MotoGPでにわかに噂の”国籍制限”に選手反発「スペイン人&イタリア人だから昇格するわけじゃない」
MotoGPを運営するドルナ・スポーツのCEOは非常に多いスペインとイタリア人ライダーの数を制限するべきではないかと示唆していたが、最高峰クラスのライダーはそれに反対している。
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写真:: Gold and Goose / Motorsport Images
MotoGPに参戦するライダーは、最近浮上してきた”国別にライダーの参戦人数を制限べきではないか”という考えについて、反対姿勢を示している。
シリーズを運営するドルナ・スポーツのカルメロ・エスペレータCEOは最近のインタビューで、参戦ライダーにより多様性を持たせることを可能とするために、スペインとイタリアからのエントリーに制限を課すべきではないかという考えを示唆した。
エスペレータCEOはこれまで最高峰クラスが『最高のライダー』にとってのホームであるべきだと主張していたものの、ライダーの出身国の偏りが商業的な面に影響するようになったため、考えに変化が生まれているのだろう。
「最高のライダーが(最高峰クラスに)いるべきだ。しかしイタリア人やスペイン人であるならば、より優れた存在になるのも簡単なんだ。オリンピックのように、3人のアメリカ人が出場しているのなら、たとえ他の国の選手よりも優れていたとしても4人目のアメリカ人は出場しないべきだ」
エスペレータCEOはインタビューでそう語っている。
しかしこうした国籍をもとにした見方には、ライダーから反発の声もある。Autosport/motorsport.comが集めた意見だが、彼らは国籍の問題ではないと語っている。
「F1ではどれくらいイギリス人やアングロ・サクソンの人達が参戦しているんだっけ?」
そう語るのはスペイン出身のライダーであるラウル・フェルナンデス(トラックハウス)だ。
「僕はこれについては、国籍の問題じゃないと思っている。確かにイタリア人やスペイン人は優れているけど、ここに来るまでにどれだけ厳しかったかを考えればね。もし他の国だったなら、僕らはもっとジュニア選手権で助けがあっただろう」
「個人的には、スペインはとても厳しいよ。僕はMotoGPにたどり着くまでの多大な努力と苦労を経験してきたし、家族の身を切った献身も忘れることはできない」
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
「それを別としても、ファクトリーが何を求めているのかという問題もある。例えば、ホンダに『こことここの国籍の3人のライダーを起用しなくちゃいけない』と伝えても、彼らはこのプロジェクトに5000万ドルも投資していないのだから、誰を乗せるのかは(ホンダが)決めることができるべきだというだろうね」
「考えるべきことは、ライダー達も多くの犠牲を払っているということであり、結果を見るべきだ。(スペイン出身でMoto2ポイントリーダーの)セルジオ・ガルシアのようなライダーがこれまでの戦いや今やってのけている結果があっても、(2025年に)MotoGPでシートが無いのは残念だし、悔しいことだ。MotoGPまでこれなければ、何のために頑張るんだ?」
レプソル・ホンダのルカ・マリーニは、スペインとイタリアのライダーが多い理由について、それぞれの国の育成が上手くいっているからだと語る。
「スペイン人とイタリア人ライダーのレベルが何故そんなに高いのかを理解する必要がある。彼らがMotoGPまで上がってきているのは、彼らが世界でもベストな存在だからであって、イタリア人だからとか、スペイン人だからとかではない」
レジェンドのバレンティーノ・ロッシを兄に持つマリーニはそう語る。
「同じレベルの他の国のライダーが見つかれば、彼らが来ているだろう」
「でも僕の意見としては、スペインとイタリアの2ヵ国には10代の頃、それこそ子どもの頃からライダーとして成長してトップカテゴリーへ近づける文化や情熱、組織があると思う。そして他の国々では、育成がより大変なように見える」
「どうなるかは分からないけど、もし(エスペレータCEOの言う国籍制限が)現実になったとしたら、僕らはイタリア人ライダーの中でトップ3に入らなくちゃいけないだろう。でも問題はない」
アレックス・リンス(ヤマハ)はMotoGPが国籍に基づいた制限を行なおうとすれば、今Moto2とMoto3で戦っている若手ライダーに影響が出てしまうと指摘する。
「正直に言って、こういった問題に対処するのはかなり難しいよ」
「スペイン人とイタリア人はとても優れたライダー達がいるとよく言われてきた。そして、だからこそMoto2やMoto3だけではなく、MotoGPまでたどり着いているんだ」
「これがコントロールできるのか僕には分からないけど、そうなったら僕らみたいに既にMotoGPにいるライダーよりも、世界選手権に参戦しようとしている若いライダー達に影響を及ぼすことになるだろうね」
MotoGPクラスで最年長のご意見番、スペイン出身のアレイシ・エスパルガロ(アプリリア)の意見はかなり明快なモノだ。
「当然だけど、14ヵ国もの国籍別のライダーが揃っていれば素晴らしいだろうね(現在は7ヵ国)。でもここは精鋭のクラスであって、選ばれたベストな人達がいるべき場所なんだ。それがどこの国出身だろうと」
「今になって起きていることじゃないし、何年も前から知られていることだ。僕がMoto2で戦っていたとき、もし他の国籍だったらより早く昇格していただろう。でもスペイン人やイタリア人では、そんなに空いているところがないんだ」
「MotoGPはアジアや他の地域で、そこからライダーが出てくるように育成向けのレースに投資している。でもスペインとイタリアでは幸運にも既に育成カテゴリーの優れたチャンピオンシップが存在していて、そこからたくさんのライダーが輩出されているから、(アジアのように)投資する必要がない」
「ベストライダーが特定の国々から来ているという特質には、反論することができない。下のカテゴリーを見てみれば、もっと悪くすらある。ほとんどのライダーがスペインとイタリアから来ている」
「14の国から14人の最速ライダーが来ていれば理想的だろう。そして、いつの日かそうなるように育成向けのチャンピオンシップを支援することもできる。だけど今のところ、スペインとイタリアからライダーが来ているという特質を否定することはできないね」
またアウグスト・フェルナンデス(GASGAS)は結局のところ力を証明しなければならないのだと語る。
「スペイン人やイタリア人がMotoGPにやって来るのに、これまでもそうだったけど、僕らは全てで勝ってこなくちゃいけなかった」
「国籍によって何か楽をした覚えはない。ここにいるのは他の国に僕らよりも優れたライダーがいなかったからだよ」
「僕らはスペイン人で、それを誇りに思っている。だけどここで勝たなくちゃいけないことは分かるし、僕はシートを失うけれど、ここに再び立つためには、たくさんのことを示す必要があるだろう」
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