Wake, up スズキ! ──活動休止から奮闘の日々を描くノンフィクション新刊発売
スズキのMotoGP活動休止から復帰後初勝利までを追ったノンフィクション・ドキュメンタリー「再起せよ スズキMotoGPの一七五二日」が刊行された。長年MotoGPを取材してきた西村章氏が彼らの奮闘の日々を描き出した。
写真:: Suzuki MotoGP
二〇一一年十一月一八日にスズキ株式会社がMotoGPの活動休止を発表したときから一七五二日が経過していた。
「勝利」という栄冠はどのスポーツにおいても至上の物だ。それが世界でわずか二十数人しか参加することができない競技ならば、なおさらだ。
西村章『再起せよ スズキMotoGPの一七五二日』が3月初頭に刊行された。弊サイトでもMotoGPのコラムを執筆頂いている西村氏が手掛けたノンフィクション・ドキュメンタリー作品だ。
MotoGPという世界は、えてしてスターライダーの活躍や言動に注目が集まる。もちろん、もう一方の主役であるバイクもフィーチュアされるが、その舞台裏はあまり白日のもとには晒されない傾向にある。
タイトルに入っているスズキという会社を想像した時に、多くの人は4輪自動車メーカーとしての顔を思い浮かべるだろう。もちろんオートバイを作っている事を知っている人も、“KATANA”でしょ、という人もいるはずだ。
本書はそのスズキが、リーマンショック後の2011年にMotoGPの舞台から姿を消し、2015年に復活、そして再び優勝という果実を掴むまでを、奮闘する技術者たちの側から描き出した作品だ。
■モータースポーツという企業活動
この本の内容を要約するのであれば、スズキという自動車メーカー内でモータースポーツを続けていこうとするサラリーマン達の戦いの記録、というものになるだろう。
2016年の夏、スズキは歓喜の渦に包まれた。2011年にMotoGPから一時撤退し、2015年に復帰。それから1年半をかけて再び表彰台の頂点へと上り詰めたのだ。
このシーズンは9人のレースウイナーが誕生するなど、非常に印象的な年だったが、シーズン半ばでスズキが成し遂げた進歩を覚えているファンは今でも多いのではないだろうか。
モータースポーツというのは“金”のかかる競技だ。スタッフの移動、マシン開発とパーツ代、給料etc......世界金融危機の発生の折には、ホンダやトヨタ、BMWなどもF1から撤退するに至っている。
この重い荷物を背負いながらも、本書の登場人物である技術監督やチーム監督はレース活動を継続できないかともがく。会社上層部との折衝、ヤマハ・ホンダといったライバルメーカーからの協力、プランBの用意……MotoGPでの活動を継続しようと、彼らがとってきた行動がつまびらかにされてゆく。
”if”を描く小説ではない本作では当然のことながら、歴史を覆してMotoGP参戦継続ということにはならず、スズキも活動休止は避けられない。しかしそこからの復活に向けた動きからは、ある種の希望が感じられた。
ドキュメンタリーは主観だ。復帰を目指すスズキが、人員を集め、マシン設計を固め、テストを重ねて一歩一歩表舞台への階段を上っていくその姿は、少なくとも絶望からの船出ではなく、明確な目標に向かっていく前向きな雰囲気を感じる物だった。
彼らの活動休止から念願の優勝までの道のりを描いた本書は、あの時代のMotoGPを観戦している人にも、最近になってMotoGPに興味を持ち始めたファンにとっても、きっと素晴らしい読書経験となるだろう。
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