれまで二足のわらじを履いていたチームマネージメントと開発の両業務のうち、マネージメントをリボラに一任して、自身は設計開発に専念できることになった。

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 さらに、2020年はRS-GPに大きく手を入れ、V4エンジンの挟角を従来の75度から90度へと変更した。ホールショットデバイスやライドハイトデバイスなどの車高調整部品等も、他陣営にさきがけて積極的に取り入れ、改良を続けた。

 成績面でも、2020年から2022年までの3シーズンのパフォーマンスを比べてみれば、アプリリアは着実に前進を果たしていることがわかる。

 2020年シーズンの平均順位は12.08位(ノーポイント1回)。優勝からのタイム差は、平均22.553秒だった。2021年は、この優勝からの平均タイム差は12.487秒、と前年よりも大幅に短縮している。優勝ライダーから4秒や5秒、8秒など、ひとケタの秒差で終えたレースも8戦ある。平均順位では7.64位で、ノーポイントレースが4戦あるものの、完走したレースはほとんどがシングルポジションだ。これはこの年の大きな進歩といえるだろう。また、この年の第12戦イギリスGPでは、エスパルガロが3位に入り、アプリリアのMotoGP復帰後初表彰台を獲得するという劇的な出来事もあった。

Aleix Espargaro, Aprilia Racing Team Gresini, Johann Zarco, Pramac Racing, Brad Binder, Red Bull KTM Factory Racing

Aleix Espargaro, Aprilia Racing Team Gresini, Johann Zarco, Pramac Racing, Brad Binder, Red Bull KTM Factory Racing

Photo by: Dorna

 このように、2021年に彼らが長足の進歩を遂げたことは明らかだったが、2022年開幕前の段階では、前途にはまだそれなりに高い壁と険しい道があることも想像できた。それは、優勝者との平均タイム差や毎戦の平均順位にも現れている。ちなみに、アプリリアのチーム運営は、今年からグレシーニレーシングがドゥカティ陣営へ移ったことにより、定義通りにファクトリー直結のチームマネージメント体制になっている。

 そして、カタールで2022年シーズンが開幕した後の、今季のシーズン展開は周知のとおりだ。

 開幕戦を表彰台寸前の4位で終えると、第3戦アルゼンチンではドラマチックなポールトゥウィン。以後も安定した速さと強さを見せて、サマーブレイク段階でエスパルガロはランキング2番手につけていた。さらにサマーブレイク直前の第11戦オランダGPではチームメイトのビニャーレスがアプリリア初表彰台となる3位を獲得。後半戦に入ってもイギリスGPで2位、サンマリノGPでは3位、と安定した高水準の走りを披露している。

 こうやって2022年シーズンのここまでの結果を見てくると、現在もっとも安定して高い戦闘力を発揮している陣営のひとつがアプリリアであることに異論を挟む人は少ないはずだ。

 シーズン後半戦に入って、エスパルガロは表彰台を外すレースが続いた。第14戦サンマリノGP終了段階でのランキングは、それまでの2番手からひとつ落として、首位のクアルタラロから33ポイント差の3番手になった。とはいえ、これからの残り6戦でアプリリアRS-GPがタイトル争いのキープレイヤーになることは間違いないだろう。エスパルガロ自身がシーズン前半に見せていた高い安定感を取り戻して連続表彰台を獲得すれば、首位とのポイント差が瞬く間に詰まることは充分に考えられる。また、ビニャーレスという頼りがいのあるチームメイトがいることも、エスパルガロにとっては心強い要素だろう。

 だが、勝負には必ず予想外の何かが待ち受けている。これから11月6日の最終戦バレンシアまでの戦いで、おそらく誰も予想しなかったような驚くべき出来事はこれからいくつも発生するに違いいない。

 いずれにせよ、ひとつだけ明確なことがある。それは、2022年がアプリリアのMotoGPクラス参戦史で最もエモーショナルなシーズンになるだろう、ということだ。

 
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