MotoGP

孤高の直4エンジン勢ヤマハ、期待高まるV4エンジン開発へ。プロジェクトリーダーが明かすその”理由と現在地”

MotoGPに参戦中のヤマハは、2024年シーズン中にV4エンジンの開発を進めていることが判明した。その背景についてMotoGPのプロジェクトリーダーである増田和宏氏に話を聞いた。

永安陽介

公開日時: 2025/01/23 3:05

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2024 YZR-M1

2024 YZR-M1

写真:: Yamaha MotoGP

 ヤマハのMotoGPにおける戦績は、2021年のファビオ・クアルタラロによるタイトル獲得以降奮わない状況が続いている。そんなヤマハは2024年シーズン中にV4エンジンの開発を行なっていることが明らかとなった……この新エンジンの開発は今どうなっているのか? プロジェクトリーダーに話を聞いた。

 MotoGPには現在5つのメーカーが参戦しているが、そのうち4メーカーはV型4気筒エンジンを使用。近年シリーズを席巻しているドゥカティも、もちろんV4エンジンだ。 

 そんな中ヤマハは、唯一直列4気筒エンジンを使っている。2022年まではスズキという仲間もいたが、同社はすでにシリーズを撤退したため、ヤマハだけがMotoGPで直4エンジンを使い続けている状況にある。

直4仲間だったスズキは撤退済み

直4仲間だったスズキは撤退済み

 ヤマハが苦戦から抜け出せない要因は直4エンジンにあるのではないかという指摘もあったが、2024年中盤にはヤマハがライバルと同じV4エンジンを開発していることが明らかとなった。 
  
 この開発中のV4エンジンは注目を集めているが、まだ実際にはテストでのお披露目すらされていない段階だ。とはいえ、このファクターを無視することは難しい。シーズン終了後の2024年末、メディアの取材に応えたヤマハにはV4エンジンの開発意義や状況について質問が相次いだ。 
  
 ヤマハのMotoGPプロジェクトリーダーである増田和宏氏は、V4エンジンの開発を手掛ける意義について、意外にも「直4エンジンが劣っている」と考えているわけではないと語った。 
  
「(V4エンジンの開発を)やっていることは確かです。『なぜ開発しているのか?』というところですが、直4がV4に劣ると思っているからではありません」 
  
「今は我々だけが直4でやっていて他社さんがV4でやっているということは、やはりV4が持っているパフォーマンスの良い面というのがあるはずでしょう。ただ我々は実際にMotoGPマシンにV4を載せて検証したことがないので、色々と頭を過ぎることがあり、検証しきれていません」 
  
「そういう風に捉えており、『検証しよう。やってみよう』というのが(V4エンジン開発を進めている)理由です」 
  
「今後の話になりますが、V4を作って、自分たちが理解して、これは『Vに舵を切った方がいい』と判断すれば、V4になるでしょうし、『いやいや直4だってまだまだ改善の余地はある、もしくは直4の方が良い水準だった』と自分たちが判断すれば、(直4の使用を)継続するかもしれません。そこについては、私もまだ分からないという段階です」 

 一方でV4エンジンの開発具合については、ヤマハが近くテストを行なうのではないかという情報もあったが、増田プロジェクトリーダーは「(情報どおりにテストが)できれば、それに越したことはないですね(笑)」として、「まだ判断していない」と語った。

Alex Rins, Yamaha MotoGP Team

Alex Rins, Yamaha MotoGP Team

写真: Gold and Goose / Motorsport Images

 とはいえ、V4エンジンの開発を進めていること自体が、ヤマハにとって大きな変化なのだと増田プロジェクトリーダーは認めた。 

「直4の開発を進めながら、手元で全く白紙のV4の開発を並行してやりましょうなんていうのは、通常のプロジェクト運営としてありえないですよね。ただそれでも『やりましょう。自分たちのステップアップの可能性があるのだったら、それをやって確かめてみよう』という判断をしたというのは、とても大きな変化のひとつだったと思います」 

 なおMotoGPは2027年から、テクニカルレギュレーションが刷新される。特にエンジンの排気量は現在の1000ccから850ccへとダウンサイジングされるなど、変化が大きい。このタイミングでヤマハがV4エンジンを投入することになるのではないかという声もある。 
  
 ただ前述の通り、ヤマハのV4エンジンはまだ実際にコース上で検証もされていないということもあり、2027年に向けて”V4エンジン化ありき”で進んでいるわけではないようだ。 
  
「当然、エンジンが主役ではありますが、エンジンに限らないレギュレーション変更になりますので、どういうクルマにしていくべきかという議論は行なっています」 
  
「その議論の中で、V型になるのか、直4なのかというのを限定しているわけではありません。決める材料はまだ出ていないので、それを決めた上で議論はしていません」 
  
 またエンジンという観点からは、2027年から持続可能燃料100%の使用が義務付けられるという点も見逃せない。2024年から既に燃料のうち40%が非化石由来とすることが義務付けられているが、現在は2027年以降を見越して、シリーズを運営するドルナと各メーカーが話し合いを進めているところだという。 

Kazuhiro Masuda, Yamaha Project leader

Kazuhiro Masuda, Yamaha Project leader

「そこに関しては、今ヤマハだけというわけではなくて、MotoGPへ参戦しているメーカー、燃料を供給しているメーカー、そこにドルナを含めて、どういう方向に持っていきましょうという会議が、まさに今なされているところです」 
  
「なので、ヤマハが独自にということではなくて、『良くするためにはどういった手段が適切か』というのを議論しています。そういう(ヤマハ独自で議論する)レベルではありません」 
  
「それを(SDGsの実現を)目指すこと自体はもう皆で合意しているので、そこから一歩踏み込んで、『それってどういう成分なの』というところや、『持続可能という言葉をどのようにガソリンの組成に反映するか』というのはいろんな見方があって、そこの議論がなされています」 
  
 ではそのガソリンの組成にヤマハが望むものは何か? ただその質問に対して増田プロジェクトリーダーは”企業秘密”を匂わせ、「そこは遠慮させてください」と言葉を濁していた。 
  
 次世代レギュレーションの導入も迫るMotoGPで、ヤマハがどのようにエンジンを開発し、そして競争力向上に繋げていくのか? 2025年の彼らの動向には、これまで以上に注目が集まることだろう。 

 

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