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ザクセンリンク”魔のターン1”が難しいのはなぜ? MotoGPドイツGPで転倒が続出した理由

先日のドイツGPは転倒者が相次いだが、なぜターン1でクラッシュが続出したのだろうか。

Marco Bezzecchi, Aprilia Racing Team crash

Marco Bezzecchi, Aprilia Racing Team crash

写真:: Gold and Goose / Motorsport Images

 先日のMotoGPドイツGPでは、転倒者が続出した。完走10台は、MotoGPにおける最小タイ記録である。その大半は舞台であるザクセンリンクのターン1で起きたが、その理由はなぜだろうか。

 振り返れば3年前、2022年のドイツGPでもフランチェスコ・バニャイヤ(ドゥカティ)が2番手走行中に転倒。これによって、タイトル獲得は絶望的と言われた。シーズン後半に猛追し、ヤマハのファビオ・クアルタラロを下して初戴冠を成し遂げていなければ、この転倒は敗因のひとつに挙がっていただろう。

 当時のバニャイヤは、まだアスファルトの上を滑っている最中から、芝居がかった素振りでバイクに怒りをぶつけていたが、後から考えれば、彼の怒りはそのコーナー自体に向けられるべきだった。

 昨年も、ホルヘ・マルティン(当時プラマック)がレース残り2周というところで、ターン1で首位走行中に転倒。そして今年はこの右コーナーで6人ものライダーが転倒した。

 ザクセンリンクのターン1は刺激的な名前こそないが、ミック・ドゥーハンやマルク・マルケスを苦しめたヘレスのターン3や、F1カナダGPが行なわれるジル・ビルヌーブ・サーキットの”チャンピオンズ・ウォール”のように、多くの名選手たちを苦しめてきた悪名高いコーナーだ。

Joan Mir, Honda HRC, Ai Ogura, Trackhouse Racing crash

Joan Mir, Honda HRC, Ai Ogura, Trackhouse Racing crash

写真: Ronny Hartmann / AFP via Getty Images

 ではなぜ、ザクセンリンクのターン1がそれほど難しいコーナーになるのか? それは右コーナーだからだ。

 ザクセンリンクは比較的珍しい反時計周りのコースであり、13個のコーナーの内、右コーナーが3ヵ所しかない。そのため、タイヤ右側の温度を維持するのが難しいのだ。

 さらに、コーナーへのアプローチが下り坂となっている。しかも、不自然な位置から下っているのも厄介だ。時速300kmを超える速度から、時速70kmまで減速しようとしているまさにその位置に起伏の頂点があり、最も悪いタイミングでフロントが浮き上がる原因となる。

 そして技術的に難しいコーナーでもある。目指すべきエイペックスの縁石は最後の最後まで現れないため、坂を下りながらバイクを倒し、それを探さなければならない。そのため事故は通常、コーナーの初期段階で発生するが、エイペックス付近も楽ではない。実際、2022年のバニャイヤのクラッシュもそうだった。

 ターン1がコース上で数少ないオーバーテイクポイントのひとつだというのも、難易度をさらに複雑化している。レースのどこかの段階では、コーナーエントリー部分でラインを妥協する必要があるだろう。

 それらは、普段からこのコーナーを難しくしている要素だが、2025年のドイツGPはさらに複雑な事態となっていた。後知恵だが、ターン1での事故の連鎖は予見できるものだったのかもしれない。

 決勝レースのスタート直前に太陽が顔を出したものの、ザクセンリンクの気温は涼しく、タイヤの右側を十分に温めるのが特に難しいコンディションとなっていた。また土曜日には雨が降っており、路面はグリップがほとんどない”グリーン”な状態となっていたからだ。

 土曜日にドライコンディションで走れなかったことで、チームはレース後半のトラブルスポットでタイヤがどのように振る舞うかを把握する機会を失ってしまった。レース後半にクラッシュが続発したことから、その影響は大きかったように見える。

 ウエットコンディションで予選が行なわれ、レースがドライコンディションだったということも、ひとつの要因だ。ウエットコンディションで本来持っているパフォーマンスを発揮できなかったマシンが元のポジションに戻る過程で、他車が生む乱気流の中を走る時間が長くなり、フロントタイヤの内圧上昇によるリスクが増大した。

 そして極めつけに、レースではターン1にライダーを押し込むかのように強い追い風が吹いていたのも、ライダーにとっては厄介だった。

Di Giannantonio walks away from a crash that lost him a certain podium

Di Giannantonio walks away from a crash that lost him a certain podium

Photo by: Gold and Goose Photography / LAT Images / via Getty Images

 表彰台圏内を走っていたファビオ・ディ・ジャンアントニオ(VR46)とマルコ・ベッツェッキ(アプリリア)のふたりのライダーは、ターン1でのミスによりリタイア。ヨハン・ザルコ(LCRホンダ)、ロレンツォ・サヴァドーリ(アプリリア)、小椋藍(トラックハウス)、ジョアン・ミル(ホンダ)もこのコーナーでレースを終えた。

 最終的に完走は10台。これは世界選手権がMotoGP時代に入ってから(2011年オーストラリアGPと並び)最小タイの台数だ。

 ではどうすれば、このレースで生き残れたのか? 今回が怪我からの復帰戦で6位フィニッシュを果たしたルカ・マリーニ(ホンダ)はブレーキング時に感じた変化について、次のように語っている。

「ターン1でフロントタイヤ(のグリップ)が低下したと感じた」

「おそらくフロントタイヤの内圧が上昇していたか、温度のせいとかそんな感じだったかもしれない。僕は『よし、これが限界だ。より深く、まっすぐブレーキをかけ、少しゆっくり進入する必要がある』と思った」

 マリーニの視点は、今回のようなレースにおいて興味深いものだ。なぜなら、単にレースを完走するだけで大きな報酬を得られるようなレースだったからだ。

 マリーニは決して平凡なライダーではない。2023年にVR46でドゥカティのバイクに乗り、2回ポールポジションを獲得している。そしてクラッシュを避けるのが非常に上手い。確かに3レースを欠場したが、それはMotoGP外での負傷(鈴鹿8耐テスト)によるものであり、彼は今シーズンここまでMotoGPでクラッシュを記録していない唯一のフルタイムライダーなのだ。

 転倒を避ける秘訣を尋ねられたマリーニは次のように答えた。

「バイクを理解し、タイヤに温度を保つこと。なぜなら多くの場合、MotoGPライダーはタイヤが最適な温度範囲外にあるから転倒するんだ。ほとんどの転倒はこれに起因する」

「僕はこれまでで、それをよく理解し、常にタイヤの温度を上げるよう努力している。そしてレース中は、バイクとタイヤのフィードバックに耳を傾ける。常に限界までプッシュするけど、限界を超えないように努めている」

Marini feels understanding the grip limits, but never going over, was the only way to stay upright through Turn 1

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Photo by: Alexander Trienitz

 経験の浅いルーキー、フェルミン・アルデゲル(グレシーニ)も同様のアプローチを取り、5位でフィニッシュを果たした。彼はどのようにして、最後までファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)にプレッシャーをかけ続けたのだろうか? 答えは簡単だ。明らかに危険な場所以外でスピードを追求したのだ。

 他にもアルデゲルは、金曜日にターン1でクラッシュしており、そこから教訓を得たのだという。

「ずっと左に曲がっていて、そこから右に曲がる必要がある時、温度が100%ではないかもしれない」

 そうアルデゲルは語った。

「左側と同じように自信を持っているけど、リヤタイヤから少し押されるように感じる。そういうミスが起こりうるんだ。金曜日にその点を理解し、今日はその区間ではリスクを冒さなかった。今日は他のコーナーでリスクを冒したよ!」

「レースの展開をうまくコントロールできたので満足している。なぜなら、バイクに乗ったままコースを走り続けるのが難しかったからだ。最初のコーナーで多くのクラッシュが発生した。他のライダーがクラッシュするのを目撃すると、より注意深くなるものだ」

 当然、すべてが終わったあとでそれが正しいことだったというのは簡単だ。しかし、このコーナーが過去何年にもわたって多くのライダーを翻弄してきたことを考えれば、レースが台無しになるかどうかは運の要素が関係していると言えるだろう。

 例えばベッツェッキは、気をつけてブレーキをかけたにもかかわらず転倒したと話した。彼がディ・ジャンアントニオのクラッシュを間近で目撃した後のことなので、慎重になるのは理解できる。

 ザクセンリンクのターン1が運や判断力、またはその両方を要求するかどうかはコンディションにもよるだろうが、賢いMotoGPのフォトグラファーたちは来年もターン1で待機し、レンズを構えて、何かが起こるのを待っていることだろう。そして、おそらくその瞬間はそう遠くないだろう。

 

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