MotoGP Americas GP
アメリカズGP決勝スタート前の大混乱からの赤旗は、策士マルク・マルケスの思惑通りの可能性。「安全上の懸念」が生じるように導いたのか??
MotoGPアメリカズGPの決勝は、ウォームアップ直前に赤旗による混乱が発生した。レースディレクターのマイク・ウェッブは、安全上の懸念から赤旗を掲示したと説明する。

Oriol Puigdemont
公開日時: 2025/03/31 7:40
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Maverick Vinales, Red Bull KTM Tech 3
写真:: Gold and Goose / Motorsport Images
MotoGP第3戦アメリカズGPの決勝レースはスタート直前に赤旗が掲示された。レースディレクターのマイク・ウェッブはこの赤旗について「安全上の懸念」に対処するためだったと説明している。
アメリカズGPの決勝レースは、スタート直前にマルク・マルケス(ドゥカティ)の行動によって大きな混乱が引き起こされた。
Moto2クラス決勝では雨が降りウエットコンディションで行なわれたものの、天候は回復傾向にあり、MotoGPクラスの決勝は路面が乾き始める難しい状況でスタート時刻を迎えようとしていた。
レース自体はウエット宣言がなされ、さらにフラッグ・トゥ・フラッグでのバイク乗り換えも許可された。そうした状況で、大半のライダーはレインタイヤを選択していた。
混乱が生じたのは、ウォームアップラップが始まろうとする直前だった。ポールポジションのマルケスが、いきなりバイクから飛び降りるとピットへダッシュ……スリックタイヤが装着されたマシンに飛び乗り、ピットレーン出口でウォームアップの開始を待った。
このマルケスの行動が、他のライダーにも波及。チームメイトのフランチェスコ・バニャイヤをはじめとして、9人ライダーが反射的にピットへとなだれ込み、ピットレーンは大混乱となった。
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この事態に、レースディレクションは赤旗を決定。レースはスタート手順をクイックリスタートでやり直すことになり、結局全ライダーがスリックタイヤでレースに臨んだ。
一連の事態はペナルティすら想定されるモノだったが、結局赤旗によって全てが無かったことになった。
決勝レース終了後、レースディレクターのマイク・ウェッブは、赤旗に至った理由を説明した。
「安全上の懸念から、我々はディレイ、そしてクイックリスタート手順を求めた。ピットレーンにいたライダーやバイク、スタッフの人数を考えると、ウォームアップラップを開始することは不可能だった」
「リスタートは前例のない状況に対して対応する最も安全な方法だった。我々はこの状況をチームと共に分析し、ルールを見直すつもりだ」
■マルク・マルケスの確信
Enea Bastianini, Red Bull KTM Tech 3
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
赤旗が出されたことに最も安堵したのはマルケスだろう。彼はタイヤを交換できなくなった段階で、既に選択したレインタイヤは間違ったチョイスだと確信した。そしてルールを認識した上でこの乗り換え戦略を採った。その後は、彼の思惑通りに他のライダーもピットへ向かった。
「他のライダーが僕を真似してくれるように試みたけど、上手くいった。10人以上のライダーが僕のマネをすれば、スタートが中止されるだろうことは分かっていた。そしてまさにその通りになった」
マルケスがそう語っているのは、スポーツ規則第1.18.16条にある『安全上、10名より多いライダーがピットレーン出口からスタートする場合、スタートを遅らせ、新たなスタート進行を行なう』という条文が念頭にあったからだろう。
マルケスはこの戦略が上手くいかなかった場合でも、ペナルティと得られるアドバンテージの収支はプラスになっていたはずと認識している。
「最後尾からのスタートでも、適切なタイヤだからね。(スタート後に)バイクを乗り換えにピットインするのと比較すれば、タイムロスをセーブできただろう」
しかし、実際にはマルケスとチームには誤解があったかもしれない。赤旗とクイックリスタートにならなかった場合、マルケスにはライドスルーペナルティが科されていたはずなのだ。
スポーツ規則の1.18.7条に、今回の状況のようにウォームアップ直前に天候関連の理由でグリッドを離れる場合の手順についての記載がある。
同条では『天候関連の理由でタイヤを交換するライダーは、ウォームアップラップをピットレーンからスタートし、予選で決定されたグリッドにつき、レースディレクションから指示があった際にライドスルーペナルティを(通常はレース最初の3周以内に)受けなければならない』と規定されている。
この規定は2018年アルゼンチンGPの事例を受けて改定されたものだ。
同GPでは、スリックタイヤのギャンブルを決めたジャック・ミラーの動きに反応した他のライダーがピットイン。スリックタイヤのマシンへ乗り換え、ピットレーン出口が大混雑した末に、赤旗中断となった。
ミラー以外のライダーはグリッドを大きく下げた位置についてリスタートするという異様な事態となったが、最初に正しいタイヤを選択したライダーが不利を受けないようにするために、前述のルール変更がなされた。
つまりマルケスは、赤旗が出ずにレースがスタートしていればライドスルーペナルティを受けるはずだったのが、赤旗によって救われたということだ。
2025年アメリカズGPで、当初スリックタイヤを選択していたのは、小椋藍(トラックハウス)、エネア・バスティアニーニ(テック3)、ブラッド・ビンダー(KTM)の3人のみ。彼らからすれば、千載一遇のチャンスを赤旗で潰されたことになる。
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