ホンダ佐伯スーパーフォーミュラPL「来年はトヨタさんの余裕がなくなるエンジンを持ってくる」
ホンダのスーパーフォーミュラ用エンジンの開発を率いる、佐伯プロジェクトリーダーに今季の総括を訊いた。

2016年のスーパーフォーミュラ。ホンダエンジンは9レース中3レースで勝利を挙げ、シーズンを終えた。
最終戦レース2終了後、ホンダの佐伯昌浩プロジェクトリーダーが、今季を振り返った。
「我々の目標は、チャンピオンを獲ることと、どのドライバーにも扱いやすく安定したもので、なおかつ勝てるエンジンを供給するということでした。チャンピオンを獲ることはできませんでしたが、我々のドライバー8人中6人が表彰台に上がったということを考えると、誰もが勝てるポジションにまでは来れたのかなと思います」
シーズン前半は、特にドライバビリティを意識したエンジンを持ち込み、後半はパワー重視に振ったと、佐伯は語る。
「タイヤが変わったので、ドライバビリティを優先させました。開幕戦では山本(尚貴/TEAM 無限)選手も勝ってますし、もてぎで後半仕様を持ち込んだ当初にはデータの影響でドライバビリティに問題が出たこともありましたが、その後は性能を出し切れたと思っています」
後半仕様は、ホンダとしてはかなり性能を上げたつもりだったが、それでもトヨタとは互角の位置だったと、佐伯リーダーは認める。
「トヨタさんも頑張っていますから、僕らがここまで上げても互角なのか……そう思いました。永井さん(トヨタのスーパーフォーミュラプロジェクトリーダーの永井洋治氏)はホンダが”馬”を連れてきた(馬力を上げてきた)と言っていますけど、彼らだった相当数連れてきている。でも、後半は互角だったと思います」
「来年はまだゴールが見えていません。1ステップも2ステップも、上げていこうと思っています。燃料流量の規制っていうのは、ゴールは遥かに高いところにあるんです。それを一気に上がっていこうとしているんです」
最終戦レース2で勝利を収めたのは、来季からマクラーレン・ホンダに乗るストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。今季最も印象に残ったドライバーについて訊くと、佐伯はこのバンドーンの名を挙げた。
「今日のレース(最終戦レース2)でも、アンドレ(ロッテラー/VANTELIN TEAM TOM’S)に追いつかれても非常に冷静で、全くミスをしない。余裕を持ってチェッカーを受けられる、メンタルの強さもある。セーフティカー明けのリスタートも絶妙です。彼の場合は何度かツイていないこともあった。だから、実際にはチャンピオンを獲れたと思うんですよ。タラレバですけどね。でも、本当に彼は自分からのミスは全くないです」
とはいえ、そのバンドーンを持ってしても、苦戦するシーンもあった。そこに、スーパーフォーミュラのレベルの高さを見た。
「最終戦のレース1を見ても、自分の腕で抑え込もうとしても抑え込めない状況があった。そう簡単にはいかないなと、本人も思ったと思います」
バンドーンがいなくなる来季、新たな注目ドライバーが、ホンダユーザーに加わることはあるのだろうか? それについて問うと、佐伯はこう話してくれた。
「来月(11月24日)のメーカーテストでは(スーパーフォーミュラ未経験の)ルーキーも走ることができます。そこに何人か連れて来たいという声は、チームから聞こえてきてますね。そのあたりはチーム側にお任せしていますが、『何人か乗ってみたいと言うのがいるから、乗せてみたい』という声が聞こえてきます。その中には、海外のドライバーもいますよ」
そう言う佐伯。しかしすぐに、こう釘を刺すのも忘れなかった。
「あ、(ジェンソン)バトンじゃないですよ!」
ドライバーのラインアップも当然気になるが、ホンダとしては打倒トヨタを目指し、来季への準備を進めている。
「我々はエンジンのメーカーなんで、メーカー同士の技術力の戦いとして、打倒トヨタを目指します」
「来年は、楽にここにいることができるような、トヨタさんの余裕がなくなるような、そういうエンジンを作ってきます」
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この記事について
シリーズ | スーパーフォーミュラ |
イベント | 最終戦JAF鈴鹿グランプリ |
ロケーション | 鈴鹿サーキット |
執筆者 | 田中 健一 |