【連載】受け継がれる“驚速”の遺伝子(1):国内トップフォーミュラの歴史を変えた1台のマシン

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【連載】受け継がれる“驚速”の遺伝子(1):国内トップフォーミュラの歴史を変えた1台のマシン
執筆:
2019/04/11 0:50

今年から新型マシン『SF19』が導入されるスーパーフォーミュラ。現在は海外ドライバーも積極的に参戦するようになるなど国内外で注目度も高まっているが、そこまで注目度を高めた1台のマシンがあった。

 4月20日、21日に開幕を迎える2019シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権。そこで新型マシン『SF19』が登場する。開幕前から鈴鹿サーキットと富士スピードウェイで公式テストが行われ、すでに従来のコースレコードを上回る速さをみせ注目を集めている。

 さらにPlayStation4用ソフト『グランツーリスモSPORT』に、SF19が収録され、その注目度がさらに上がっている。

 しかし、このSF19のマシンについて語る上で、欠かすことができない1台のマシンがある。 

 それが『SF14』だ。

 2014年にデビューし、いきなり各サーキットのコースレコードを塗り替える速さをみせたSF14。そのコーナリングスピードは当時のF1よりも速いと言われ、その噂は瞬く間に海外に広まり、気がつくと海外から有力なドライバーたちが集まるようになった。

 今回はSF19デビュー記念として、世界も注目するスーパーフォーミュラのマシンがどのように生まれ、進化をしてきたのか? 改めて振り返っていこうと思う。

「みんなが乗りたいと憧れるクルマにしたかった」……白井裕氏が語るSF14誕生秘話

「僕が社長になった時、このカテゴリーをどうしようか? と考えた時に取り組んでいった施策が色々ありました」

 そう語るのはSF14導入に携わった当時、シリーズを運営するJRP(日本レースプロモーション)の社長を務めていた白井裕氏だ。現在も技術顧問としてスーパーフォーミュラに携わっている。

 白井氏がJRP社長に就任したのは2010年。当時のシリーズ名称は「フォーミュラ・ニッポン」で、マシンもスウィフト社製の『FN09』を使っていたが、この日本のトップフォーミュラカテゴリーをグローバル化していきたいという想いがあったという。

「ヨーロッパから出てきたF1。アメリカから出てきたインディカー。それと同じようにアジアから出てきたトップフォーミュラのカテゴリーとして、多くのドライバーがここを目指すようなシリーズにしたいなと思っていました。そこでまずはシリーズ名称を変えようということになりました」

 2012年の開幕前に行われたシリーズ概要発表会で、翌2013年からシリーズ名称を変更することを表明した。フォーミュラ・ニッポンといういかにも国内カテゴリーというイメージを一新するため、もっとグローバルな印象を与えるシリーズ名称が一般公募で選ばれ、現在のスーパーフォーミュラという名称が誕生した。

 さらに白井氏は“ハード面”の刷新をするべく、2014年からの新型マシンの導入にも着手。それがSF14だ。

「基本コンセプトは『クイック&ライト』ですが、フォーミュラの基本である“走る”、“曲がる”、“止まる”……それを色濃く出るクルマにしたいなと思っていました。あとはオーバーテイクの機会を増やすことができるクルマですね。スウィフトの頃はオーバーテイクがなかなかできないという声も上がっていましたから」

 実は、このSF14を製造する「コンストラクター」は入札形式で決められた。そのため候補となった企業はダラーラ以外にもいくつかあったという。

「日本の企業をはじめ、いくつか候補がありました。でも、(F1、インディカーに続く)第3のフォーミュラカテゴリーにしていきたいと考えた時に(ダラーラは)経験という部分が全然違いました。今もいろんなカテゴリーでダラーラのクルマが使われていますが、当時からそうなりつつあった部分はあります」

「特に以前からオーバーテイクという部分に課題を持っていたインディカーで培ったノウハウというのがダラーラにはすごくあって、それも大きかったです。SF14に求めたもののひとつとして、オーバーテイクがしやすいクルマという要素がありましたからね。またコスト面やメンテナンスの部分も含め、総合的にみてダラーラにしました」

 

Photo by: Tomohiro Yoshita

SF14を語る上で欠かすことができない“もうひとつの挑戦”

 また白井氏は、SF14を振り返る上で、絶対に欠かすことができない要素がもうひとつあるという。それが“NRE(ニッポン・レーシング・エンジン)”だ。

 SF14導入のタイミングで、従来のV型8気筒の自然吸気エンジンから直列4気筒の直噴ターボエンジンにスイッチした。現在、直噴ターボエンジンはF1でも使用されており特に違和感のない存在ではあるが、当時は大きな挑戦だったと、白井氏は当時を振り返った。

「SF14を語る上で欠かせないのがNREです。いわゆるダイレクトインジェクション(ガソリン直噴エンジン)で、今のF1につながる燃焼形態です。我々がやっていた時代のものとはコンセプトが全然違います」

「また直列4気筒エンジンを導入するにあたって剛性をどうするのか? という課題もありました。難しい課題だと思っていましたが、その辺はダラーラさんがうまくやってくれました」

「なかなか表には出ないんですが、エンジンに関してはこのカテゴリーを通してすごく進化しました」

「それまで“フォーミュラはV型エンジンだ”という固定概念がありました。その中で軽量・高剛性のハイパワーエンジンを4気筒で達成できたというのは大きいと思います」

「そういう意味でも、日本のフォーミュラレースをグローバル化できたハード(マシン+エンジン)だったのかなと思います」

 そして、SF14が実戦デビューした途端、「スーパーフォーミュラ」という名は海外に広まることとなった……(第2話に続く)

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この記事について

シリーズ スーパーフォーミュラ
執筆者 吉田知弘
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