ガスリー、最終戦中止というまさかの結末を“経験”として前向きに捉える

スーパーフォーミュラ最終戦の開催中止で、涙を呑む形となったピエール・ガスリー。今回の”経験”が糧になる日がいつか来るはずだ。

 台風接近により最終戦の決勝レース中止という結末で幕を閉じた2017年のスーパーフォーミュラ。戦わずしてランキング2位決定と悔しい結果となったピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)だが、この1戦を“経験”として乗り越えたいと前向きに捉える一面をみせた。

「本当ならば、最後までちゃんと石浦(宏明)選手と戦いたかった。それが本音。決勝レースがキャンセルされるというのは残念だけど、チャンピオンを獲得した石浦選手には心からおめでとうと言いたい」

 決勝レースの開催中止を受け、急きょ行われた記者会見に出席したガスリーは、今シーズンを振り返る質問に対して、重い口を開くようにそう答えた。

 今季初参戦ながら着実に力をつけ、初優勝を飾った第4戦もてぎ以降は2連勝を含む3戦連続表彰台。この期間で一気に28ポイントを稼ぎ、トップを快走する石浦宏明(P.MU / CERUMO・INGING)に0.5ポイント差に迫った。

 しかし、台風接近の影響で大雨に見舞われた最終戦鈴鹿の予選では、歯車が噛み合わず苦戦。最初のアタックではセクター2まで全体ベストタイムを記録するものの、小林可夢偉(KCMG)が1コーナーでコースオフしストップ。赤旗中断でタイムは無効となってしまう。

 残り8分でセッションが再開されると、ガスリーは再びタイムアタックを試みるが、今度はナレイン・カーティケヤン(TCS NAKAJIMA RACING)がスプーンカーブでスピン。それを避けるためにスローダウンし、再びタイムアタックを始めようとしていた山本尚貴(TEAM MUGEN)に近づいてしまい、リズムが崩れてしまう。

 そして残り1分30分で最後のタイムアタックに突入していくが、その1コーナーで川に乗ってしまいスピン。クラッシュは免れたが、マシンを降りることになってしまった。結局、悪天候などの理由で予選はQ1のみでセッション終了。その後、決勝の開催中止が正式決定し、ガスリーは戦わずにチャンピオン争いを諦めなければいけないという、悔しい結果になってしまった。

「予選では、最初にプッシュしたラップは非常に良かったけど、赤旗が出たりでクリアラップをとることができず、本来のパフォーマンスを引き出すことができなかった。それでもこのコンディションだから、決勝は何でも起こりうると思っていた。だからレース2のことまでシミュレーションして準備をしていた。中止という知らせを聞いて、まだ心の整理がついていない。がっかりした気持ちだよ」

 会見ではその後も彼に対しての質問が続いたが、その都度ガスリーは「できることなら、明日レースがしたい」ということを繰り返しコメントしていた。開幕戦の時から彼を見ていて、とにかく負けず嫌いというのが印象的だったが、特に今回は不可抗力で逆転チャンピオンの可能性が絶たれてしまったという事実を受け入れたくない様子が、こちらにも伝わってきた。

 それでも、初めて参戦する日本のシリーズで学んだことについて訊いてみると、ガスリーはまずこの週末のことを挙げた。

「今シーズン、まず勉強になったことは…今日の出来事。自分がどうすることもできない状況下で、0.5ポイント差でチャンピオン獲得への挑戦を諦めなければならない。すごく辛いことだよ。もちろん、こんな経験は今までになかった。でもこの気持ちを経験できたことは、ひとつの収穫だったと思うよ」

 割り切れない気持ちはあるものの、今回の出来事を“経験”として受け止めようとしていた彼が、非常に印象的だった。

 長年レースをやっていれば、良い成績を出して嬉しい瞬間もあるし、今回のように悔しい瞬間、また天候状況によりどうすることもできない瞬間というのも必ず出てくる。その中でも、今回は特に珍しいケースで、チャンピオン決定の場である最終戦が台風接近により中止という、前代未聞の結末となった。

 これには、スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーション(JRP)の倉下明社長も「本当に残念です。皆さんも期待されていた中で、こういう決断(決勝レース中止)をしなければいけないのは、非常に断腸の思いです」と残念な表情で語っていた。

 この経験は彼にとっては非常に辛いものであることは確か。一部では“レース順延という選択肢はなかったのか?”、“こういう結末になるのであれば、アメリカGPを優先していた方が良かったのではないか?”という意見も、少なからず聞こえてきた。

 しかし……逆にこういう結末になったからこそ、得られた感情や経験もあったのではないか。今回感じた“悔しさ”や“無念さ”、“憤り”のような心境。そして“仕方がないけれど割り切ることができない”という気持ちは、世界の舞台でこれから何年も続いていくであろう彼のレースキャリアの中で、きっと何かしらの役に立つ日がくるのではないのか。

 記者会見で彼が見せた表情と語ったコメントからは、そのように感じることができた。

 今後は再びトロロッソF1チームに戻り、今季残りの3レースを戦う予定だというガスリー。来年はすっかりトロロッソからF1参戦という雰囲気になっているが、実際のところチーム側は来季のドライバーラインアップを“未定”としており、念願のレギュラーシートを獲得するためには、ガスリーも残るシーズンで十分なパフォーマンスを発揮しなければならない。

 スーパーフォーミュラで培ってきた経験を存分に見せつけ、不完全燃焼に終わってしまった今週末の鬱憤を晴らす走りが見られるか。今週末のメキシコGPから目が離せない。

取材・執筆/吉田知弘

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この記事について
シリーズ スーパーフォーミュラ , F1
記事タイプ 速報ニュース