予想不可能スーパーフォーミュラ、鍵を握る“全戦2スペックタイヤ制”
今週末開幕を迎える2018全日本スーパーフォーミュラ選手権。今季は全戦で2スペックタイヤ制が導入され、全く予想ができないシーズンになりそうだ。

いよいよ今週末、鈴鹿サーキットで開幕する2018全日本スーパーフォーミュラ選手権。今シーズンは全戦で2種類のスリックタイヤが導入される。これが、今季勝敗を分ける鍵となり、予想不可能なレース展開を生み出す要素になりそうだ。
開幕前に鈴鹿サーキット(3月12日・13日)と富士スピードウェイ(3月28日・29日)で合計4日間の公式テストが行われた。例年、このテストでの結果で好調なチーム・ドライバーが見えてくるのだが、今年はテストの段階からスリックタイヤがソフト・ミディアムと2種類あったため、セッション終盤に行うタイムアタックのシミュレーション時に装着するタイヤもチームによって様々。そのため、テストのリザルトだけで今季の予想ができず、各ドライバーに訊いても「開幕戦の勢力図は正直わからない」という回答ばかりだった。
またテストでは、今年スペックが新しくなるソフトタイヤでのデータ収集を入念に行うチーム・ドライバーが多かった。今年のソフトタイヤは昨年以上にグリップ力があり、特に予選などでの一発の速さでは昨年以上という話もある。その一方でタイヤの消耗スピードは著しく、特に決勝では長距離を走るのは難しいと言われている。さらに、ソフトタイヤに関しては路面温度などのコンディション変化にも敏感なようで、テストの時も路面コンディションの影響でタイムが1秒近く落ちるというケースもみられた。
加えて、従来のミディアムタイヤも使用していかなければならないため、両方のコンパウンドに合うセッティングも見つけていかなければならない。チームによってはソフトタイヤを使いこなせておらず、逆にミディアムの方がタイムが良いというところもある模様。どういったセッティングにまとめていくかという部分も、各チーム頭を悩ませている。
今週末のタイヤ運用方法は、新品ソフトが2セット、新品ミディアムが2セット、前回(富士テスト)からの持ち越し中古タイヤが2セットの計6セットが使用できる。また予選Q1では昨年第5戦オートポリス同様にミディアムタイヤのみ使用できるというルールになっている。
開幕戦の鈴鹿は通常より長い300kmのレースになることもあり、各チーム・ドライバーのタイヤ戦略にも注目が集まりそうだ。
現段階でどのチームが好調かというのは、判断が難しい部分はあるが、その中でも安定して速さを見せていたのはチャンピオンチームのJMS P.MU/CERUMO・INGINGの石浦宏明と国本雄資だ。特に富士公式テストでは1日目午後に国本、2日目午後には石浦がトップタイムをマーク。2人とも「周りがやっていることが違うから、自分たちの立ち位置はよく分からない」と言いつつも、3年連続のダブルタイトルに向け、着々とマシンを仕上げている様子だった。
このチャンピオンチームに対抗してきそうな勢いがあるのが、ITOCHU ENEX TEAM IMPUL。エースの関口雄飛は今年も残留したが、そこに昨年スーパーGT500クラス王者に輝いた平川亮が加入した。国内トップカテゴリーで活躍し、スーパーGTでも同じチームに所属している2人がスーパーフォーミュラでもチームメイトになったことで、良い意味でライバル関係にあるとのこと。お互いを意識して切磋琢磨してくことで、チーム内も良い雰囲気になり、それがパフォーマンス向上にも繋がっており、開幕戦での走りに注目が集まっている。
同じように、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGも、今年は野尻智紀の新チームメイトとして3年間ヨーロッパで武者修行を積んでいた松下信治が加入した。彼らも全日本F3でも共に戦ったことがあるなど、以前からライバル関係にあった。その2人が同じチームから参戦することによって、相乗効果で仕上がりも良い方向に向かっているようだ。
この他にも、鈴鹿テストで好調だった小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)や中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)の動向も気になる他、今年はFIA-F2と掛け持ちで参戦する福住仁嶺(TEAM MUGEN)や、WEC、インディカーと3カテゴリー掛け持ちで参戦するピエトロ・フィッティパルディ(UOMO SUNOCO TEAM LEMANS)など、見どころは盛りだくさんだ。
また、今週末の開幕戦は気温25度を超える夏日になるという天気予報も出ており、3月の公式テストは異なるコンディションになることが確実。これに影響してタイヤのグリップ具合や消耗スピード、マシンバランスも大きく変わってくることが予想される。そういった不測の事態にしっかり合わせ込むことができるか。例年以上にドライバー力、チーム力が問われる開幕戦にもなりそうだ。
この記事について
シリーズ | スーパーフォーミュラ |
執筆者 | Tomohiro Yoshita |