“ゼッケン1の呪い”はもはや過去のもの? MotoGPでチャンピオンナンバー背負うマルティン……決断の背景にあったものとは
2025年のMotoGPでゼッケンナンバー1を背負うことに決めたホルへ・マルティン。この選択は吉と出るか、凶と出るか?
アプリリアが、2025年仕様のMotoGPバイクのお披露目をミラノで行なった。そこではホルへ・マルティンからの重要な発表もあった。それがゼッケン1の使用だ。
マルティンは昨年、ドゥカティのサテライトチームであるプラマックでワークスチームのフランチェスコ・バニャイヤらを下し、悲願のMotoGPタイトルを獲得。ただ今季のゼッケンナンバーについてはこれまで明らかにしておらず、冬休みの間に決断を下すとしていた。
そして今回、マルティンが駆るアプリリアのバイクのカバーが外され、そこには“1”のステッカーが貼られていた。彼はゼッケンナンバーを変更することに疑いの余地はないと語ったが、よく見るとそのステッカーには小さく“89”の文字が。彼は自身のパーソナルナンバーと完全に決別したわけではなかったのだ。
マルティンは以前、ジュニアクラスで88番を使用していたが、MotoGPに昇格するにあたり、ミゲル・オリベイラが既にその番号を使っていたことから、89番に切り替えた。この番号はマルティンのイメージが定着したため、彼がディフェンディングチャンピオンとなってからも引き続き89を背負うのかは注目ポイントのひとつだった。
Jorge Martin, Pramac Racing
Photo by: Dorna
これによって2023年、2024年のバニャイヤに続き、MotoGPでは3年連続でチャンピオンライダーが1番を背負うことになる。これはシリーズで20年以上起こっていなかったことだ。
20世紀には、世界選手権500ccのチャンピオンがタイトル獲得後のシーズンに誇らしげにナンバー1のプレートを付けて走っていた。レプソル・ホンダのミック・ドゥーハン、アレックス・クリビーレに続き、2000年にチャンピオンとなったスズキのケニー・ロバーツ・ジュニアも翌年に1番をつけた。
この流れを止めたのが、MotoGPの伝説バレンティーノ・ロッシだった。ロッシのデビューは2輪レース界におけるメンタリティに革命的な変化を起こした。そこには、ロマンよりも商業的な利益が優先されるという考え方も含まれていた。
2001年に500cc世界王者となったロッシは、シリーズがMotoGPにリブランドされた2002年に1番をつけることを拒否した。この決断は、46というゼッケンナンバーを一大ブランドに仕立て、モーターサイクルレースの象徴とする上で大きな役割を果たした。
Valentino Rossi, Honda
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
その後、ロッシとの争いを制して2006年のチャンピオンに輝いたニッキー・ヘイデンによって、翌2007年に1番が復活。同年にドゥカティを初タイトルに導いたケーシー・ストーナーも、1番を背負うことを選択した。
2008年、2009年とロッシが連覇を果たしたことで、1番は再び消滅。2010年に王座に輝いたホルへ・ロレンソ、そして2011年に2度目のタイトルを手にしたストーナーは、翌年に1番を付けて走った。
ゼッケン1の呪い
ただ奇しくも、先に挙げたヘイデン、ロレンソ、そしてストーナー(2回)は、いずれも1番を背負ったシーズンで連覇を果たすことはできなかった。
その結果、1番のナンバープレートは敬遠されるようになった。ロレンソも2012年に2度目の王座、2015年に3度目の王座を手にしたが、その翌年はパーソナルナンバーの99番を選択したのだ。
また、マルク・マルケスはMotoGPデビューを果たした2013年から2019年までの7年間で6度のタイトルを獲得するという一時代を築いたが、一貫して93番を使い続けた。2020年王者のジョアン・ミル、2021年王者のファビオ・クアルタラロも、1番を背負うという誘惑に駆られることはなかった。
そして2023年に1番を背負ったバニャイヤが、連覇を果たしてその“呪い”を解くことに成功した。これはドゥーハン以来の快挙であった。
もしかすると、この出来事がマルティンをゼッケンナンバー1への変更という決断に導いたのかもしれない。加えて、当代最強を誇るドゥカティ陣営からアプリリアに移籍するということで、マルティンとしても1番を背負う機会が今後再び訪れることはないかもしれないという現実を理解しているのだろう。
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